「Cheerleader チアリーダー」 by deirdre  original

「こんばんは、ジョー!」

僕は飛び上がっていたと思う。僕は、何気なくダンスを見ながらぼんやりと立っていたのだった。まあ、少なくとも「何気なく見てた」風に見えていたらいいと思っていた。僕に呼びかけたのは隣に住んでいるジェニーだった。

「素晴らしいダンスね」

その夜のメイン・イベントのことを言っている。彼女はにっこりと微笑んでいた。

「ああ、そうだね」

返事をしたが、まあ、「ダンスに通じている」感じに聞こえるよう努めて返事した。僕がジェニーのことを好きなのは本当だし、それに彼女には何も特に演技をする必要はないということも分かっていた。いや、僕が言おうとしたのは、彼女を「ああいう面で」好きだということではなくて、子供の頃から一緒にいろんなことをしてきて、いつも仲良く付き合ってきたっていうことだ。僕が本当に好きな女の子は、もっと言えば、僕が「夢に見ている」女の子は、ジェニーではない。シャーロットだ。

「ダンスする?」

「いいよ」

僕はジェニーの後についてフロアに出た。ジェニーはダンスをしている間、にこにこと笑っていた。

実際、僕はジェニーに感謝していた。僕は、勇気を出して女の子をダンスに誘うなんてことはめったにできないから。というか、そんなことは一度もなかった。

ダンスが終わり、ジェニーは「ありがとう」と言って、僕から離れた。ジェニーは友達のベティのところに行った。二人は、一度、僕の方を振り返ってから会場を出て行ってしまった。また、僕は一人になった。できるだけ、何気なさそうに見えるようにしながら、一人立っていた。でも、僕が本当にしていたことは、彼女を見つめること。シャーロットのことを。

フロアで踊るシャーロット。最初の相手の男とダンスが終わると、次のダンス相手が待っている。その合間に、人気者の女の子たち全員に取り囲まれて、楽しそうに話したり笑ったり。だが、それこそがシャーロットなのだ。チアリーダーのキャプテン。学園祭の女王。彼女と一番多くダンスをしたのは、フットボールチームのクォーターバックだったが、そのクォーターバックの友達とも何人か踊ったし、彼女の女友達のボーイフレンドとも何人か踊っていた。

僕がシャーロットにダンスを誘いに行くことなど、絶対に有り得ない。まったく完全に不可能なこと。僕ができることはただ彼女を見つめることだけ。誰にも気づかれないようにして。

いや、ただシャーロットを見つめるだけというのは、すべきじゃない。そんなのバカげている。ガールフレンドと一緒にいるべきだ。女の子たちのことろに歩いていって、何気なく、その中の一人をダンスに誘うべきだ。僕と同じくらいの年齢の女の子を。ジェニー? ジェニーならダンスに応じてくれるだろうが、でもダメだ。いや、ジェニーを誘うべきかも知れない。勇気を出して女の子を誘う練習のためだけにでも。ベティ? いや、ベティもだめだ。メアリかゲイルか、ジェニーたちの友達の誰か。僕からのそういった誘いをもっとも受けてくれそうな人は誰かを考えなくてはだめだ。

でも、そんなことは不可能だ。女の子の前に立ったら、僕は舌がもつれて何も言えなくなるだろう。僕は、学校にいても、あの女の子たちにこれまで一度たりとも話しかけたことがないのだ。彼女たちは、どうして僕が突然、彼女たちの仲間であるかのように、つまり彼女たちの友だちかなんかのように振舞うことにしたのか、訝るはずだ。そんなことは馬鹿げている。確かに馬鹿げたことだが、そういう僕の人生もバカといえば言える。僕は、この単調な生活を打ち破るために何か、そう、何かしなければならないのだ。僕は、シャーロットが、また別の男とダンスフロアーに歩いて上がっていくのを見つめていた。

もう耐え切れなかった。帰りたくなっていた。自分自身を取り戻したい。僕はドアに行き、会場を出てホールを歩き進んだ。途中、洗面所を見つけ立ち止まり、それからさらにホールを進み、会場から離れていった。突き当たりにたどり着き、しばらく窓から外を眺めていた。ホールは多少暗くなっていて、がらんとして誰もいなかった。人の気配がするのは反対側の体育館に面しているところだけ。ダンス会場となっている体育館に人が出入りする時だけ人の気配がする。音楽は、どこか遠くで鳴っているように感じられた。誰かが出入りするために、いくつかある体育館のドアの一つを押し開けたときだけ、少しの間、音楽の音が大きく聞こえていた。僕は、壁にもたれかかり、自分の人生が今後どうなるか考えていた。

まあ、いつまでも自分のことを哀れみ立っていることなどできない。僕は元の方向に歩き始めた。急いで戻るとか、そういう風ではなかった。ただ、一種、ぶらぶらとゆっくり歩き戻る感じだった。会場に戻ったら、僕がどこかに行って戻ってきたと気づく人がいるだろうか? そもそも、僕が出て行ったのに気づいていた人がいるんだろうか?

たった一人でいるのは、確かに地獄にいるような寂しさだが、一種、快適でもあった。戻る途中、僕はカフェテリアの入り口に来ていた。中を覗くと暗くて誰もいない。僕は中に入り、窓側に向かった。そこなら、正面の通路を見ることができる。テーブルに腰を降ろし、ダンスから帰っていく人々を見ていた。僕はこの人たちをじっと見るべきなんだ。どういう風に歩くのか、どういう風に会話をするのかを観察すべきなんだ。ちゃんと観察すれば、僕もどういう風にすべきなのか会得できるはずだ。

「隠れてるの?」

背後から声が聞こえた。さっき僕が入ったドアの方から声がした。この時も、僕は飛び上がるほどびっくりし、平常心を失っていた。というのも、思い返してみても、誰も近づいている人がいないと思っていたから。

「あ、ああ、ちょっと」

僕は口ごもった。暗闇の中、声の主が誰であるか見えなかったが、女の声で、僕に近づいてきている。

「こんなとこにいちゃだめよ・・・あなたがここに入るのが見えたの」

僕は返事をしなかった。何となくシャーロットに似ているように思った。いや、シャーロットだ! くすくす笑っている。

「返事はナシなの? 恥かしがり屋さん? 私、あなたが私のことをじっと見ていたのを知ってるのよ。あなたって変態よね」

ちょっと笑顔になっているのが見えた。僕をバカにしているつもりはないと、多分そういうことは伝えようとしてるのだろう。でも、それでもちょっと邪悪そうなところが見えたのは事実だった。シャーロットはさらに僕に近づいてきていた。

「何だって?」

そう返事をしたが、バカな返事だった。この展開が急速すぎて僕には追いつけなかったのだ。

「私があなたに興味を持つとでも思ってるの?」

シャーロットは、もうすぐそばに来ていた。今や、よりはっきりと彼女が見えていた。でも、僕は、まだ彼女の笑みを浮かべた顔があまり好きにはなっていなかった。とうとうシャーロットが僕の真正面に来る。片手を差出し、一種、遊ぶように、指で僕のシャツをつかんでいる。

僕は、突然、彼女が憎くなっていた。何をしてるんだ。彼女が何をしているのか、僕には分からない。でも、それは彼女自身の楽しみのためだけにしていることだった。僕は怒りながら、彼女の腕を払いのけた。

「アハハ・・・あら、ごめんなさい。私、あなたの気持ちを傷つけたかしら?・・・でも私のこと好きなんでしょう? 違うの?」

僕は返事をしなかった。

「私のこと綺麗だと思っているんでしょう? セクシーだと思ってるんじゃない?」

「あ、ああ・・・確かに・・・」

シャーロットはまたくすくす笑っていた。それに、また僕のシャツに手をかけて、指で軽くつまむようにしている。

「そうなのよね。あなた、私のこと好きなのよね」

断定するような声の調子だった。そして囁き声で僕に言ったのだった。

「シャツを脱いで」

シャーロットは、僕のシャツのボタンを外している。こんなことはありえない。絶対に、ありえないこと。だが、実際に起きている。僕は、何も考えずに立ち尽くすだけだった。シャツのボタンを外し終えると、シャツの左右を押すようにして、僕の肩から脱がしていく。それから、Tシャツの裾から両手を入れ、僕の胸へと、両手を這わせて上がってきたのだった。シャーロットの手が! 彼女が手で僕の胸を擦っている! Tシャツも捲りあげられた。僕の胸があらわになった後も、シャーロットは同じように擦り続けていた。彼女の手が、僕の胸じゅうを擦っている。

「Tシャツも脱いじゃって」  シャーロットが囁いた。また微笑んでいる。

シャーロットはさらに僕のベルトも外しにかかっていた。僕は、まだ、シャツも脱いでいない。シャーロットは、それにはお構いなしで、バックルを外し、さらにはズボンも下げていく。

「ほらほら、どうしたの!」

彼女は少しはしゃいでいるような感じだった。とうとうズボンを脱がされ、さらには下着も脱がされてしまった。僕は、Tシャツの裾から膝のところまで、すっかりあらわにされてしまっていた。そして、シャーロットの手が僕のペニスに来ていた。指で遊んでいる。

「あなた、私のこと好きなのよね。これを見ても分かるわ」  

優しい声で言い、またこの時もくすくすと笑っていた。

「後を向いて!」

僕も確かに少し体を後ろ向きにしたかもしれない。でも、どっちかと言えば、シャーロットの方が僕の後ろに回ったといった方が正確だ。僕の後ろ、右の腰から前に手を伸ばし僕のペニスを握っていた。しごきたて、勃起させている。もう一方の手は僕の左側の腰に当てて、抑えるようにしていた。

「あなた、私のこと大好きなんでしょ?」

僕が返事をしないと、また繰り返し訊いてきた。

「ねえ、違うの?」

「そうだよ、好きだよ!」

とうとう僕は返事をした。

「じゃあ、テーブルに覆いかぶさって」

シャーロットはそう言って、僕の背中を押しつけた。いつの間にか、僕はテーブルに顔をあて、覆いかぶさるように上半身を横にさせていた。両脚はまだ床についている。その姿勢のままになっていると、シャーロットは、僕のお尻に手を這わせてきた。脚の間から手を前に伸ばし、ちょっとペニスを触っては、また、お尻に戻り、さらにTシャツの上から背中を触っていた。そのまま、僕に触りながらシャーロット自身も、僕の隣、僕と同じようにテーブルに覆いかぶさる姿勢になっていた。同じ姿勢になりながら、僕とシャーロットは互いに見つめあっていた。

そのとき、誰か他の人が部屋にいるのに気がついた。僕たちのすぐ後ろに。

「じゃあ、あなた、私のために良い子になってね」

シャーロットは横になったまま、僕の頬に片手を置いて言っていた。

「私に協力してくれるでしょう? ね?」

例のクォーターバックだった。僕たちの真後ろに立ちながら何かしている。

「協力してね」

彼女は繰り返した。あの男はペニスを取り出し、勃起させていた。

「おい!」

僕は声に出したが、それほど大声ではなかった。自己保存という自動的に生じる感覚から大声を出せなかったのだろうと思う。大声を出し、他の人を呼び出して、こんな状態でいる自分を見られるのは是非避けたいという本能的反応だったのだろう。

シャーロットはなだめるような声で続けていた。

「おとなしくしていてね。あなた、いい子ね。ただ、なされるままにしていればいいのよ」

男が僕の腰を押さえ込んだ。ペニスの先端がアヌスに押し当てられるのを感じた。

「大丈夫、リラックスして。良くなるから。たいしたことじゃないのよ」

「やめろ!」

声に出したが弱々しい声にしかならなかった。体に力が入らない。どうしてこんなことが?

「リラックスするの」

シャーロットがまた語りかけていた。男が押し付けてくる。強く力を込めてきた。

「大丈夫。私、あなたに彼を受け入れて欲しいの」

僕は彼女が望む通りにしていた。

男が滑り込んできた。根本まで。そして、引いては入る動きにかかる。僕はあのクォーターバックに犯されていた。力なくテーブルに横になったままだった。シャーロットが僕にそれをさせている。男に犯されることを。

「そうよ、いい子ね」

彼女は、相変わらず、うっとりとなだめるような声を僕にかけていた。男のスピードが上がった。

「そうよ、いい子」

男のペニスが痙攣し始めるのを感じた。そして、次の瞬間、射精されるのを感じた。男は、激しく乱暴に僕に打ち込んでいた。その間ずっと、シャーロットは猫なで声を僕にかけ続けていた。

「そうよ、あなた、本当にいい子だわ」

そして、男は出て行った。シャーロットはまたくすくす笑っていた。

「あなたって可愛いのね。自分で分かってた? さっきの気に入った?」

「あ、いや」

「私のこと嫌いなの?」

シャーロットは体を起こし、それから僕の両肩を引っ張るようにしてテーブルから起こさせた。だが、僕はまだ体のバランスが取れない状態で、ちょっと足を滑らせ、両脚を放り投げるように床の上に腰を降ろしてしまった。シャーロットは、その僕にまたがるように、両膝を床につけて座った。片手で僕のペニスを触っている。

「私のこと大好きなんでしょう? 違うの? それとも、アレが好きになったのね。ジムのペニスを入れられること。あなた、とても可愛らしかったもの」

また、くすくす笑う。そして僕のペニスに愛撫を加える。クォーターバックのジムの姿は見えなかった。すり抜けるように部屋を出て行ったに違いない。突然、シャーロットは身を近づけ、両手で僕の顔を押さえ、唇にキスをしてきた。激しいキスだった。

顔を離して、またくすくす笑う。 「今のはどう? あら、そんなに下手ってわけじゃないのね」

彼女は、ちょっとの間、ただじっと僕を見つめていた。そして、僕は、彼女が何を考えていたのか、突然分からなくなったのだった。また、体を寄せてきて、激しいキスをしてきた。さっきよりもちょっと長く。それから、さらに少し体をかがめて、じっと僕を見つめていた。

それから1分ほど、シャーロットがしたことはそれだけ。下に敷かれている僕をじっと見つめること。そして、彼女は、また体を寄せてきて、僕にキスをした。

これは、9年前のことである。昨夜、仕事から帰ったときだった。玄関ドアに手をかけたら、ひとりでにドアが開いた。

まるで、あのダンス会場に戻ったような気持ちだった。僕はじっと前を見ながら突っ立っていた。シャーロットがいたのだ。玄関ホールの真ん中に立っていた。彼女は、僕の思い出の中の彼女とまったく同じだった。まさにあの夜のシャーロット。微笑んでいた。その微笑みも、あの夜、カフェテリアで見せていた笑みと同じだった。

「私のこと、覚えている?」

シャーロットは突然、僕のズボンのベルトをつかみ、ぐっと引き寄せ、同時に玄関ドアを引いて閉じた。そして、瞬時的にベルトを外しにかかっていた。

「ジムとする準備ができてる?」

彼女は切羽詰っているようだった。ズボンの前を緩めると、下着共々ズボンを引きずり降ろした。僕は、身を凍らせたまま彼女を見つめるだけだった。あの夜、シャーロットが僕にさせたことが頭に浮かんでいた。

だが、突然、僕は夢から覚めたのである。自分の行動の制御ができなくなったような気持ちだった。シャーロットの体を押さえつけ、格闘し、あっという間に彼女を床にねじ伏せていた。シャーロットの顔面をカーペットに押しつけ、スカートを捲り上げ、そして、下着を引きずり降ろしていた。

僕はコントロールが効かなくなっていた。彼女のアヌスにペニスを突き刺していた。突き刺したまま彼女の頭に並ぶように顔を寄せ、彼女の体の上に体重を乗せて覆いかぶさっていた。シャーロットは頭を僕の方に向け、二人は互いに顔をつき合わせる形になっていた。

「キスして! 今すぐ!」  突然、彼女がそう言った。

僕はキスをした。それから毎晩、そうしているように。


おわり