「いつまでも彼」 Always Him   by Virago Blue

「・・・施設の性能・・・数百万・・・コンサルタント料・・・」

単調な声が続く。私は、まるでちゃんと理解しているかのように、時々、うなづいては、心のこもった笑顔を見せた。その紳士は、私の方をちらりと見て、笑顔を返した。

「・・・退屈な話だとは思いますが、スミス夫人」

「これはディナーを兼ねた打ち合わせですよね?」 私はワインを口に含んだ。 「私は構いませんよ。本当に」

私はテーブルの向こうにいる夫の視線を捉えた。彼はウインクをした。

夫の、あの青い瞳を見て、私の心は別のところをさまよい始める。

25歳のときの彼。真っ白なテニス服。ウェーブのかかった黒髪と日焼けした顔。そしてサファイアのような青い瞳。セクシーな活力に輝いていた。

「綺麗だね。赤は君の色だね」

今夜、私は赤を着ている。

長髪だった黒髪も、今は短く、地味なスタイルになったし、白髪も少し。真っ白なテニス服もしばらく着てない。だけど、カーキとデニムの姿も同じくらいセクシー。長い黒まつげの青い瞳もまだ、セクシーな活力に輝いている。キラキラと輝いて私を見つめ返している。

テーブルの向こうの夫を見つめながら、私は興奮してくるのを感じた。時計に指をあてた。そろそろ帰る時間を知らせる合図。夫は、その合図を送ったわけを理解してくれた。

その後、私はテーブルでの会話から脱落。夫に意識を集中させていたから。

彼の手。長い指。金色の腕時計。あの手が私たちの赤ちゃんを抱くのを私は見た。優しく涙を拭うのを見た。若かった時代へのノスタルジーを感じバイクにまたがって引き裂くように道を飛ばす時、ハンドルを握るところを見た。私の視線は、真面目そうなボタンダウンの襟と赤褐色のネクタイを通り過ぎて、大きな肩へと移る。愛し合うときに、その肩が私の上で動くのを見た。速球のボールに向って力強くスイングするときの、背中のひねり、強張るふくらはぎ、力が入れられ、筋肉が盛り上がった両脚を見た。そして、あの、澄んだ青い瞳。あの瞳が私に微笑み返すのを見た。あの瞳で私と一緒に笑うのを見た。新しく生まれた私たちの子供たちを抱き、涙を浮かべるところを見た。

官能に興奮した瞳が、私の薄緑の瞳と視線を合わせるのを見た。私はサクラ色の唇を舌なめずりして見せた。

夫は、別れの挨拶をした。私たちの早々の逃避を残念に思っている表情を知りつつも、私はお辞儀をし、握手をした。

「ベビーシッターが・・・」

そう私はつぶやき、彼らが、私の曖昧な言い訳について理解してくれればと期待した。

気難しい人々から逃れながら、「急いで」と私は息を切らせる。

二人、静かに期待しながら夜の闇の中、車を走らせた。

「そこを曲がって!」

パンティを脱ぎながら、指示を出した。夫は暗い森の中へと進路を変える。

「覚えている?」

夫は目を輝かせながら、私を見やった。

「もちろん、覚えているわよね」

夫に、それ以上、指示する必要はなかった。二人が、昔していたお決まりの手順へ夫は滑らかに進んでいく。フロントガラスの先、穴だらけになった道路が伸びている。木々は、あの頃より3倍は大きくなっていた。車は線路を越えて、二人だけのオークの木の下に着く。夫はエンジンを切った。私は彼の膝の上にまたがり、彼に触られ、我を失っていく。暗闇の中、二人で揺れ動いた。車の窓は熱気で曇っていく。なんら気兼ねなく私たちは声を出しあっていた。

23歳のときでも、93歳になっても、いつまでも彼。

ASSM、1周年おめでとう。

青い瞳さん、お誕生日おめでとう。


おわり