「どうして、そんなくだらないものを真面目に読めるの?」
「読んでるわけでないよ。ただ見ているだけだ。君はアーティストだろ? 理解できるはずじゃ?」
「私は芸術のアーティストなの」
彼女は 「芸術」 というところに強調を置いて言った。彼女は彼の肩ごしに覗き込んだ。彼が夢中になっている本。 『ファンタシー世界の偉大なアーティスト達』 どのページにも、半裸同然の、官能的な体つきの女性闘士と、半裸同然の、官能的な逞しい肉体の男性闘士が出ている。彼女は鼻で笑った。
「男たちは筋肉隆々だし、女たちは巨乳の胸だし」
「私は、男の乳房が女の乳房より大きい映画なんか見る気はない」 彼は、グルーチョ・マルクスの言葉を引用した。
彼女はページを捲りながら言った。 「私でも、もっといい絵を描けるわ。っていうか、まともなアーティストなら誰だってできるわ」
「どうしてそう思うんだい?」
「だって、この絵、みなばかばかしいもの。ここに出てる人物は、命を賭けて戦ってるということでしょう? なのに、まるで肉体美を誇っているポーズを取ってるとか、シュールといってよいほど戦いから気をそらしている。ドラゴンに襲われているこの美人を見てみてよ。まるでビーチでタオルの上に寝そべっているのと同じようにしてるわ。誰かにお腹の上にコップの冷たい水をかけられたように、空を見ているけどまったくちぐはぐなポーズだわ」
「ドラゴンの手がまさに、彼女の乳首に触れそうになっているね」
「は、は、は、ほんとに面白いわ。それに、あの鎖は何なの? 1本は首の周りにかかってて、もう1本は、脚の間にかかってるけど、どこにも結びついていないみたいよ」
「脚の間の鎖は、もちろん、ピアスしたクリトリスにつながってるのさ」
「まあ! ひどいことを言うわね! でも、アングルが全部狂ってるわよ、この絵」
「この本の絵を見て、興奮してるんじゃないのかい?」
「ティティアーノは興奮するわよ。それに、クリムトもたまにはね。でも、これはダメ。偽物だってことがあまりにも露骨に出てる。何か、青年向けのロールプレーイング好きの精神に露骨に媚を売ってるわ。ほら、このページの女の人。彼女、アマゾン族のつもりなのよね。でも、ひどいわ、足の指に銀色のペイントをつけてるじゃない。彼女、どこで手に入れたのよ? 街のハイボリアの店で5ドル10セントで買ったって言うの? ファンタジーの本の読者っていうのは、絵的に完璧なファンタジーの表現は望んでいないのよ。何かぼんやりした、あいまいなものが欲しいのね。夢を見たがってるのよ。想像力で補えない部分を埋めるもの。厳密正確な描写は望んでなくて、情緒とか劇的なものを望んでいるのね。どうりで、この足の爪のペイント具合、10本とも緻密に描かれているけど、絵画的にはうまくいっていないわけよ。それに、この女の人の乳首についてるメタル製の乳首隠しのようなもの、これ何よ! そもそもどうして落ちないでくっついたままなの?」
「こんな風にくっついてるからさ」 男は両手の指を全部使って、彼女の乳首を強くつねった。
「あん! あなたこそ、したくなってるんじゃないの? それに、このステンレス製のTバック・パンティはどう? こんなの履いて歩いたら、ものすごく痛いわよ」
「その反対さ。適切な位置に嵌るようなディルドが仕込んであるんだ。彼女はバギナの筋肉を使って、脱げないようにしているんだよ・・・それに、そうしてることでかなり愛液が出て潤滑もいいしね。これを吸着させているととても気持ちいいんだよ・・・」
「うえぇ!」 彼女は、納得してなさそうな抗議の声を上げた。
「それからね、このTバックにはもう1つ、ちょっと小さなディルドもついていて、彼女のここを貫いてるのさ・・・ここをね!」
彼女は本を床に落とした。