「いけばな」 Ikebana by Nick Scipio  From Desdmona's Erotic Stories Contests: 2003 Erotic Postcard Fiction Contest Winners

親愛なるいとこ様

お元気でお暮らしのことと思います。あなたに会えず寂しく存じております。ご先祖様があなたを見守ってくださるよう、お祈り申し上げております。

でも、私は今、筆を持ち、すずりの上にかざしつつも、手が震えておりますの。どこからお話ししてよいものか分からないのですもの。先に差し上げたお手紙以来、とてもいろいろなことが起きたのです。

ご存知かと思うけど、私は、お父上に、ノブナガ・タカシ様という素晴らしいお殿様との縁談を固めていただき、江戸の都へと送られています。結婚式のときの着物、とても美しかったのですよ。赤の絹地に私の名前にちなんだアヤメの刺繍。帯はとても豪華で、結ぶにも仕えの者が3人がかりでしたの。ああ、本当! あんなに素晴らしいもので眼を楽しませたこと、一度もありませんでしたわ。

その夜、ノブナガ様は私のところに来てくださいました。私は期待に体を震わせていました。ノブナガ様は、不親切ではありませんでした。でも、あのお方は、愛する兵士たちとの鍛錬の方が場慣れているようでした。殿は私のことを楽しんでくださったらと思っているの。私は良き妻になりたいと願っておりますので。でも、悲しいことに、ノブナガ様は式の次の週に、戦闘配置につくため騎馬隊と出立してしまいましたのよ。

その時を境に、入れ替わるようにして、私は、新しくできたお姉さまのキカコさまと一緒に時を過ごすようになりました。それにね、キカコさまは、ノブナガ様に私を嫁にするよう勧めたのはお姉さま自身だと仰ったのです。その時の私の驚き、想像できるかしら。

ノブナガ様は無口ですが、キカコさまは明るくてとても楽しいお方。ひまわりを意味するお姉さまのお名前そのもの。私たち、起きているときはいつもずっと一緒にいますのよ。俳句を読んだり、藤すだれの下を歩いたり。

お姉さまには、いけばなも教えていただいています。陽気で奔放なひまわりの花を使いますが、優雅なアヤメがお姉さまのお気に入り。二つの花は互いに相補うもの、とお姉さまは仰ってました。

今夜、お姉さまと二人だけでお庭を散歩することになっているの。期待に体が震えるのを感じています。

ここに来て、とても幸せなのですよ。

草々

あやめちゃんより


おわり





Desdmonaのコメント:
「いけばな」は絶品といえるエロティカです。本当の葉書スタイルで書かれた本作品において、私たちは、お見合い結婚、非常に繊細な密通の感情、そして昇華した恍惚感を、存分に、そして情熱的に語り掛けられます。不思議と惹きつける単純なスタイルを用い、優しくしかも的確な調子で、語り手は自分の身の上や環境を、実に親密に、ほとんど無邪気と言ってもよいけれど、まったく無邪気と言うわけではない語り口で伝えています。クライマックスにおいて、おそらくこの後に起きる愛の行為と同じほど強烈な至福の瞬間を読者は読み取り、理解し、多分、経験すらすることでしょう。実に圧倒的で、優美で、語りも美しいこの愛と期待の物語を、私は躊躇することなくコンテストの1位に推しました。





<アッシュのコメント:一応、忠実に翻訳しました。突っ込みどころは眼に余るほどなのですが。>