10月上旬
木曜日:夫婦のカウンセリング
夫婦のカウンセリング・・・。スティーブは、この言葉が嫌いになっていた。最近の彼は、バーバラとヒューストン氏の会話を、傍観者的に座って聞くだけになっていた。二人の話題は、バーバラが彼女自身のことについて新たに発見した事柄、そして、その事柄が彼女の不倫にどのように関係しているかについてが主だった。
バーバラはセラピストのところに通い始めており、そのセラピストは、バーバラに、不安感と自尊意識の喪失による精神的不安定を患っているのではないかと、彼女に伝えていた。流産の後、特に心的不安定が表面化していると。バーバラは彼女の人生の様々な時期に、治療が必要なレベルまで鬱状態になったことが何度かあったと言う。
バーバラは、自分自身の状態に関して見いだされた、このようなことすべてに傷ついた気配はなかった。むしろそれを喜んでいたと言える。スティーブの目で見た限り、彼女は、「自分が何者であるか」を見いだして大喜びしているようだった。ヒューストン氏のオフィスの外でバーバラと会うと、彼女は、スティーブが言う言葉のすべてに注意を傾け、明らかになっていることすべてに関してペラペラ喋り、暖かい笑みを彼に見せるようになっていた。このようなことは、この数カ月なかったことだった。スティーブは、そのようなバーバラの変化すべてに気分が悪く感じた。何もかも、こんな風になるのが遅すぎたんだよ。いまさら何だっていうんだ。
この時も、バーバラは、ヒューストン氏と、自分のイメージがいかにみすぼらしくなっていたか、その自己イメージのために浮気にのめり込んでしまったかもしれないことについて、長々と話しを続けていた。
「あのねぇ・・・」 スティーブは、突然、話しに割り込んだ。「ちょっとだけ口を挟ませてもらうよ。それを言い終わったら、お二人の個人的なおしゃべりに戻ってくれて構わないから。君たちのやり方からは離れて、邪魔はしないつもりだから・・・」
「・・・何を言いたいかというと、こういうことだ。僕は黙ってここに座って、この話を延々と聞いてきたわけだが、少し、わけが分からなくなってきているんだよ、バーバラ。この2、3週間、君が言ってきたことを聞いていると、君は、自分のことを犠牲者だと思っているようだ。そうじゃないのかな? 僕には、君が本当にこういう問題を抱えていたのか理解できない・・・少なくとも、君が浮気をする前は、君は、こんな問題を抱えているようには全然見えなかった・・・」
「・・・はっきりと分かることは、君が、毎週木曜日、実に晴れ晴れとした顔つきで、目を輝かせて、ここに来ていることだ。君は、これまでになく、今が幸せと感じているように見えるよ。・・・だが、今、そうやって幸せに感じていられるのも、そうなった、そもそもの発端は、君が他の男に会い始めることにしたことだったはずだが・・・」
「・・・君は毎日、赤子のようにすやすや眠っているんじゃないかな。賭けてもいい、そうだろう。目の下にくまなんかないのも当然だ。僕はどうかって? 薬を飲まなきゃ眠れなくなってから、ずいぶん経ちすぎて、そうじゃない状態がどうだったかすら、もう覚えていない。でも、君は、毎朝、気分さっぱりと目覚めているに違いない。今日は、自分のことについて、どんな新しいことが分かるんだろう、自分のことについてどんな素敵なことが見いだされるんだろうと、死ぬほどわくわくしながら目覚めているんじゃないかな・・・」
「・・・バーバラ、君は、このカウンセリングでのことを今はものすごく楽しんでいるよ。君は不倫を犯した。だが、その結果、今は皆に手厚く扱ってもらっている・・・」
「・・・僕のことは覚えているのかな? 僕は、君に浮気された本人だ・・・君に裏切られた男だよ、バーバラ。確かに、僕はめそめそ泣き出したりはしない・・・だが、どうして、僕は、この苦しい状態を受け止めなければならない立場の人間になってしまい、君は、自分自身を新たに発見して喜ぶ立場の人間になってしまったのかな? どう言っていいか分からないが、すべて逆さまになっているように思える。君は浮気をしたのに、僕がそれに悩まされている。・・・泣き言を言いたくないが、こんな状態は全然フェアとは言えない」
カウンセリングのその後の時間は、スティーブのためにバーバラとヒューストン氏にはどんなことができるかを探すことに変わった。スティーブの感情を和らげるために必要なことは何か? バーバラは道を外す前、彼のどのような要求を叶えていなかったのか?
スティーブは、フラストレーションのあまり、目を剥いた。彼は、こんなたわ言を、一刻も早く終わらせたいだけだった。それが今は、ただ話しを聞いているだけでは済まなくなり、話し合いに参加するよう求められている。話せ、話せ、話せ。そればかりを、求めてくる。
ヒューストン氏は、最初のカウンセリング時にスティーブとバーバラに記入させた質問紙を取り出した。
「多くの点で、お二人は、感情的に必要としていることに関して、大変似た考えを持っています。ご主人、あなたは、男女関係における主要な要求として、セックスよりも思いやりを優先させてさえもいる。大半の男性は、最も重要な要求としてセックスを挙げるものですよ。ということは、お2人の性的要求は満たされていたと考えてよろしいのでしょうね」
スティーブは、突然、不満の声を上げた。
「それは間違いだ。哀れなレイフと僕には一つだけ共通していることがある。どちらも、バーバラにセックスをさせてもらっていなかったということだ」 声に皮肉が混じっていた。「・・・僕は、3月末から一度も、自分の妻とセックスしていない・・・それに、それ以前にもほとんどなかったようなものだ」
「では・・・どの時点で、性行為が不満なものに変わったのですか?・・・例えば、お話ししてもらった、例の去年のクリスマス・パーティの前はどうでしたか? それまでは、満足できていた?」
「はい」とバーバラが答え、同時に、「いや」とスティーブが答えた。
バーバラは驚いた顔でスティーブを見た。その驚きの顔は、ほとんど瞬時に、怒りの顔に変わった。
バーバラが声を出す前にヒューストン氏が質問を続けた。「では、いつ頃から不満だったのですか、ご主人?」
スティーブはしばらくバーバラの顔を見つめ、じっくりと答えを考えた。そして、ようやく答えた。
「・・・新婚旅行から戻って2ヶ月ほど経ってから」
バーバラはハッと息を飲んだ。
「何ですって?」
二人の相違により、それからもう30分間、話が続いたが、最後には、スティーブはまったく話さなくなってしまった。彼の我慢の限界に近づいていた。
ヒューストン氏が、「トイレ休憩」を入れましょうと言った後、スティーブは、ヒューストン氏にもバーバラにも何も告げずに、カウンセリングが行われているビルを抜け出した。車に乗り込んだとき、携帯電話が鳴ったが、彼はそれを無視した。
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怒りと沈鬱。それが今のスティーブの日常の一部となっていた。毎日、眠るために睡眠薬を飲み、目を覚ますために何杯もコーヒーを飲む。医者に抗うつ剤を処方されたが、それを飲むと神経質になる感じがしたので、飲むのを止めてしまった。
彼を悩ませていたのは、バーバラの不倫それ自体もあるが、他に主に2つあった。その一つは、バーバラの言い分だった。彼女は、家の中で疎外されていたことと、自分の犯した不実に直面しなければならないことにより心の痛みを感じているとし、その痛みは、スティーブの感じている彼女の裏切りから受けた深い怒りと同等だと言い続けていた。
もう一つは、スティーブが顔を見せるといつも、過剰反応していると彼に言う人が必ずいることだった。スティーブは自分の感情を理解できない人々に分かってもらおうとしたが、今や、説明するのを諦めてしまっていた。とはいえ、内心、苛立たしさを感じていることには変わりがなかった。
この週末は荒れた週末だった。兄のジョンが電話をよこし、誘われて、土曜日に一緒にスポーツ・バーにテキサス大チームのフットボールを見に行った。テキサス大のロングホーン・チームは、確かに勝ったものの、あまりにもずさんな勝ち方だったので、スティーブにとっては、何の満足感も得られなかった。
翌、日曜日、ジョンの家でディナーを食べた。楽しい夕食だったが、ジョンと彼の妻サンディの間の愛情深さに目が行き、かえって心が痛んだ。サンディは、夕食後、ジョンの後ろに立って、長い時間、肩揉みをした。それを見てスティーブは涙が溢れた。そして、それを見られまいと、二人から目を逸らさなければならなかった。スティーブは、いとまを告げ、早々に引き上げざるを得なかった。
そして月曜日。その日の夜、彼は家で独りダラスのカウボーイズ・チームとシアトル・チームとのフットボール試合を見ていた。つまらない試合だった。カウボーイズは2点のリードにしがみついた試合をし、できるだけ早く試合を終わらせようとしているようにしか見えなかった。
スティーブは試合を見ていたものの、気はうつろだった。バーバラが感じていると言った『心の痛み』とは何なのか? 彼女はスティーブの心の痛みについて、本当に分かっているのか? 自分がそういう疑問に取り憑かれてしまっていることは分かっている。だが、どうしても頭から振り払うことができない。
この前のカウンセリングで、デビーのことについて話し、彼女がレイプ後、心痛を抱き、その心の空虚感に共感できると言った。だが、自分自身、共感しているとは言ったものの、誇張した言い方だったのは知っていた。実際は、自分は、逆の立場から、あの言葉を使っていたのだ。自分自身は、デビーの心の痛みをほんの少ししか分かっていない。だが、もしデビーが自分の立場なら、今の自分の心に巣食う空っぽの虚しさを理解してくれるのではないか。
だが、いずれにせよ、この酷い状態は好転しそうになかった。スティーブは、バーバラに、いま感じていると言うその『心の痛み』とやらが、いかに些細なものか、それを味わわせるにはどうしたらよいかを考えていた。今の自分の気持ちに比べたら、バーバラが感じている痛みなど取るに足らないものだということを、はっきりと思い知らせてやりたかった。だが、どうやったらそれができるか思いつかない。それを考えて、夜中、突然、目が覚めてしまったり、日中、他のことをしていなければならない時に、ぼんやり中空を見つめていたりしてしまってる。
ダラス・チームが3つ目のファンブルをし、緑色のジャージを着たシアトル・チームに負けたとき、玄関のドアにノックの音がした。機会が登場したのかもしれない。
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いや、単に機会というより、もっと正確に言えば・・・機会と誘惑。
「こんばんは・・・」
明るい声がスティーブに呼びかけた。「・・・私に会えて嬉しい?」
「あ、・・・ああ、もちろん・・・キンバリー・・・元気だった?」
スティーブは慌てた。彼にとって、この若い義理の妹は、今夜、玄関先に出迎えるとは予想していなかった人間の一人であった。
「ええ、もう、とっても!」 18歳の娘は嬉しそうに答えた。
多分、この答えが、彼女が日々の生活について感じていることを正確に表わしているのだろうと、スティーブは思った。彼女は、いつも、出会った人々や出来事について、熱っぽく喋り捲る。高校時代は、3年間、毎年、最も人懐っこい人物に投票で選ばれていたし、同じく毎年、全員一致でチアリーダーに選ばれていたのも、彼女だけだった。生徒たちも教員も、彼女と一緒にいることを楽しんでいたし、どこに行っても、彼女の周りには、開けっぴろげで明るい仲間たちがいつも付き添っていた。
スティーブは、キンバリーのことを、いつまでも輝きを失わないキラキラした個性を伴った、可愛いく、活発な娘だと思っていた。だが、最近は、それに加えて、どことなく、セクシーな若い女性へと変身したようにも感じていた。彼女の瞳の奥に、何か官能的にくすぶったものがあるようにも感じていた。
自分を見上げる彼女の仕草には、何かゾクゾクさせるものがある。そのような興奮は、これまで彼女との関連で感じたことなど一度もなかった。
スティーブは、自分がこの義理の妹に反応しているのを知り、うろたえた。さらに悪いことは、自分がうろたえていることを彼女が分かっているらしいことだった。股間が熱くなるのを感じたが、自分がそれを感じたと同時に、彼女もそれに気づいたのは確かなように思えた。
「私を家に迎え入れてくれないつもり?」 キンバリーは、にっこり微笑みながらスティーブを見上げた。
スティーブは、またも、うろたえつつ、スクリーン・ドアを手で押さえ、彼女を家の中に迎え入れた。つかつかと玄関ロビーへと進み入り、歩きながら、レインコートを脱ぎ、それをスティーブに手渡す。スティーブは、無言のまま、後ろ向きになって、レインコートをコート掛けにかけた。女の子っぽい笑い声を後に残しながら、彼女は、一人でリビング・ルームに歩み進んで行った。
スティーブは、彼女に追いついてリビングに入った。彼女は窓の外を見ていた。つい先ほどまでは、それほどでもなかったが、今は雨が激しくなり、雨粒が窓ガラスを叩いていた。キンバリーのことをスティーブはキムと呼んでいる。キムは、スティーブが見ているのに気づくと、振り返り、にっこりと微笑んだ。
彼女は、何気なさを装いながらスティーブに歩み寄り、両腕を広げて、彼の首に絡ませた。スティーブは、キムが突然、迫ってたのを見て、たじろぎ、2、3歩後ずさりした。だが、彼女はなおも彼の後をつけ、追い詰めた。そして、つま先立ちになり、スティーブの頭を自分に引き寄せ、キスをした。
淫らさが混じったキスで、舌を差し入れ、スティーブの舌をちろちろと弾いた。体でも、腹部をスティーブの腹部にぐりぐりと押しつける。
再びたじろいだスティーブは、キムの大胆な行動に対して素早く反応し、体を離そうと押し返したが、決してそれに成功したとは言い難かった。
だが、彼女は、突然、スティーブを離し、ゆっくりと後退した。そして優雅な立ち振る舞いでソファに腰を降ろした。
「うちのアバズレの姉と離婚するのは、いつになるの?」
彼女は、唐突に問いかけた。スティーブは、大胆な質問に、しばらく、ただ彼女を見つめることしかできなかった。
「・・・ああ・・・それは、さらにもう何か月かかかりそうだよ」 スティーブは、ようやく言葉を発した。「バーバラの弁護士が、先週、審議継続を求めて新しく措置を取るよう、書類を提出したんだ」
スティーブは、いやいやながら話した。彼は、この件をバーバラの妹であるキムと話しあうのが嫌だった。それに加えて、キムが自分の姉であるバーバラを呼ぶのに使った言葉も、彼には居心地の悪さを感じさせるものだった。適切な言葉じゃないように感じられた。そもそも、キムのキャラクターから逸脱した言葉使いだった。
キンバリーはスティーブに微笑みかけ、落ち着いた声で訊いた。
「覚えている? あのバーベキューの時のこと? あなたに、バーバラよりも私の方を好きにさせるつもりよと言った時のこと?」
スティーブは覚えていた。彼とバーバラが結婚する直前の頃だった。キンバリーは、当時、まだ、おしゃべりな12歳の少女で、スティーブが到着するとすぐに、彼にぴったりくっついて離れなかったのだった。あの時、バーバラはキムのこの振る舞いに腹を立てていた。彼女の反応に驚いたスティーブは、フィアンセであるバーバラに、未来の義理の妹に対して優しく接すること以外何も考えていないと説明しなければならなかったのだった。バーバラを和らげるのにかなり時間が掛かったのを覚えている。
あの時のキムが、今は、魅力的で、快活な若い女性に変わっている。改めて彼女を見ながら、スティーブは、またも、先に感じたのと同じく、股間が反応し始めるのを感じた。バーバラは背が高いのに対して、妹のキムは155センチほどしかない。バーバラがほっそりと洗練され、しなやかな印象なのに対して、キムは野性的で、がっちりした体格の印象があった。バーバラはBカップだが、キムの胸はCカップでも窮屈そうなのは確かだった。
キムは、バーバラよりも、しっかりした体つきをしていた。大きな胸を支えるためにも、そういう体つきになるのが当然なのだろう。太もももふくらはぎも、バーバラの足よりも、肉付きがよかった。曲線美の優劣は変わらない。単にキムの体つきの方が、しっかりしているという印象だった。
キムが16歳になったときだった。太ももの太さを気にするキムに対して、スティーブは、なだめるつもりで、薄着になるほど、素敵に見えるよと言ったのだった。実際、ショートパンツやビキニの格好になると、キンバリーは、ハッと息を飲むような魅力的な若い娘に見えた。頭からつま先まで、すっぽり衣類に包まれていると、実際の姿よりも、ずっと太って見える印象があった。
あの、キムが16歳になった時のようなことは、繰り返さないようにしようとスティーブは思っていた。その日の午後、キムは体の内側から発せられる熱で輝き、火照っている様子で、その日が暮れるまでずっとスティーブのそばにくっついていた。その次にスティーブがバーバラの家を訪れた時も、キムは同じことをした。スティーブは、キムの気持ちに水をさそうと試みた。バーバラたちに間違った意味に取られたくなかったからだ。不安定な10代の若者を元気付かせ、安心させることしか思っていなかった。
「ああ、覚えているよ」
しばらく間を置いて、ようやくスティーブは返事した。緊張してきているのを隠すために、微笑を見せて話した。
「君は、元気な幼い12歳の女の子で、辺りにいる大人には、あたり構わず生意気な口を叩いていたし、年頃の男の子には、あたり構わず色目を使っていたね」
キムは、顔をしかめ、スティーブに舌を突き出して見せ、スティーブは、それを見て嬉しそうに笑った。
ふと、スティーブは、こんなに声に出して笑うことは、ずいぶんなかったなあと思った。キムが、カウチの上、自分の隣のところを軽く叩いてみせた時、スティーブは、自分がそれまでずっと立ったまま、キムのことを見ていたのに気が付いた。スティーブはゆっくりカウチに近づき、キムに引き寄せられるのに任せて、彼女の隣に腰を降ろした。
その晩、二人とも特に決まった話題もなくおしゃべりをして過ごした。バーバラの実家でキムと会った時のことについての思い出話しをして笑ったり、テレビでフットボールの試合を見て、そのアナウンサーをからかったり。キムは、スティーブが並みのアナウンサーよりフットボールに詳しいと言って褒めた。
テレビを見ている間に、キンバリーはスティーブの方に手を伸ばし、彼の手を握った。スティーブは手を引っ込めることはしなかった。彼は純粋にこのひと時を楽しみ、同時に、あらゆる邪念を拭い去り、考えないことにしていた。彼には、このように何か楽しい時間を過ごすことは、ずいぶん長い間なかったことだったのである。
フットボールの試合が終わった後、スティーブは自分がしていたことを振り返り、この義理の妹が家に帰るよう、仕向け始めた。彼女は、高校を出たばかりで、まだ若い。自分は27歳で、彼女の姉と熾烈な離婚協議をしているところなのだ。
キンバリーは帰りたくなかった。スティーブは、キムの瞳の表情から、彼女がここに留まり、一夜をかけて、自分が成熟した女性であることを証明したがっていると感じていた。だが、彼は、キムにそれを許したいという衝動と戦った。そういうことは正しいことではないのだ。
スティーブは、キムに家に着いたら電話するよう約束させた。この豪雨の中、彼女を一人で帰らせることが気がかりだったからだ。
キムから電話が来たとき、スティーブは会話を短めに切り上げようとし続けた。もし、スティーブが開放的に彼女を受け入れて話しをしたら、キムは恐らく一晩中、電話で話しを続けたことだろう。
その夜、スティーブは久しぶりに熟睡し、翌朝、空腹を感じて目を覚ました。それまで、彼は、空腹感を感じることなど永遠にないだろうと思っていたのである。
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「こんにちは。調子はいかが?」
「ええ、まあまあです。そちらの方は、エレーン?」
「私もまあまあ」
彼女は優しげな微笑を浮かべて答えた。ほっそりと背の高いブロンドの女性は、スティーブの頬に軽くキスをし、慎ましやかにハグをし、テーブルの反対側に腰を降ろした。
「で・・・道を踏み外した配偶者との戦争は、その後どんな感じに?」 スティーブは躊躇いがちに切り出した。
スティーブと、バーバラが不倫を行った男性の妻は、しばらく前から、情報を交換するために頻繁に会う習慣になっていた。スティーブは、もはや、レイフがバーバラと依然として接触してようが気にしなくなっていたが、エレーンの方は、そうではなかった。エレーンは、主に幼い娘のためを思い、夫婦関係を修復したいと思っていた。
スティーブは、エレーンとの友情関係がこれほど親密になったことに内心驚いていた。二人とも、あらゆる面でプラトニックな関係を維持するよう、細心の注意を払っていた。もし、何か道を踏み外すようなことがあったら、何よりエレーンには失うものが多い。
「きわめて順調ね」
エレーンは、あまり期待せずにメニューを見ながら答えた。彼女は、興味を捉えるような、何か新しくて、ワクワクさせるようなメニューが加わっていたらいいのにと思っていた。
彼女は何気なく言った。
「ドゥーファスは、もう丸二ヶ月間、バービー人形ちゃんに電話をしていないわ・・・それに彼女の方も電話もメールも一切しようとしてきてないわね」
「本当?」 スティーブは、半信半疑で問い返した。
「ええ、きっぱり、そう言えるわ。家のEメールに関しては、すべてのアカウントに関して、夫のパスワードを確保しているし、夫は毎晩、家に帰ると私に携帯電話を見せているから。それに、私もオンラインで電話の使用履歴をチェックして、変な番号から電話が来ていないか確かめているの。それに、帰宅は私の方が早いから、彼が帰る前に郵便物をチェックして何も来ていないことを確かめているわ。さらに、ドゥーファスの職場にいる情報管理の人にも、同意の上で、すべてのメールの送受信を見せてもらっているのよ」
エレーンは、自慢げに瞳を輝かせてスティーブを見上げた。
「毎月1日に差出人が書かれていない封筒に100ドル札が入れられて、送られて来るんだから、女の子はいろんなことをしちゃうものよ。分かるでしょう?」
スティーブは声に出さず笑った。「あらゆる回路をカバーしてるわけだ」
「もう、完全に! 私は、もう、夫のことを信用していないし、夫も償いのためにたくさんしなければならないことを抱えているわ。彼がどこにいるか、誰と一緒か、そこで何をしているか、私が正確につかめないような事態が生じたら、即刻、彼は、バーバラが受けたような書類の束を受け取ることになっているの。彼は、そういうことになったら、私がすぐに家を出て行ってしまうんじゃないかと、ビクビクしているわ。今のところ、そういう状態で私は大満足」
スティーブは笑顔を見せていたが、気持ちは入っていなかった。エレーンの言葉を聞いていると、彼女の場合は、夫婦関係が続くチャンスがありそうに思えた。だが、自分の場合は、そのチャンスは一切ない。
「で、あなたの方は、その後、どうなの?」
エレーンは、そう訊いた後、そばにいたウェイトレスに向かって、「ニューヨーク・カット(参考)を、ミディアム・ウェル(参考)で。それから、ベイクト・ポテトも。サワークリームはなしで」と言って、メニューを閉じ、若い娘のウェイトレスに返した。ウェイトレスは、問いたげそうな顔でスティーブを見た。
「えーっと、・・・僕にも同じものを。ただ、ステーキはミディアム・レアで頼むよ」
ウェイトレスはにっこり笑顔を見せ、素早く注文書にメモをし、立ち去った。
「何も変わっていない」 スティーブは、先のエレーンの質問に答えて言った。「バーブの弁護士は、次々と障害物を投げかけ続けている。僕の収入についての情報を求めてきたり、夫婦所有の財産の分与に関して調停を求めてきたりとか・・・そんなところだ。離婚を留まらせるために思いつくことなら、すべて、どんなことでも言って来る・・・もう、うんざり・・・だが、僕にできることはあまりないし。何だか、僕は、僕の雇っている女性弁護士をお金持ちにしているのだけは確かだな、って」
スティーブは皮肉っぽく言った。エレーンは、彼の言い回しに、くすくす笑った。
「ええ、そうね。気持ち、分かるわ・・・ところで、カウンセリングの方はどうなってるの?」
「なにも」 スティーブはそっけなく返事した。「バーブは、ようやく、カウンセラーに、性的な交際をしていたことを認めた・・・それは、エレーンさんもすでに知っているよね。それで、今、バーバラは、ある心療医師のところに行って診察してもらっているんだが、僕には、その医師はバーバラの頭にくだらないことばかり詰め込んでいるとしか思えない(参考)。これまでのところ・・・バーバラが、そもそもどうして、感情的にも肉体的にも浮気を繰り返すのかを、ちゃんと説明してくれそうなことは、何一つ、でてきていない・・・」
スティーブは、アイス・ティーを口に含み、氷をひとかけら飲み込んだ。
「・・・その点を除けば、すべて順調かな」 彼は冷笑し、唇を歪ませた。エレーンは手を伸ばし、スティーブの手を優しく叩いた。
「気持ち、分かるわ。私も、こんなこと起きていなかったらといつも思っているもの」
スティーブは肩をすくめて見せた。「しょうがないよ」(参考)
二人はウェイトレスが運んできたサラダを食べながら、しばらくの間、無口になった。
「そう言えば、月曜の夜に変なことがあった」
サラダの皿が片付けられた後、スティーブが話し出した。
「どんなこと?」
「義理の妹が僕のところに立ち寄ったんだが、・・・何と言うか、彼女、家に入るなり、すぐにくつろいだ感じになって・・・」
スティーブは注意深く言葉を選んだ。エレーンはくすくす笑った。
「妹さんが、権利を主張しだしたということ?」
スティーブは居心地が悪そうに、座りなおした。
「正直、彼女が何をしようとしたのか分からない。彼女は、子供の頃は、僕にのぼせあがっていたんだけど、僕は、そんなことはもう終わっていたと考えていたんだよ」
「その妹さん、おいくつなの?」 エレーンは興味を引かれたようだった。
「ああ、確か、もうすぐ19歳だと思う。誕生日が感謝祭の翌週だから」
「なるほど」 エレーンは頷きながら答えた。「まあ、充分なお年頃ね。それに、私には、その妹さん、まだ、あなたに夢中だった気持ちのこと、忘れていないように聞こえるわ」
二人は、それからもう10分ほど会話を続けた。やがて、二人の前のテーブルクロスに、メイン・ディッシュが置かれた。その後は、腹をすかせた二人は、肉汁滴るステーキを胃袋に取り込むことに忙しくなった。
しばらくしてエレーンが会話を再開した。
「私、少しは焼餅を抱くべきかしら?」 フォークを掲げ、宙に線を描くように振って話す。
「え? ごめん。何て?」 スティーブは、噛んでいたステーキの一片を飲み込んだ後、返事した。
「何と言うか・・・もし、あなたがバーバラへの復讐セックスをするつもりなら、そのお相手は私にすべきじゃないかしら、ということ」
エレーンは、スティーブに向けて、わざと色っぽくまばたきして見せた。スティーブは、エレーンが嫉妬している振りをするのを見て、笑った。
「女よ、我は、それを行うことは愚かしいことだと決めた日のことを、いまだに後悔しているのだよ」 スティーブは、尊大な口調で言い始めた。「汝、何ヶ月もの長きに渡って女なしで生きてきた男に、その話しを持ち出すことは、如何に残酷なことか、ご存知か?」
エレーンは、誘惑する振りをしながら、笑顔でまばたきをして見せていたが、すぐ後に、ふざけた表情が彼女の目から消えた。
「ああそう・・・あなたの心がどこにあるか分かったわ」 エレーンは落ち着いた声で言った。
スティーブは、問いたげな顔でエレーンを見た。そして彼女が向かっている方向を理解したのだった。
エレーンは、夫と新しい絆を作り出そうとしている。本質的に、夫と新たに結婚しなおすことを目指していると言ってよい。だが、スティーブの方は、自分の行った結婚の誓いは、修復不可能な形で破られてしまったとみなしていた。まだ、法廷で、夫婦関係を破棄する宣言をまとめる儀式は行っていないのは確かだが、それは、ただの形式的な儀式に過ぎない。
スティーブは、居心地の悪さを感じながら、しかし同時に、興味をそそられながら、レストランを後にした。エレーンは、友として、支援してくれたと言ってよかった。彼女は、長い間、封印され続けた性欲を解放することに罪悪が伴うとは言っていなかった。・・・たとえ、その相手が、じきに元義理の妹になる若い娘であるとしても、それは問題だとは言っていなかった。
エレーンはバーバラの味方でもなんでもない。彼女は、スティーブがバーバラの妹と関係を持ったなら、それによって、バーバラは、浮気されることがどのような感情をもたらすのかを、はっきり認識できるようになるだろうと言った。1度だけでも、確実に、そして明瞭に、浮気された者の気持ちを彼女に教えることになると。「確実よ」 と彼女は言った。
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あの店に入ったのは、あの種のビデオのせいだったのだ。後になってから、すべてをじっくり見た時、彼は、あれがそうだったのだと確信した。
月曜の夜にキムが来てからというもの、スティーブは、ずっとピリピリしていた・・・そして、「老いぼれヤギのようにスケベ」(参考)な気分になっていた。これは彼の好きな叔父さんがよく使っていた言い回しだったが、急に、その意味がしっくり腑に落ちた感じだった。これにはスティーブ自身、驚いていた。彼は、6月に妻が他の男の腕に抱かれていたのを見たとき以来、性的に興奮したことがなかったのだった。
金曜日の晩だった。スティーブは、特に何も考えずに、アダルト・ショップに立ち寄り、3本の新作ビデオを手にそそくさと店を出たのだった。そのビデオは、「かろうじて合法的」(参考)とうたったアマチュアの女の子を出し物にしていた。もし、あの時、スティーブが落ち着いて自分の行動を考えたら、彼は、どうして自分が、店のあのセクションに興味を惹かれたのか、正確に理解したことだろう。
彼が家に帰ってすぐに、ドアのチャイムがなった。着古したジーンズに着替えることはできていたが、上のスウェット・シャツには着替えの途中で、それを頭から被ったまま玄関のドアを開けた。開けた先で、狼の口笛(参考)が大きく鳴った。キンバリーだった。
「こんにちは。幼い私のために、その素敵なカラダを隠す必要なんかないわよ」
スティーブは少し顔を赤らめ、スウェット・シャツの裾を降ろし、整えた。
「やあ、キンバリー。どうした? いかがわしい場所に遊びに来たのかな?」
キムは顔を輝かせ、にっこり微笑んだ。
「えっと、まあ・・・一緒に遊んでくれそうな、逞しい男を捜してるところなの」 と、わざと媚を作って答えた。
スティーブはうろたえながら答えた。
「そうか・・・うーん・・・君のために、何本か電話をかけてあげられると思うけど。職場の独身男性の中には、女の子とディナーを食べたり、映画を見に行ったりしたい気分になってるのがいるかもしれないから・・・」
キムは笑い出した。彼女は、スティーブが、半分興奮し、半分当惑しているのが見て取れた。もっと詳しく観察すると、半分当惑の部分は、残りの興奮部分に比べるとずっと小さそうだと分かった。キムは、獲物を見つけた獣のような笑みを浮かべた。雌ライオンというものは、獲物が弱っていて、降参しそうになっているかどうか、ちゃんと見極めることができるものなのだ。
何も答えず、キムはスティーブの脇をするりと通り過ぎ、何気なさを装って、玄関ロビーを歩き、キッチンへ通じる廊下を進んだ。はっきりと聞こえるようにして、クンクンと鼻を鳴らした。
「お腹がすいたわ。何をご馳走してくれる?」
スティーブは、自分が夕食に何を食べようと思っていたんだろうとの思索へと、一瞬、気を逸らされた。そのため、キムが近寄ってきて、彼に抱きつくのを避けることができなかった。キムは抱きつくと同時にキスを仕掛けた。義理の兄と行う挨拶代わりのキスにしては長すぎるキスだった。そして、それを受けて、スティーブも首の回りに絡みつくキムの両腕を解きたいとは思わなくなってしまう。それでも彼は、自分を制するように、彼女の腕を解いた。
無理やり腕を振り払われても、キムはまったく気落ちしなかった。
「ステーキがいいかな? それにベイクト・ポテト・・・ブロッコリーをつけて?」
スティーブの提案にキムは頷き、甘えるような声を出した。
「うーん、美味しそう」
スティーブは、また、すがり付いてキスを仕掛けようとするキムを、今回は、かろうじてかわすことができた。
キムは、アハハと笑いながら、高いスツールに腰を降ろし、スティーブが、冷蔵庫からステーキ肉を取り出し、電子レンジにポテトを2、3個入れて、「ベイク」にセットするのを見た。
彼が食事の支度をする間、二人は、楽しく、気取りのまったくないおしゃべりをした。フライパンの中、ステーキがジリジリと音を立てる間も、その後、二人揃って食べる間も、バーバラのことはまったく話題にならなかった。
********
「ヒュー! ヒュー!」
リビングルームから、キムが突然、歓声を上げた。
食器洗い機にグラスを並べていたスティーブが、動きを止めた。キムは、なぜあんなに興奮して叫んでいるのだろうと不思議に思った。だが、次の瞬間、顔からさっと血の気が引くのを感じた。ビデオを入れたバッグをそのままにしていたのを忘れていたのである。スティーブはリビングへ急いだ。
「あなたもポルノが好きだったの?」 キムは、高ぶった声で訊いた。「すごーい!」 嬉しそうな顔をしている。スティーブは当惑して、ただ、まばたきをするだけだった。
スティーブの困惑顔を見て、キムはくすくす笑った。
「私、単に、ハンサムで素敵な男たちが、キュートな女の子たちとアレをするところを見るのが大好きなの・・・多ければ多いほど、楽しいわよね?」
キムは、バッグの中のビデオを全部調べていた。その中の1本を手にしている。カバーには、複数の男女が入り乱れて絡み合ってるシーンの写真が使われていた。キムは、ピンク色の舌を出して、舌なめずりしていた。それから、眼を嬉しげに輝かせながら顔をあげ、スティーブを見た。
「こっちに来て、一緒にこれを見ましょう? いいでしょ?」 人差し指を鈎状に曲げて、スティーブに横に来るよう誘っている。 「ねえ、お願い!」
スティーブは、ごくりと生唾を飲み、これを容認すべきか否かに関する自分自身との議論に、それを始める前から負けてしまった。そしてキムからビデオカセットを受け取り、デッキに差し込んだ。カウチの上、義妹の横に腰を降ろす。キムは、素早く、スティーブとの間にあった小さな隙間を埋め、体を寄せた。はだしの足をさっと自分の尻の下に納め、左の太ももをスティーブの右の太ももの上に乗せ、居心地良さそうに彼の体に預け、落ち着いた。
二人は、借りてきたビデオ3本のすべてを見た。ビデオの監督が俳優や女優たちに取らせた、かなり信じがたい体位が出てくるところでは、一緒になって笑った。見ている間、スティーブはキムの博識ぶりに何度も驚いた。彼女は、男性の体について完璧な知識を持ってることを証明していた。巨大ではあるが、完全勃起とは言いがたいペニスをした男優が女優の性器にそれをねじ込もうとするシーンでは、キムは大得意になって、自説を述べていた。
苦笑いしながら、こっそり打ち明けるような声音でスティーブに言う。
「あんなおちんちんを受け入れられる女って、もうガバガバのおまんこをしているはずだわ。あんまりユルユルなので、実際の男性のおちんちんだったら、グランド・キャニオンの中で振り回してるのと同じような感じになるはずよ・・・」
スティーブはキムの言葉使いに驚き、ただ、頷くことしかできなかった。
「・・・私が知ってる女の子は、誰もあんな男は求めていないわ。あんなの入れられようとされても、ただ痛いだけだと思うもの。あんなの中に入れられても全然楽しくないはずよ・・・」
キムは、軽蔑するように鼻を鳴らして続けた。
「・・・奇形は奇形同士ということ。私は現実的なものしか好きになれないわ。あんなおちんちん、私に言わせれば、自然なものじゃないわよ。ねえ、パイ擦りが得意な女の子って、すっごく異常だと思わない? あんな大きなおっぱい、全然、自然なものとは思えないわ。そう思うでしょう?」
スティーブは頭の中がくらくらしたまま、時々、頷いたり、同意するような唸り声を上げたりを繰り返していた。このキムが、この2、3年前までからかっていた同じ娘だとは。その感情が、キムが姿を見せた月曜日以来、みるみる消えていく感じがした。
しかし、キムが時々下品な言葉を使うことに対するショックは、時と共に薄れていき、しばらく経つと、まったく気にならなくなった。温かい体を寄せているこの女の子は、今や立派な女になっているのだ。しかも、とても魅力的な女に。
キムがスティーブの方に顔を向けたとき、スティーブは覚悟ができていた。彼女の唇は柔らかく、もっと、もっととせがんでいるようだった。すぐに2人は燃え上がり、さらにキスを求め合い始めた。
突然、キムが立ち上がり、スティーブは途方にくれた顔をした。彼女は素早く体をひねり、彼の上にまたがった。だが、先を急ぎすぎていたためか、キムは中心の位置からかすかにずれたところに腰を降ろしてしまった。しかも、望んでいたより強く。スティーブのポケットに入っていた鍵束が、彼の太ももと彼女の股間の間に挟まった。
「あっ! 痛い!」
キムは思わず叫び声を上げた。ムードをぶち壊しにできるものといったら、竜巻が起きること以外には、このことだけだっただろう。
キムは、痛みを感じた部分を調べるために、スカートを腰まで捲り上げ、下着を降ろした。何も変わっていない、赤く腫れたところもないのを見て安心する。それから、いたずらっぽい顔を見せながらスティーブに言った。
「ちょっと調べてくれる? あそこのところ、どこか奥のほうに傷がついてないか? 何て言うか、ダメージができていないか?」
スティーブは、触れたい気持ちを抑えて、眼を凝らした。悪いこととは分かっていたが、彼はどうしてもじっくり彼女のその部分を見つめてしまっていた。どうしても目が離せない。
キムは小さな甘い声で囁いた。
「そこにキスして、そこの痛みを癒して・・・お願い・・・」
スティーブは自分を抑えきれなくなりそうだった。
「・・・だめだ・・・できないよ、キム・・・僕は・・・」
キムは、長い時間、スティーブを見つめた。断られたことによる怒りの表情が瞳に浮かんだ。彼女は、断られることに慣れていなかった。気に食わないことだった。キムは眼を逸らした。
「オーケー、分かったわ」
キムは、そう言って、下着のバンドをパチンと鳴らせて元通りに戻し、スカートも素早く降ろして股間を隠した。それから再び両腕をスティーブの首に巻きつけ、唇を重ねた。長い、ねっとりとしたキスだった。
3回キスを続けた後、キムは、息継ぎをするため体を起こした。
「明日の夜、私の持ってるポルノ・ビデオを見ない?」
スティーブは出遅れ気味に返事をした。若い女性との官能的な時間からは、簡単に立ち直ることができなかったのだった。
「う・・・ああ・・・いいよ」
キンバリーは再びスティーブの膝の上にまたがり、落ち着いた。時々、下着を履いた股間を彼の股間に擦り付けるように動いたものの、義兄にセックスするように促すような動きまではしなかった。
その30分後、2人は別れの挨拶を交わした。独りになったスティーブは、虚しい気持ちと大きな後悔の気持ちを感じていた。シャワーをたっぷり浴びなければ、眠れないだろうと感じた。3回浴びたうちの最初のシャワーは冷水で行った。水を浴びれば興奮状態がおさまるだろうと思ったからだ。しかし、そうはならなかった。キンバリーの愛らしい顔や、柔らかそうな陰部が、絶えず頭に浮かび続けたからである。
2回目のシャワーは温水にした。興奮状態を鎮めようとするのは諦め、2回自慰を行った。彼の放った熱い体液がシャワーのカーテンの内側に降りかかった。3回目のシャワーは熱いお湯で長時間浴びた。体を清め、仕上げに冷水を浴びて、気持ちを静めたのだった。