オンラインのアダルト小説について私的に表彰を行っているThe Golden Clitorides Awardsというところで、2001年度のShort Story of the Yearに輝いた作品です。作者のKatie McNさんは、Author of the Yearにも選ばれました。Wife物ではありませんが、お楽しみください。Ashe
かつて死はすべてをおしまいにするものだった。 でも、死神は、そういう風には働かないと、いま私は思っている。
彼女は、4車線の車の行き来を横切る存在だった。 ブロンドの髪の、強い意志を持った厳しい表情。 私の関心をすっかり奪っていながら、私がいることなど一度も気づかない夢のように美しい人物。 もちろん、そこには他の人たちもいたが、私には見えていなかった。 実際には見えていなかった。 あの時は。
「ほら、メアリ・ケイ。 通りの向こうの男を見てごらんよ。 ジョッシュ・エバンズだ。 僕の元仕事仲間。 彼がウィルシェア通りに戻ってくると、噂では聞いていたけど、その噂、本当だったらしい」
どうして彼は彼女のことを見過ごすことができるの?
カリフォルニアでしか考えられない、あの連日摂氏38度のある日、私たちは、ランチをすまし、オフィスに戻ろうと歩いていた。 普段なら、どこかひっそりと静かなところに消え入ってしまいたいと思うような一日。 ちょうど私の犬が、お昼寝をするときに見つけるようなひっそりと静かな場所に。
でも、今日は違う。
私は、新しい顧客と契約を結んだばかりだった。 この契約さえあれば、うちの会社は、今後2年ほどはやっていける。 ボスも、私がこの世界で最も素晴らしい人間だと誉めてくれたばかり。 もちろんボスが本気で言っているわけはない。 それは分かっているけど、ともかく、そういう言葉を聞かされて気持ちいいのは確かだ。
「アル、あの女の人、だれ? 働いている人かしら?」
アルが教えてくれるのを待っていたけど、アルは、最初、彼女に気がついていないようだった。 彼はロサンジェルスの広告業界にいる人物ならほぼ全員のことを知っている。 私たちのエイ・ジャーディン・エ・シィ社はロス一番の攻撃的な広告代理店だけど、彼は実に人の好い男だとして評判。
「ああ、彼女ね。 マロリー・ケインだと思うよ。 ジョッシュがサンフランシスコで彼女と会ったと誰からか聞いたなあ。 なんでも、彼女を説得して自分の代理店でセールスの仕事をするように甘く言いくるめたとか。 本当にきれいな人だよね。 でも、彼女、契約を取りにかかるときは、殺し屋になるって話しを聞いてるよ」
アルは、この業界の、まるで戦争のような熾烈な競争について、話をいくつか知っていた。 それにしても、アルが「殺し屋」と言う人って、ただ、たくさんいる有能な女性のことを言っているだけのように聞こえる。 男性よりも、ちょっとだけ仕事を頑張る女性。 男性に勝つ程度だけ頑張って、ある日、本当に勝利を収め、男性がそのことをいつも驚く、そういう有能な女性のことのように。
おかしいわ。 どうして男はいつもビジネスのことを戦いと考えるのかしら。 戦いじゃなく仕事として考えないのは、なぜかしら。 単に、何か他の変わったことが起きるまでの、楽しいことと考えないのは、どうしてなのかしら。
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広告業界の面々が一堂に集まったところを見たとき、この部屋の真ん中で爆弾が爆発したら、ロサンジェルスの知的レベルがどこまで落ちてしまうだろうと心配せずにはいられなかった。
「アル、私を一緒に連れてきてくれてありがとう」
それまで代理店のオープン・ハウスには来たことがなかったし、ジョッシュが自分の新店にどのようなデコレーションを施すのか見てみたいと思っていた。 アルの方は、ジョッシュとまた友達関係になれるかどうかを確認するためだけに来ていたのだと思う。 とにかく、分かるでしょう? 目的は何だっていいのよ。
私は、冷静に落ち着き払って、平然としていた。 いや、それは嘘。
1週間前から、どんな服を着てこようかと考えてきたし、1000回は考え直した。 結局、セクシー系のビジネス服に決めた。 このタイプの装いは、広告業界では効果がある服装。 ただし、男たちにチェックされているのに気づかないフリができるなら。 ヘアについては、美容院で丸半日。 それも、髪の毛をポニーテイルに整えてもらうためではない。
憧れのヒーローが一堂に会している場所にいて、私がとても興奮していたことは、誰にもばれていなかったと思う。 ちょっと驚いたことは、私のことを憧れの人と思ってくれている人がわずかにいたこと。
その日の午後、会った人の数は何百万人にもなった。 だけど、お話ししたのを覚えているのは、たった一人、あの人だけだった。
「こんにちは。 私、マロリー・ケイン。 あなた、メアリ・ケイ・ニコルズでしょう? あなたの評判は本人を上回っているわよ。 ジョッシュは、あなたとアルのことをいつも話しているもの」
彼女の声には、私の全身を暖かさと優しさで包み込むような微笑みが漂っていた。 おもしろさと美しさの外面に包み込まれた、謎と興味をそそる内面の持ち主。 そこには、もやもやとした曖昧なところも、意図的に人をだますようなところもない。 生身の人間だけ。 私と同じ人間。
まるで私たちが100年前からの知り合いであるように、二人の会話は盛り上がった。 もちろん、仕事の話が多かったが、他の話題もたくさん。 マロリーは、ほとんど何の理由もなく、有名デザイナーの物まね安物服を買うことができる人。 一方の私は、自分でも気がつかない緊張を取り除いてくれる言葉をもらえる、この世界を知っていた。 マロリーと私の二人とも知っている共通の知人がいた。 その中には私たちが好きな人もいれば、中には、そうね、どういう人か言わずもがなと思うけど。
「ねえ、メアリ・ケイ? ここを出て、どこかで白ワインでも飲まない? ここの人たちには、1日でこれだけ会えば、私にはもう充分」
二人で外に出て、彼女のオフィスがあるビルの1階のラウンジに行った。 ちょっと可愛い感じの場所。 照明が、話し相手の顔が見える程度は明るいけど、日焼けしてしまうほどの明るさはないお店だった。
二人は何時間も何時間も一緒にいられる仲良しになっていた。
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一度、「一緒にランチにしようよ」ということになり、その後は、チャンスがあればいつでも、繰り返し会うようになった。
男性の場合はどうなのか分からない。 だけど、女性の場合、何か秘密を分け合えて、信頼を置ける特別な人が必ず欲しくなる。 二人だけが知っている秘密をいくつも蓄えておける関係が欲しくなる。
私とマロリーはほぼ2年間、毎週1、2回、会った。 二人ともすでに一番の親友になっていたし、会うときはいつも、前に会ったときから1、2分しか間を置いていなかったような感じがした。
11月17日は、すべてが変わった日。
二人の間柄は、友人同士から一番の親友に変わり、さらには、私たちもよく分からないけど、二人とも互いに心地よく感じているのが分かり合っている関係になっていた。 水平的な広がりの変化ではない。 ひとステップずつ上へ登る変化。 私なら、至福の状態まであとたったワンステップと思いたいような状態。 そこに登る変化だった。
今度は、私が気持を示す番だった。 マロリーを、ちょっとした本格的ニューオリンズ風のご馳走に招待した。
テキサスに住んでいた子供の頃。 ある時、母は、ニューオリンズ出身のメイドさんを雇うことに決めた。 西テキサスで見つけられるお手伝いさんは「あまりにもがさつ過ぎる」という理由だった。 当時、母の言葉が何を意味しているのか分からなかったけど、新しいメイドさんのルシールのことを私が大好きになったのは覚えている。 ルシールは、私に料理を教え、ザイデコ音楽のことを紹介してくれた人。 たいていの人とはちょっと違った人生の見方をしていた人だった。
大都会のカウガールは、注目すべき存在。
私にとって、お料理は1日がかりの仕事。 朝、最初にするのは、お店に出かけて最高のものだけをそろえること。 オウル・シュリンプ(ole shrimp)というとても大きな海老。 ザタレイン(Zatarain)というところが作っている辛味のソーセージひとつながり(hot links)。 それから漁船から水揚げされたばかりのアサリや牡蠣やロブスターを山盛りが必要。 単に、「お腹、すいていない?」と問い掛けるだけの料理よりも、ちょっと上の料理を目指しているときには、他にも必要なものがある。 スペアリブ、オクラ(gumbo)、ジャンバラヤ(Jambalaya)、ブラック・ビーンズ(black beans)、それにダーティ・ライス(dirty rice)も用意しなくては。 もちろん、ジャック・ダニエルズを注いだグラスを手にちょっとずつ啜りたいと思っているし、ひょっとすると長首の瓶のヘカテ(Hecates)6本入りを2ケース用意しておかなければならないかも。 そうだ、私は、誰も食べたことがないようなすごく美味しいピーカン・パイの作り方もまだ覚えている。 食事の後で、焚き火をしたり、マシュマロをあぶったりはしないと思うけど、それでもまさかのために用意はしておこう。
私は、どの料理についても、いちいちレシピーを見てそれに従って作ることはしない。 ただ、見て覚えたままに作る。 ソーセージにどれだけタバスコを使うかとか、鍋にどれだけこのスパイスを振り掛けるかとか、火にかかっている料理が何であれ、それにどの野菜をどれだけ入れるかとかを見て、料理を覚えていた。 それに、過ぎ去った昔の時代から長年、優れた料理人によって受け継がれてきた2、3の秘訣を、私は会得していた。 どのようにしてかは分からないけれど。
食事をいただく前に、料理について説明を求められ困るときがある。 最初、マロリーはためらいがちだった。 でも、次第に慣れ始める。 「おかわりをもらえる?」とか「どうやってこれを作るの?」とか「これ、なんて言う料理?」とかとマロリーは訊いてくれ、不安を感じていた小娘の私をとても幸せな気持にしてくれた。
二人でリビングに座り、ジャック・ダニエルズのコーラ割りを飲みながら、プロフェッサー・ロングヘア(Professor Longhair)がアメリカ土着のブルース音楽(down home music)を鳴らすのを聞いていた。 いつのまにか、コーラ割りは白ワインに、ブルース音楽はエア・サプライのポップス音楽に変わっていた。 飲み物も音楽も、私たち二人に、何か新しい、今までとは違うことをさせようと励ましていた。
初めてのキスは特別。 人生の残り、ずっと忘れずにいることになるキス。
「メアリ・ケイ。 私、どうしてしまったのか分からない。 ただ、あなたにキスしたくなってしまったの。 それも、突然に。 分かってくれる?」
もちろん、分かっている。 私は、抵抗せず、マロリーが私に与えてくれるものをすべて、心地よく楽しんでいた。 お返しできるなら、できる限りのものを彼女にお返したい。
「マロリー、教えて? もし、そんなに気になるなら、私もあなたにちょうど同じようにしてあげる」
2度目のキスは、すぐに3度目のキスにつづき、4度目、そしてそれ以上に連鎖していく。 リビングルームは、いつのまにか寝室に変わり、親友同士の二人は、いつのまにか恋人同士に変わっていた。
たいてい、女性だけが知っていると言える秘密が一つある。 女が、最初、ちょっとだけ無理をするということもあるだろうし、自分が何を手に入れようとしているのか本当のところは分かっていないようなフリをすることも多分あると思う。 でも、確かな手がかりは下着だ。 女性が木綿のブラと下着をしていたら、あのようなことをしたら彼女はびっくりしてしまうだろうと思っておかなければならない。 でも、女性が、セクシーでちょっと何か特別なものを身につけていたら、その場合は、彼女は、多分、心の奥のどこかで、寝たいと思っているかも知れないと見ていいし、そうなってしまうことを嬉しく思っている可能性がかなり高いと見ていい。
「メアリ・ケイ、可愛いランジェリーね。 すごくセクシー。 どうしても触りたくなってしまうわ」
私はドレッシーな下着をつけていたのは事実。 でも、その後は、それを身につけていた時間が長くはなかったのも事実。 マロリーの小さな可愛い下着も、どこかに消えてしまっていた。 今、私もマロリーも、互いを楽しみあえる状態になっていた。 食通を唸らせるテーブルに並んだ美味しそうな料理のように。
マロリーの胸を触った。 感覚が彼女の胸から私の心に流れ込んできて、それが別の場所に流れていくのを感じる、私だけが理解できるあの特別な感情を保つ場所に。 マロリーの手が私の首を触れ、ゆっくりと背中を降りていく。 その繊細で可愛い手が、私のお尻の割れ目に忍び込むのを感じる。 彼女の口の中を探りまわる私の舌。 彼女の口の中の暗闇で、私の舌先が、人懐っこい歓迎の出迎えを受ける。 マロリーは、あそこを私のあそこに押しつけて、両手で私のセックスを自分のセックスに引き寄せた。 とても激しく抱き寄せられ、二人の体がいずれ一つの体に融合しそうに思われた。
私の舌がマロリーの一番大切な場所に完全にフィットするのが分かった。 それにマロリーは、私の舌を、仕事がすべて終わるまで、あそこに捉えて離さない特別なわざを持っていた。 二人の人間が初めて愛し合うとき、いろいろな戸惑いを感じることがある。 だが、それが私たちの場合にはまったくなく、なんら困惑を感じることなく愛しあうことができた。 どうしてなのか、そのわけは分からない。 二人とも経験したことがないような喜びの高みにお互いを導きあうことができた。 どうしてなのか、そのわけは分からない。 二人は何度も何度も繰り返し、愛しあうことができた。 どうしてなのか、そのわけは分からない。
女性が二人、恋人の関係を始めるとき、二人はいろいろなことを学ばなければならない。 その夜、私たちはたくさんのことを学びあった。 そして、その後、幾夜も多くのことを学びあってすごすようになった。
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すべて完璧に進んでいった。
私はアパートにいろんなものをたくさん持っていて、彼女はほんのわずかの重要なものしか持っていない。 引っ越し業者の男たちは何も壊さなかった。 私たちが、ヒルクレスト通りのあの可愛い小さな家でずっと以前から一緒に住んでいたと感じられるようになるまで、あっという間だったように思える。
あなたはこれまで一度でも愛されたことがある? 望む人を誰でも自分のものにできるのに、欲しいと思う人はあなただけと思ってくれる人に無条件に愛されたことが、あなたはこれまで一度でもある?
毎日が宝石のようだった。 毎日、私たちはより多くを求めて愛しあった。
仕事で旅行に出なければならないときは、毎日、家に電話をしマロリーと話した。 彼女がいなくてどれだけ寂しく感じているか。 家に帰って再び彼女の腕の中に包まれる日をどれだけ待ち望んでいるか。 マロリーが出かけてしまうと、家は空虚で味気ないものに思われた。 マロリーなしでは、家はもはや家ではなく、私の世界が再び本来の姿に戻るまで、じっと待機していなければならないただの場所に変わっていた。 そして、二人が再び一緒になると、二人でそれを祝福し、離ればなれになって無駄に過ごした時間を忘れるのだった。 すべてが、二人のものだったし、さらにそれ以上、より多くも求めていた。
1年は2年になった。 3年目と私たちが気づく前に、すでに3年目になっていた。 4年目が訪れたときも、私たちはそれまでと変わらず愛しあっていた。 二人で、一緒に両腕を広げて、4年目を迎えた。
人の一生で、得ることが許されている喜びの量は限られている。 これほどの喜びを得た後は、何か他のことが起きなければならない。
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風邪を引いたときは、2、3日経てば治る。 本当の病気になったときは、これで終わりだと悟り、自分の人生を賢く使おうと最善を尽くそうとする。 だが、どこが悪いのか分からないときは、一体何をすべきなのか正確なところを理解するのは難しい。
マロリーは病気だった。 だが医者たちは、どこが悪いのか分からなかった。 マロリーは、その年、3回目の入院で病院にいた。 入院するたびに、マロリーが昏睡状態から醒めるのにかかる時間が長くなっていったし、入院するたびに、彼女は少しずつ衰えていった。 髪からは輝きが消え、弱々しくやせ衰えていった。 ただ考えごとをすることすらも、彼女にとって、以前よりも少しずつ難しくなっていった。 それでも、私たちは一緒だったし、私には、二人の愛も少しも変わったようには思えなかった。
ようやく医者たちは何が悪いのかを見いだした。 だが、その時には、悪いところを見いだしても、もはや事態に変わりがない状態だった。 マロリーが睡眠中に死んだ日、眠っていた私に冷たさが訪れ、その「さようなら」の言葉に私は目を覚ました。 魂が他の場所に連れて行かれたのにあわせて、肉体はその冷たさに支配されたのだった。
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時というのはとても面白い。
どういうわけか、時は多くの悪い思い出を消し去ることができる。 それに、時は、一種、日常的なことでも、遠い昔に起きたことだと、それに特別に明るい輝きを与えることができる。 私には、何年も、時はそのように振舞ってくれていた。 私は、二人の間にはいやな思い出など一つもなかったと納得しているし、マロリーがいまもすぐそばに立っていて私とお話をしてるのが見える。 あの時と同じように、話しをしながら、暖かさと優しさで私の全身を包み込む笑顔を見せ、私が彼女のところに行くのを待っているマロリーの姿が。
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まだ少女だったころ、母は私に、結婚とは二人の人間が一つとなって生きていくことだと言ってくれた。 当時、私は母が意味していたことが分からなかったが、今は、分かる気がする。