僕の脇を彼女は通り過ぎて行った。通路を歩いて行く。
僕が興味を惹かれたわけは、僕がその女性の服装が気に入ったからである。体に密着したセクシーな服やミニスカートは好みではない。そういう服装は、想像の余地をまったくと言っていいほど奪ってしまう。僕はむしろ質素な服装の方が好きだ。オフィス・レディが着るような服である。裾は膝のちょっと上まで、後ろは尻があるところにほんの少しだけ盛り上がりがあるのが見える程度のもの。ピンク、淡青色、薄いグレー・・・これが僕の好きな色だ。そのような色だと、歩く彼女のスカートの中、滑らかな白い太ももが前後に動く様子が簡単に想像できる。
僕は、女性が僕に振り向いて微笑みかけてくるときが大好きだ。胴体がひねられ、きりっとした白ブラウスの腰のところに皺がよる。髪が片方の肩へ振りかかる。以前、スチュワーデスが通路で前屈みになって僕に振り向いてくれたことがあった。でも、今はその話しをする時間がない。たった500語なのだから・・・
僕は、できるだけ時間を置いて、彼女の後について通路を歩き始めた。失礼にならないような間隔を置いてであるのはもちろんだ。トイレの外で、僕は数字を157まで数えて、ようやくノックした。
彼女はドアから頭を出し、左右を確認し、僕を中に引き入れた。
「素敵なお方・・・」と彼女。
「ナイスな尻だ・・・」と僕。その僕の言葉に、彼女は悪戯っぽく僕をつねった。
そして、僕たちはキスを始めた。トイレの壁に体を押しつけて。僕は両手を滑り降ろし、彼女の尻を触る。確かにナイスなのだ。彼女は、僕を離そうとするかのように僕の胸板に両手をあてた。そのありきたりなほどに極度に女性っぽい、か弱い女の子のような振る舞い。僕はそれが大好きだ。彼女の胸に触りたかったが、僕の腕を彼女の腕の内側に入れることがどうしてもできなかった。
彼女の服を脱がそうとすると、彼女はそれを押しとめた。
「・・・今、あれの時期なの・・・分かるでしょう?・・・」
愛らしい瞳をまばたきして見せる。実際、少し顔を赤らめている。その表情を見れば誰でも完璧に心を和らげてしまうだろう。
彼女は床にしゃがみこみ、僕のチャックを降ろした。
あの狭苦しいトイレの中、僕のを中から出すのは、かなり手こずる作業だった。何しろ彼女はしゃがんでいるのだし、列車は揺れ続けているのだから。彼女が僕のを口に含んだとき、僕は心の中で彼女に称賛の気持ちを表明し、彼女の髪を優しくなでた。
彼女はなかなかのテクニックの持ち主だった。亀頭部を指先でつまんで直立させ、僕の腹部に当てながら、柔らかい下側面に沿って舌先を上下に擦りつける。それをひとしきりした後、再び口に含んだ。
「これをするのは初めてじゃなさそうだね? 違うかな? つまり、列車の中で、こういうことをするのは・・・」
どうしてなのか理由が分からないが、僕は、女性にフェラチオをしてもらっている間、彼女に話しかけることが好きだ。多分、話しかけられた女性が、僕のを口に含みながら目を大きく見開いて僕の方を見上げる、その時の女性の表情が好きなのだと思う。
彼女は指を丸めて小さな輪を作り、僕を強烈な射精へと追い立てた。そして、彼女は僕の放出の大半を立派に飲み下したのだった。
彼女がトイレからこっそり出て行った後、僕は数を310から0へと逆に数えていき、その後、自分の席に戻った。
***
その数日前のこと。
切符売り場の女性が不思議そうな顔をして訊いた。「青木様、奥様とは同じ席でなくてよろしいのですか? 長旅ですよ?」
「いや結構です。さっき頼んだように、私の席は2車両前の席にお願いしたい。あなたも、結婚すればいつの日か分かると思いますよ」