みほは用心深くお湯に足を伸ばし、そっと中に入れた。可愛らしく丸めた足の指が、まるで5球の光沢のある真珠のよう。湯面に波はなく、ガラスのように張り詰めていた。みほの足指が触れ、一瞬、表面張力の抵抗が表れるが、すぐにお湯と彼女の柔らかな肌との完璧な調和が訪れる。
みほは海に面した村に住んでいた。私は、その村を見下ろす、岩らだけの急な斜面に建つ小屋で一人住まいをしていた。みほの夫は漁師だったが、彼は若妻のみほと幼い娘を残して亡くなっていた。みほと私が愛し合うようになったのは、投げ上げた石が地面に落ちてくるのと同じく必然的だったし、かつては大海の深底に眠っていた岩も、幾年もの年月の後には山の斜面に腰を落ち着けていることもあると知るのと同じく奥深いものだった。
みほが湯の準備を始めるとき、私にはそれが分かる。木々が開いたところから、村の家々が見下ろせる。そして、あの小さな灰色の姿も。それは、薪置き場から家へと向かうみほの姿だ。時を経ずして、ほのかな煙が煙突から立ち登りだし、そして私は履物に足を入れる。
みほの愛の営みは、変わり行く季節にしたがって変化する。夏は、灼熱に燃え上がる。汗と喉を搾るような情熱の叫び声。秋は、次第に落ち着いていく世界のように、物憂げで、同時に繊細になる。真冬になると、みほは再び少女に変わる。暖かさを求めて両腕、両脚で私を包み込み、強くしがみつき、冬の風のような溜息を漏らす。春は、彼女が最もめまぐるしく変化を見せる季節だ。春の雨が窓に降り当たり、優しく打ち鳴らすのにあわせてあくびをしながら背伸びをし、再び陽が照り出すのにあわせて目覚め、笑顔を見せる。そして、私とみほは一日中、寝床を共にし、やがて午後の柔らかな日差しが夕暮れの薄日に変わり、窓の外、みほの幼い娘が水溜りのそばにしゃがみ、木の棒で優しく水面を叩き、波模様が広がる様を見ている間、二人愛し合うのだ。