「Date デート」 Date by deirdre

私はつっ立ったままボビーを見ていた。彼は私のアパートの玄関前に立っている。満面に笑みを浮かべて。私に会えて嬉しい気持ちでいるのが分かる。ボビーは、突然、私を両腕で抱きしめてきた。襲い掛かってきたといってもおかしくないほど。

「ボビーったら!?」 心が騒ぐ。

「外に出よう! 今すぐに!」

まるで子供のような口ぶり・・・それほど嬉しそうにしてる。

「どうしても、すぐに君に会いたくなったんだ・・・君に会いたくてたまらなくなったんだ!」

それにしても早すぎる。一体、ボビーはどうやって、こんなにも早く家に帰ってから、ここに戻って来れたんだろう? それに私の顔を見たときの彼の反応! 間違いない。ボビーは、空港から直接、ここにやって来たのだ。たった1週間しか、離れていなかったのに! どうしたらいいんだろう? ボビーは私の残したメッセージをまだ聞いていないのは確かだ。できるだけ素早く考えをまとめようとした。今、この場で、彼に話すべき? こんな感じの切り出し方で? 「ねえ、ボビー?・・・」 そこまでは口に出したが、後が続かなかった。

「さあ!」 

まだ、熱っぽいまま、私を引っ張り出そうとしている。罪悪感を感じた。私は彼に会おうとは、まったく思ってもいなかったから。でも、この件は、真正面から直面しなくてはいけないこと。夕食を一緒に食べながら彼に話そう。その方が礼儀の点でぴったりだ・・・ 彼が町を離れている間に、留守番電話にメッセージを残して済まそうとするなんて。そんなのは臆病なことだったと思った。でも、メッセージを残したときは、いつ、どのようにしたらよいか分からなくなっていたし、我を忘れていたのも事実。それに多分、ちょっと酔ってもいたし。そもそも、あんな状況で言葉を選んでメッセージを残すことが可能だったかどうかすら分からない。だけど、幸いにして、選んだ言葉は 「親切な」 言葉だったと思う。でも、今は、ここにボビーがいる。運命は、私に、ことを適切に行わせようとしているように思えた。私は玄関を出てドアを閉めた。

突然、ボビーが私にキスをしてきた。アパートの部屋のドアの前、廊下だというのに。ボビーは、こんな風にキスができるのね。でも、問題はそこじゃないと思った。彼がこんな風にもっと何度も私にキスをしてくれたら、事態は違ったものになっていたかもしれない。ともかく、まさにその場でキスをされ、心をつかまれた感じがした。最後のキスくらいは当然あってもいいと思った。それに、ああいうキスならもっとされても構わない。私は身を委ね、キスを返した。

でも疑問が沸いてくる。自分は何をしてるのか? こんな風に彼とキスをして、何をしてるのか。これが彼と別れようとするときにすること? 彼の体が私に押し付けられるのを感じる。それに彼の舌。背中を撫でてる彼の手。髪を触る彼の手。耳元に囁き声。

「夕食は省略しちゃおうよ」

それはだめ。できない。でも、どうしても逃れられなかった。この場ですぐに彼に伝えるか、それとも、このまま彼に合わせていくかのどちらか。でも、この瞬間は、正しいのはひとつだけだった。彼の体が背中に押し付けられているのを感じながら、私はアパートのドアの鍵を開けた。そして二人とも中に入り、ドアを閉める。

これを最後の一回にしよう。将来、彼のことを恨んだりはしない。そんな気持ちにならないのは分かっている。何かがほんのちょっとだけ違っていたら、違っていたのに。今、二人は、もう一つだけ思い出を作ろうとしている。ひょっとすると、彼は気持ちよくしてくれるかもしれない。突然、私の足が床から離れた。彼の腕の中に抱かれている。そして、カウチの上へ。パンツが脱がされている。

カウチの上、横になっていた。天井を見つめている。私の指は彼の髪の毛を掻いていた。天国にいるような気持ち。彼の舌が私を探り、踊りまわり、私を高みに連れて行く。

両膝が上がっていって、彼の頭を両側から挟んでいる。気絶しそうになる。呼吸が速くなる。こんなことが前にあったか、思い出せない。

頬をキスされていた。それから、耳、そして首筋。・・・多分、私はちょっと意識を失っていたに違いない。そして、彼は今、私の上にいる。というか、覆いかぶさっている? でも、私を押しつぶす感じではない。

「気持ちよかった?」

なんてバカな質問なの。彼が私の中に自分を導き入れようとしてるのを感じる。いや、正確ではない。あそこに上下に擦り付けている。それに彼の指。そして、再び、彼のが擦りつけられる。とても固くなっているのが私にも分かる。それが私の中に入ってくる感触を想像する。彼が私の口にキスをしてきた。

「中に入れて欲しい?」

私は答えなかった。

「どう?」

「ええ!」

彼が体を沈めてきた。私は準備ができていた。できすぎるくらい、できていた。再び、口にキスをされた。まだ、動いていない。彼は私の耳元に囁きかける。

「これが大好きなんだよ・・・君といるのが」

そして彼は動き出した。だんだん強くなる。私はまた意識が遠くなっていた。でも心の中に何の心配もなくなっているのが感じらる。彼の顔を見上げた。はっきりと欲望がそのまま顔に出てる。瞬間的に、私自身、どんな顔をしてるだろうと思った。欲望にとらわれた顔? でも、そんなことを長く考えている余裕はなかった。

まさにぴったりの感じだった。でも、もっと欲しい。・・・私の体は全身で、彼にもっと速く、深く入ってもらおうと動いていた。両足があがり、彼を包み込み、しっかりと捉えていた。

叫び声を上げていなかったらいいと思う。喘ぎ声を出していたのは知っている。・・・ああいう声をあげたりするのを思うととても恥ずかしくなる。多分、そういう声をあげた方が男性にとってはいいのだろうと思うけど。でも、女性に喘ぎ声を出させたくない思う男性はいないはず。

そして、私たちは体をぴったり寄せ合って横になっていた。私のベッドに移っていた。そして、もう一度。今度はずっとゆっくりと。彼を私の中にいれたまま、何時間も横になっていたように感じていた。終わらせたくなかった。・・・そんな感じで眠りに落ちたいと思っていた。こんなにぴったりの感じにどうしてなれるの?

あえて、部屋の明かりはつけなかった。彼はすでに眠りに落ちていた。私は天井を見つめながら、考えていた。彼のことについて。セックスと愛について。私たちがしなかった会話について。そして、あの留守番電話へのメッセージについて。

暗闇の中、彼の鍵を見つけ、彼を眠らせたまま、どうにかして外に出た。通りを車で走り進む。通りにはまったく人影がなかった。午前3時だったと思う。彼のアパートに忍び込んだ。何か思ったか、私は部屋の明かりはつけずに中を歩き進んだ。多分、あんな風に忍び込んでいることに対する罪悪感がそうさせたのだと思う。電話機をみつけた。することを間違えたりしないようにランプのスイッチをつけた。

私は、朝早く目が覚め、隣で眠るボビーのことを見つめていることが何度もある。あれからもう何年も経っているけど、いまだに私は思うことがある。あのメッセージを残したとき、あの留守番電話はちゃんと動いていたのだろうかと。


おわり