私は、彼女が寮部屋に入ってくるのを見ていた。私の新しいルームメイト。大学が私と同部屋に振り当てた人。サラというのが彼女の名前。彼女についてすべてを理解するのに何秒もかからない。いや、すべてではないかもしれないけど、人が思うよりはたくさん、あっという間に理解したと思う。確かに可愛い人。もっと言えば、魅力的。それに素晴らしいプロポーションをしている。でも、その体は彼女には似合わない。ハズレテいるのよ。友だち付き合いの観点から言えば、のけ者ね。ファッション・センスはゼロ(荷解きをしているとき、彼女が持ってる服を全部見たから分かる)。話しを聞いても、ほとんど無口と同じ。単音節の言葉以外めったに言わない。それに、彼女、どこかちょっと変。気持ち悪いところがある。端的に言って、彼女は私がこの大学でなろうとしている人間とはほぼ正反対のタイプの人物。
もう、みんな想像したとは思うけど、私はすぐに、ルームメイトを変えられないか確めてみようとした。もっと世の中と世の中の動きにちゃんと調子を合わせられる人に変えられないか。こういうことをするとき、自分の偏見がはっきり出てしまうのは事実。でも、自分の社会的立場を意識する人は、冷酷な人間であってはならないなんて決まりはないわ。でも実際は、サラはそんなにひどくはなく、初日から私の頼みを喜んで聞いてくれたのだった。どこをどう見ても親切だし、悪意のかけらも見られない。だから、私も、彼女の社会的地位をもう少し上げる手助けをしてあげようと思った。そんなに面倒っていうわけでもないし。本当のことを言えば、サラの服のセンスを良いのに変える手伝いをしたり、私が持ってる服を見せてあげたりするのを期待して、楽しんでいたところもある。
一つだけ、心に決めていたことがある。大学では、高校のようにはならないということ。それだけは、しっかり気をつけるつもり。高校のときは、ウェンディ・テイラーとその取り巻きの女の子たちがグループで固まって、私たち他の女の子たちの上に君臨していたし、それを黙って容認していなければならなかった。彼女たちのグループが学校で一番人気があったからって、ただそれだけの理由で、そうしなければならなかった。そういえば、うちの高校出身の学生はこの大学では数少ないけど、ウェンディもいたんだった。大学に入ってからも顔を合わさなければならないようね。でも、大学では大半がまったく新しい人たちだわ。素早く周りを見定めることにしよう。そうして、周りの人間関係が固まってしまう前に、私自身の評判を高めておくことにしよう。
食堂での最初の夕食のときに、上級生をチェックする最初の機会があった。2日もしないうちに、その中で一番人気がある女の子たちのグループがどれかを確認した。目立たないようにして彼女たちをしっかり観察してた。私の目標ははっきりしてる。1年生のクラスを誰が仕切ることになろうとも、それに構わず、上級生の人気グループに受け入れてもらうこと。1年生クラスを仕切るのは、その後からでも遅くない。
そのための戦略についてサラに話したわ。どうやってあのグループと出会うかとか、知り合いになるかとか。でもサラは興味を示さなかった。軽蔑した感じで「あの人たち、ただのお高くとまってる連中よ」と言うだけ。最後には、ああいう人たちと交友関係を築くことの価値について、サラと言い合いになってしまっていた。でも私もサラも立場を変えることはなかった。サラは、そんなこと全くの時間の無駄と考えていたし、私は、人がどういう人と交友しているかが、その人が成功するか失敗するかに大きな影響を持っているという主張を変えなかった。でも、意見は違っていたけど、サラは、結局、あのグループと接触してみようとする私に喜んで付き合ってくれた。
私は、2年生のヒラリー・スタフォードという女の子を選んだ。彼女はあのグループの正規メンバーであるのは間違いない。それに、比較的、人付き合いがよくて接近しやすそうだった。サラと二人、夕食時、食堂で列を作って待つとき、慎重に彼女の真後ろにつくようにし、私は何気なく、二言三言、彼女に話しかけた。私が二回目に言葉を掛けた後だったか、ヒラリーは、ちょっと驚いたような顔で私を見てた。それに、ちょっとバカにして面白がっているような顔も。それを見て私はすぐに守備体勢に入った。ひょっとすると彼女への判断を間違っていたのかもしれない。見た目ほどはアプローチしやすい人じゃなかったのかも。でも、私は簡単に慌てふためいたりはせず、何とか平静を装っていたし、ヒラリーの方も私と軽く雑談する気になってくれたよう。列から抜けると、彼女はグループのメンバーが集まってるテーブルへと向かい、私とサラは別のテーブルについた。大きな成果はなかったけど、ともかくスタートを切ったのだ。サラは私の努力の様子を見て、ちょっと笑っていたようだけど、それでも私と付き合ってくれるつもりでいるのには変わりがなかった。
次の日、授業の合間の休み時間にヒラリーと並んで歩くことができた。何気なく「ハイ!」と声を掛けた。彼女、ちょっとびっくりしてたようだけど、ちょっと間をおいて、私が誰だか分かったようで、「あら、ハイ!」と返事をしてくれた。その返事の言い方には、何かとても自信のようなものが感じられ、私は、どうして彼女があれだけ周りの女の子たちの尊敬を集めているのかすぐに理解した。その日の夕食時には、ちょっとへまをしてしまい、列でヒラリーの隣に並ぶことはできなかったけど、彼女が列に並んだときに、サラと二人で上手いこと彼女のそばを通りかかるようにして、そのときも「ハイ!」と声を掛けた。すべてが何気ない感じのまま。だけど私はすごく満足していた。大学に入学して1週間も経っていないけど、もう、順調な道を私は進んでいる。
そうこうしている間も、私はウェンディにずっと眼を光らせていた。彼女はすでに1年生の女の子グループでは中心位置につけていた。あの1年生グループ、どこを見ても、1年生での「人気の女の子たち」になりそう。全員、良い服を着ているし、スタイルもルックスもウェンディのように素敵。でも、私は、就寝時、ベッドに入りながら、これからどういう風にことが進んでいくのか考えて、思わず楽しくなってしまい仕方がなかった。まあ、しばらくは、あの「人気の女の子たち」をウェンディに預けておいてもいいわ。しばらくの間はね。
さらに二日ほど、ヒラリーと(計画した上でのことだけど)偶然のすれ違いを繰り返した後、夕食時、再びサラと私で、列で彼女の真後ろにつくことができた。列に並びながら、「ハイ!」と声をかけ、彼女に、サラと私がいるのを知らせた。そして、とうとう努力が功を奏したのだった。ヒラリーが、列に並んでいる間ずっと私たちと楽しそうに会話をしてくれたのである。それに食事をテーブルに持っていくとき、なんと、私たちと一緒に食べてもいいかしらと訊いてきたのだ。実を言えば、私たちを彼女のグループの席に誘ってくれる方が良かったのだけど、でも文句は言わない。それにしても、びっくりしてしまった。こんなこと、ヒラリーほどの人なら、一番しそうもないことのように思えたから。もちろん、このチャンスを無駄にするつもりはない。食事をしながら、友情と尊敬の気持ちがバランスよく伝わるように、私自身の会話を慎重に運んだ。サラはほとんど何も言わなくて、私は、彼女が何もかも台無しにしてしまうんじゃないかと内心、不安でハラハラしていたけど、ヒラリーは、本当にびっくりするほど、フレンドリーだったし、本当におしゃべりを楽しんでいてくれた。私は、お友達にすべき人として、あのグループの中のまさに最適の人を選んだと自覚していた。彼女、本当にあのグループに属しているのかしらとも疑いそうになっていたのも事実。食事のとき、あんなに簡単にグループから離れてしまうなんて、恒久的なメンバーではないような振る舞いに見えたから。でも、ヒラリーがグループの他の人と一緒にいるのを見ていた時のことを思い出した。彼女は絶対、あのグループでは、階層上、トップにいるか、トップに近い人。
そして翌日。この日はさらにもっと大きな成功を収めたのだった。授業の休み時間に、サラと二人でヒラリーとばったり出会ったのだけど、彼女はわざわざ立ち止まって私たちとおしゃべりしてくれたのだ。もっと言うと、ヒラリーは、それ以上のことをしてくれたのである。
「私、友だちと『社交クラブ』というのを開いてるの。あなたたちもそれに混ざらない? うちの大学では『女子学生クラブ』は禁じられているでしょう? 女子の中には、もうちょっとインフォーマルで、正規ではないグループを開いている人たちがいて、そういうグループを『社交クラブ』と呼ぶことがあるの」
この話し、私には信じらない思いだった。何もかもうまく行き過ぎる。
「この件については、またもう一度、あなたたちに話すわね。もし興味があったら、ミーティングに連れて行ってあげるわ」
サラは、ヒラリーがこちらの声が聞こえないところまで離れていったとたん、うんざりしてるような、嫌そうな声を上げた。その日一日、私はサラと話し続けたけれど、結局、私やヒラリーと一緒にそのミーティングに行くのが何にもまして価値あることなのだとサラを納得させることはできなかった。私は内心は、実際のところ、サラには是非とも一緒に行って欲しかった。私ひとりで行っても上手くやれるとは思うけど、やっぱり精神的支えがあった方がいいのは変わりない。サラは、「せっかくの時間、もっとすべきことがあるわ」 と言うけど。
でも、もう私には分かってたことだけど、サラは結局はいつも私の後に従ってついてくる。サラは前は「全くお断り」状態だったけれど、夕食時にヒラリーに会う頃には、「無駄にする時間に文句を言うだけ」の状態に変わっていた。ヒラリーは私たちを探し出して、あの件をもう一度話してきた。私たちが行きますと答えると、じゃあ早速、今夜、ミーティングに連れて行くわねと言っていた。それに、私たちの寮の前まで来て、一緒に行ってくれるとまで言ってくれた。
何を着ていくべきか、本当に悩んだ。これはとても重要なこと。それに、このミーティングでどういう風に事態が進行するのか、前もって何も知らずに、こういう重要な問題に決断を下さなければならないなんて、ちょっと油断していたところを突かれた感じだった。こういう物事を知ってる上流クラスの女の子と友達になっておくべきだったかも。服も、ドレスからカジュアルなものから、いろいろ出してみて考えたけど、結局、気楽に着れるものを選んだ。それにしても、サラに、私と似た服を着させるのにはひと苦労。彼女の持っている服って、あの調子だから。
ヒラリーは、ショートパンツ姿で来た。それを見て、これはとてもカジュアルな集まりになるのだとはっきり分かったし、内心、ホッとした。というのも、サラは、結局、私が最初これが気楽かなと思って選んだ服よりも、もっとずっとカジュアルな服装を選んでいたから。これで心配事もすべて消えて、完璧だと思えた。
ヒラリーは私たちを連れて、街の方に歩いて行った。歩きながら私たちに話してくれた。
「ちょっとしたイニシエーションというか、入会式があるわよ。もう死にそうなくらい恥ずかしいの。でも、それを別にすればたいしたことないわ」
「どんなことですか?」
「ちょっとね・・・体を叩かれるの!」
私は息が止まりそうになったけど、クールさを保ち続けた。そして、15秒くらい、頭の中でいろいろ考えたけど、結局、やってみる価値があると判断した。そのとき、同じ話しを聞いていたサラが抗議して、立ち止まらなかったことに気がつき、ちょっとおかしいなと思った。サラをちらりと見たけど、困ったような顔をしていないのだった。もっとも、サラのことに気を使っている余裕はなかった。それよりも、これから起きることの方が大事。
ヒラリーは一軒の家を指差した。3人でそこに向かって行った。ヒラリーは、改めて、私たちに軽く警告するような感じで言った。
「ただ流れに合わせて行くだけでいいの。ちょっと侮辱的なことをさせると思うけど、すぐに終わるから」
私はそれでもまだドキドキしていたし、どんなことかと不安に思っていたけど、その気持ちは隠していた。サラはというと、相変わらず、気持ちが読めなかった。その家は全体にわたって薄暗くて、私たちが着いても、玄関ホールやリビングには誰もいない。でも人の声は聞こえていた。ヒラリーに連れられて別の部屋に入った。小さな書斎のようなところ。カウチが置いてある。
「ちょっとここで待っててね」
そう言ってヒラリーはドアからもっと明るい部屋へと出て行った。あの部屋はキッチンじゃないかと思う。
「どう思う?」 サラに訊いた。
「あなたのせいよ」 それがサラの返事。でも、実際、その時は確かに私は彼女に文句を言うことはできない。
ヒラリーは、女の子を2人連れて戻ってきた。その女の子の一方が、もう一方の子にカウチに座るよう命令した。その女の子も含めて、私たち3人が、新しくイニシエーションを受けることになるのだと、すぐに分かった。その女の子を連れてきた女の子は部屋から出て行き、ヒラリーと私たちの4人だけになった。
「さあ、服を脱いで」
またも5秒くらい素早く考えをめぐらせたけど、私は、やってみることに決めた。ブラウスから始めて脱いでいく。サラともう1人の女の子はちょっとどぎまぎしているようだったけど、私に続いて脱ぎ始めた。間もなく3人とも下着姿になっていた。ヒラリーは私たちを見て、さらに命令した。
「全部、脱ぐのよ」
もっともヒラリーは低い声で付け加えたのだった。
「・・・あまり心配しなくていいの。基本的にちょっとだけ恥ずかしいめにあわせるのが狙いなんだから」
でも、これって思っていた以上の辱しめだわ、と私は思った。
すぐに3人とも全裸でカウチに座っていた。ヒラリーは一度部屋を出て、皮製のものとかバックルとかそういったものを持って戻ってきた。すぐに、それが拘束具だと分かる。ヒラリーは、最初の女の子に立ち上がるように命じ、後ろ手に拘束し始めた。それに足にも同じく拘束具。装着し終えると、ヒラリーは彼女を助けるようにして座らせた。もう私も引き下がれなくなっていて、同じ扱いに身を委ねた。自分がこんなことをされているとは、まるで信じられない気持ち。
じきに、私たち3人とも、拘束されてカウチに座っていた。足がしっかりと合わせるように拘束されているので、立ち上がって歩きたいと思ってもできない。ヒラリーは、次に、あの器具を取り出して、女の子の口に咥えさせた。猿轡だった! あんな形の猿轡は見たことがなかった。口が開きっぱなしにいっぱいにさせられるような装置。ヒラリーは、同じ猿轡を私とサラにも着け、そして部屋を出て行った。ドアを開けたまま。
見回してみた。私たち3人ともこんな状態でカウチに座っている。3人とも丸っきり自分ではどうしようもできない状態。時々、ドアの向こうを女の子が歩くのが見えた。それに2人ほど、実際に部屋に入ってきた人たちもいた。彼女たちは私たちをちょっと見ていたし、そのうち1人は軽く微笑んでもいた。でも、それ以外の点では、私たちの状態を気にする様子は全くない。全裸で猿轡をしているというのに。ヒラリーが、恥ずかしい目にあうと言っていたけど、確かにその通りだった。
それから女の子が1人、入ってくるのに気がついた。彼女も全裸で! そして、彼女を見た後は、目にしたどの女の子も全員、裸になっていた。しばらくすると、歩き回る女の子の数は少なくなっていき、私たちの部屋に来る人もいなくなった。もっとも、キッチンの方に2人ほど女の子が立っているのが見えたけど。そのときも、まだ、裸でいる。キッチンで裸のまま何かしながらおしゃべりをしている。
それから、ちょっと話し声が聞こえ、歩き回る音が聞こえた。そして、キッチンから女性が1人歩いてきたのだった。彼女は服を着たまま。もっと言えば、きちんとしたスーツ姿。まるで会社の重役か何かのような格好。ブロンド髪の美しい人だったけど、ちょっと厳しそうな印象で、20代後半のように見えた。彼女は部屋に入ってくると、私たちをじっと見た。それに彼女の後ろから2人ほど裸の女の子がついて入ってきた。その女性は微笑みもしなければ、挨拶もしなかった。
「その人が最初」
彼女は、調べるように私たちを一人一人じっくり見た後、そう言って、例の女の子を指差した。ふと気がついたことだが、その女性は私を調べたとき、一度も目を合わせていなかった。実際、私の顔もまともに見てなかったと思う。彼女は、例の女の子を選ぶとくるりと向きを変え、キッチンへと戻って行った。彼女と一緒に入ってきた女の子たちは、例の女の子をカウチから立たせ、あの女性の後について、キッチンへと連れて行った。歩くのが大変そうで、事実上、彼女は、手助けしている女の子たちに体を運ばれているも同然だった。
私たちが座っているところから、あの子がテーブル脇に立たされ、テーブルに覆いかぶさるように上半身を曲げられ、顔を下に向かせられているのが見えた。手助けの女の子たちは、彼女の横に立って、彼女の体を抑えつけている。例の女性は、ちょっと視界から消えていたけど、ちょっとして、手にベルトかストラップのようなものを持って戻ってくるのが見えた。皮でできたもののようで、二重に折って持っていた。
信じられない! 彼女はそのストラップであの女の子のお尻を叩き始めたのだ。でも、もっと信じられないのは、その鞭打つ力の強さ。あの子は最初の一撃を受けると、体をビクンと跳ねらせた。手助けの女の子たちは、さらにしっかり押さえつけておこうと力を入れている。あの子は鞭打ちされるたび、体を引きつらせていた。逃れようともがいていたのは、はっきりしていた。それに猿轡の中、悲鳴も上げている。私には可哀相でとても聞いていられなかった。それほどなのに、あの女性は、何度も繰り返し鞭打ちしている。何回打ったか数え切れないほど。
私は体が震え始めていた。どうしてこんなことに自分から飛び込んでしまったのか、分からなかった。ただ、夢中になってその光景を見続けていたのは事実。ようやく、あの女性は鞭打ちをやめ、今度は、細い竹の棒のようなものを取り出した。そして、その竹棒でも、さらに女の子のお尻を叩き始める。女の子はまたも体を跳ねらせたけど、さっきよりもさらに痛いらしく、さらに激しく、もがいている。私自身も、もがき始めていた。ここから逃げなくてはならない。でも、どうやって? あの女の子はまだもがき続け、あの女性はまだ彼女のお尻を叩いている。何回か打っては2秒くらい、打つのを中断し、その間に他の女の子たちが例の女の子をしっかり抑えなおしていた。それが何度も何度も繰り返されている。信じられない。
私は、もがきながらも床に降りていて、次にどうしたらよいか考えていたところだった。すっかりパニックになっていて、行動が行き当たりばったりになっていた。ふと、サラもその場にいたことを思い出した。見てみると、サラは、カウチに座ったままで、キッチンで起きていることをじっと見つめていた。恐怖に縮み上がっているようだけど、まったく動こうとはしていない。
裸の女の子が2人、部屋に入ってきて、私が床に立っているのを見た。
「この子は、経験したくないようね」
1人が言った。2人はすぐに私の拘束を解き、猿轡を外し始めた。これも思いがけないことだった。2人とも当然のように私を自由にしようとしてる。私は、てっきり、これから逃れる道がまったくないとばかり思って恐怖していたのだ。2人は私の拘束を解き、私を自由にした。振り返ってサラを見た。彼女はまだそこに座ったまま、私と一緒に来ようと動く気配はなかった。
「サラ?」
呼びかけると、サラは頭を回し、私を見た。目には恐怖におののいている気持ちが溢れている。でも、座ったまま。数秒間、私たちは見詰め合っていたが、そのうち、私は、女の子の1人に体を引っ張られた。
「こっちに来なさい」
私は、何も置いていない別の部屋に連れて行かれ、そこで衣類を返された。
「服を着ていいわよ」
ちょうど服を着終わった頃、ヒラリーが入ってきた。・・・裸だった。ふと、全裸のヒラリーと並んで立っているのに、私が服を着ているのがとても恥ずかしく感じた。少し引きつった笑いを浮かべていたかもしれない。ヒラリーは玄関先まで私を連れて行ってくれた。
「気にしないでね。もし万が一、気が変わったら、教えてちょうだい。またここに連れてきてあげるから」
私は、どうしても、時々、彼女の体に視線を向けずにはいられなかった。染み一つない美しい裸体。ヒラリーは、服を着てても着ていなくても美しかった。私の視線を感じてか、ヒラリーは、彼女自身の胸を見下ろし、それからうつむいたまま、上目遣いで視線を私に戻した。私を見てにやりと笑っていた。私は自分がとても愚かに感じた。
私はその家から立ち去った。心がぐるぐるしてた。目撃した鞭打ちを思って、いまだに身震いがとまらなかった。それに、自分のこと! 彼女たちがアレを私に強要しようとしたとき、それをとめられなかった自分。それにサラ。一緒に帰ってこなかったサラ。それからヒラリー。その夜、サラは寮に戻ってこなかった。朝起きたときも、サラは戻っていなかった。ようやく彼女に会ったのは、その日の夕食の時だった。食事の列で私と並んでいた。何が起きたのか、死にたいほど訊きたかった。だけど、変な感じだけど、その話しを切り出すことができなかった。彼女は、いつも通りの話しをし、いつも通りに私と同じテーブルで夕食を取った。
でも、夕食を食べていた途中、サラは、いきなり立ち上がって、ヒラリーたちのテーブルに行ったのだった。私は、しばらくサラのことを呆然と見ていたと思う。後で、ふと我に返ったけど。サラは、向こうの席に行って、一人の女の子とちょっと話をし、それからカフェテリアの列に戻って、何かを持って戻っていった。サラが近くを通り過ぎたとき、フォークを持っていたのが見えた。サラは、フォークを話し掛けていた女の子に渡して、それから私のところに戻ってきた。とても変な感じだった。彼女の行動を、どう理解していいのか分からなかった。
食堂から出るとき、もう一つ、驚かされることがあった。ヒラリーたちが座っているテーブルを見ると、ウェンディ・テイラーが一緒に座っていたのだった。ただ、おしゃべりをして笑っている。私は、サラと一緒に部屋に戻った。何が起きているのだろうと考えながら。
翌朝、サラと2人で朝食をもらう列に並んでいた。ヒラリーが私たちのそばに歩いてきた。ヒラリーはサラに、持っていた本を2冊ほど渡した。サラは、すぐに列を離れ、本をヒラリーがいつも座るテーブルに置き、また列に戻ってきた。そのこと以外は、いつものようにいつもの朝食をサラと食べた。でも、よく見ると、その後も、サラ以外の女の子たちが、ヒラリーたちが座る席に行って、やっぱり同じようにヒラリーたちが気に入ることをするのが目に入った。ヒラリーや彼女の仲間たちは、まるで女の子をウエイトレスのように、いつも忠実に自分たちに気を使ってくれる人間とみなしているかのように、女の子を呼び出し、何か用を足させているのに気がついた。その日の夕食時も同じような光景を目にした。それに、ウェンディ・テイラーがヒラリーと同じテーブルに座っているのも。
サラは時々、夕方、いなくなる。彼女がどこに行ってるのか、私は知らない。彼女は、出かけると、朝になっても帰っていないのは、あの日と同じだ。一度、午前中、部屋でごろごろしていたら、お昼近くになってサラが帰ってきたことがあった。サラは私を見ると、ちょっと気まずそうに振舞っていた。疲れきっていたようにも見えた。シャワーを浴びたいと言っていた。でも、サラは、いつもと違ってその場で服を脱ぐことはなかった。洗った服を持ってきて、それをもったまま浴室に入っていった。
でも、一晩中、外に出ていたり、ヒラリーたちのグループにちょっとしたおべっかを使うこと以外には、サラは私にフレンドリーに接してくれているように思えた。もう一つ、私には分からなくなってしまった出来事がある。ある日、部屋に戻ると、ヒラリーの仲間の2年生の女の子たちが、2人ほど私たちの部屋の廊下を歩いていくのを見かけたのだ。私たちの寮は1年生だけしかいないので、2年生の彼女たちを見かけて、ちょっとビックリした。部屋の前に行くと、ドアが5センチくらい開いていて、中に入った私はあっけにとられてしまった。サラが素っ裸でベッド脇、床にひざまずいていたから。お尻を突き出して。はっきりと淫らに突き出している感じそのもので。顔は、ベッドに横たえる形で、横向きに私の方を向いていた。目は開いてるけど、私を見ている感じでは全然なかった。恍惚とした状態にいるよう。サラの名前を2回も言って呼びかけた。ようやくサラはちょっと体を動かしたけど、私がいるのに気がつくと、ぐったりとした感じで動いてた。「ちょっと考え事をしてたの」と言っていた。
あれから、2回ほど、ヒラリーに偶然会うことがあった。彼女はいつも人懐っこく、私に対してオープンなままだった。彼女に会うと、いつも、「もう一度、あそこに連れて行って」と私が頼むのを待っているかのような感じがする。ヒラリーがウェンディ・テイラーと一緒にキャンパスを歩いているのを一度見たことがある。その時、胸の奥にしこりのようなものを感じた。ウェンディの首を締めてやりたいと思う自分がいるのに気がついた。いや、ウェンディがいる立場になりたいと願う自分かも。それとも違うかも知れないが、よく分からない。ヒラリーはとても美しい。陽の中、そよ風に吹かれて、歩く姿のヒラリー。
周りがどうなっているのか、納得したいと思ってる。サラが何をしているのか知りたい。ヒラリーに、またイニシエーションを受けに行くと伝えることも考えてみた。サラの勇気がうらやましく思ってるし、サラが今、保ってる人間関係上の立場も、うらやましく思ってる。ヒラリーやヒラリーの仲間がサラに話し掛けるとき、私は、あの子たちの話しから完全に蚊帳の外に置かれているように感じている。一緒におしゃべりできる場所に立っているのに、そのおしゃべりの全く外にいるように感じている。