エイミが言った。「これはママの絵ね」
エイミは私が背を向けている間に、私の家の物置を漁りまわっていた。16歳の娘がやりそうなことだ。彼女は4歳のときから、私の家に自由に出入りしている。
私はわざと謎めいた返事の仕方をした。 「そうかな?」
その絵はずいぶん見ていなかったが、はっきりと覚えている。曲がり木の椅子に脚を広げて座る彼女を描いた絵。けだるそうに椅子にもたれ、乳房をあらわにしている。片手を怠惰に黒く茂った陰毛に這わせた姿。
エイミは絵を壁に立てかけた。
「これはママね。それはいいのよ。ママはいつこれを描かせたの?」
「自分でお母さんに訊くべきじゃないかな」
「ええ、分かったわ。こう訊けばいいのね。ママ? ママはいつホワイトさんのために服を脱いだの? ママは彼とやったの? どうやらそのようね」
「エイミ、君はそんなことを考える立場にはいないのだよ」
「さっき私が言ったことは本当なの? 言ってよ」
「君には何も言うつもりはない」
「あそこにはいたるところに裸の女たちがいるわ」
エイミは私の物置を指差していた。
「裸の女の絵を描くのが好きなの?」
「私は絵描きだ」
「年寄りの絵描き」
「それでも絵描きだ」
「パパは知ってるの?」
「君には何も言うつもりはないよ、エイミ」
「ママとやったの?」
「エイミ、言ったはずだよ。これは話題にするようなことじゃない」
エイミは目を細めて私を見た。
「私の方が見栄えがいいわ。私の絵を書いてみたい?」
「絵を描いて欲しいのかな、エイミ?」
「まあ」
「どうして?」
「ママがしたから」
「理由としてはそれで十分なのかな?」
「私の胸の方がいいわ。見て、ママの負けでしょ?」
エイミはくるりと私の方に向き直った。
「私の絵を描いてみたくなってるんでしょう。顔に出てるわ」
エイミは難しい素材だった。おどおどと服を脱いだが、裸体を晒した後は挑戦的だった。そして、すぐにリラックスし、自分の肉体を誇らしく見せた。だが、じきに退屈しだす。
「あなたが私にセックスするのを待ってるんだけど」
「私が君にセックスすると、どうして思うのかな?」
私は素早く絵筆を動かしながら訊いた。この仕事は、休憩を入れずに1回でしあげなければならないだろう。
「あなたがママとセックスして、可哀相なパパは、そのことを全然知らないから」
「エイミ、君は全然知らないじゃないか?」
「絵にあるわ。見れば歴然としている」
私は、もう何年も前にエイミの母親を描いたのとまったく同じスタイルでエイミを描いた。あの頃、私とエイミの母親は恋人同士であり、エイミの父親は戦地任務で家を離れていた。だが私はエイミに性的な誘いをかけることはしなかった。それには歳を取りすぎていた。
翌日、絵の仕上げをしようとしたら、絵がなくなっているのに気がついた。3軒先のエイミの家に向かった。エイミが私を中に入れた。
リビングルームに行くと、へレンが私の描いたエイミの絵を見ていた。ヘレンは、まるで私が彼女の心を引き裂いたかのような視線で私を見た。彼女は立ち上がって、エイミの頬を平手打ちした。
エイミは赤く腫れた頬に手をあてていたが、勝利者のように微笑んでいた。
娘というものは、ときに、非常に残酷になることがある。