海兵隊の最下級兵ダンカン・モーガンは、コーヒーカップを手に、食堂の奥にいるウェイトレスをひそかに監視していた。小さくて細長い食堂。標的への照準合わせは準備万端。翌朝、出航することになっているモーガンは、いま熱く燃えている。
彼女は彼が見ているところを何回か見かけていたが、一切無視していた。きっと彼女は、俺のような男たちに慣れっこになっているのだろうとダンカンは思った。彼女には邪魔になる荷物袋を床に置いて一休みしていく水兵たち。何と言っても、この店の真ん前は出航地の港だ。出航前の最後の夜を下調べをして過ごす水兵たちがたくさんいてもおかしくない。
彼女は美人だ。本当に。腰周りが細いので男の子のように見えるが、そこから上に目を移せば、誰でも魚雷発射の準備が整う。だが彼女の一番の魅力は、ウェイトレスの服に隠れた2本の脚だ。ダンカンには、ふくらはぎしか見えないのが大半だったが、それでも彼女が一級品であるのは見て取れた。彼女は、どういう風にしてか、脚を包むナイロンを手に入れていた。左右の脚、黒いシームが線となって踵から伸び、服の下へと隠れる。戦争のせいで、魔法の繊維のナイロンは貴重品になってる。だから彼女が、どちらかと言えば資産があるのは確かだ。
彼女が来るのを見て、ダンカンは身を固くした。
「コーヒー?」
「ああ、頼むよ」 彼は制服を正した。 「俺、明日、出航なんだ」
「元気でね」
「でも俺には彼女がいないというところが問題で」
「それで私のストッキングが欲しい、と?」
「お願いだ」 ダンカンの顔が真っ赤になった。「俺が、初めてってわけじゃないんだろ?」
「ええ。それに、あなたが最後ってわけでもないわ」 彼女はダンカンに顔を寄せた。彼の耳に彼女の熱い息がかかる。「何も履いていないのよ、水兵さん。眉墨の鉛筆で線を書いただけ」
「ええ? 俺は誰にも・・・」
彼女は笑みを浮かべた。「舐めて消したいと思う?」
翌朝、ダンカンは持ち場についていた。腰を下ろしている。両手で細い鉛筆をいじっていた。せんさく好きな最下級兵が顔を出し、その奇妙な鉛筆を覗き込んだ。
「そんな鉛筆、見たことねえなあ」
「そりゃ残念だな」 ダンカンはその男に軽くウインクして見せた。
[Reviewers' Comments]
いくつかある特殊な言い回しを理解できなくても、このストーリーの楽しみが損なわれることはないでしょう。応募作の中、ストッキングを使わないにもかかわらず応募資格に適った唯一のストーリーが、これでした。セックス・シーンは出てきません。エロティックさの点でもボーダーライン。ですが、何か私の心から離れようとしないものが、この作品にはありました。主要な登場人物の軽いやり取りが好きです。それに、作者が、2人の逢瀬についてあからさまにしたり、詳しく述べたりせず、ほのめかすだけにしたところも好きです。オチのところでは声に出して笑ってしまいましたし、これを書いたのが自分だったらなあと思ったのも確かです。