アンドリューの話
僕たちは愛とセックスの一夜を過ごした。ディ・ディと僕。もう行かなければならない時間だ。二人とも、朝から仕事がある。ああ、職場では、どんな風になるんだろう?
彼女は、体を部分的に毛布で覆ったまま横たわっていた。片腕を無造作に頭の上に放り投げ目は閉じている。顔には、セクシーで気だるそうな笑み。セミヌードの彼女の姿態。とても暖かそうで、誘惑的だ。見ているだけで、またも自分が興奮してくるのを感じる。
着替えを終え、ベッドの彼女のところに近づいた。ベッドサイドにひざまずき、両腕で彼女の体を包んだ。優しく抱きしめ、心を込めてキスをした。
「ディ・ディ、素敵な夜をありがとう。もし何か僕にして欲しいことがあったら、いつでも、言って欲しい」
ディアドラは目を閉じたままだった。まるで眠りに落ちかかってる猫のよう。
「ありがとう、アンドリュー。素敵だったわ」
そして、まさにそんな猫のように、彼女は、そう言うなり眠ってしまった。僕は、気をきかせて、もう一度、彼女の頬にキスをし、その後、ホテルを出て、家に帰った。
このことで、僕と彼女の関係での力学が変わらなかったら、変えられるものなど、どこにもないだろう。
この、木曜日の朝、会議室に入るときの僕は、少し不安を持っていたなどというレベルではなかった。入ってみると、僕が先に来ていたと分かった。いや、実際、僕とディアドラの二人だけなわけだから、最初か最後かのどちらかにしかなれないのではあるが。
前の3日間での、愛しいミズ・マーティンとのミーティングは、彼女の言葉を借りれば、緊張に満ちたものだった。彼女がそばにいるといつでも、僕は常時興奮している状態にいたのだから。僕は、自分の時間を、セクハラの訴訟を心配することか、どうやったら彼女とベッドインできるかと悩むことの、どちらかに割いていたのだった。
だけど、もう心配する必要も、悩む必要もなくなった。でも、僕もディアドラのことは充分に理解しているつもりだ。彼女は、ビジネスオンリーの態度を貫くだろう。あるいは、彼女は、すでに、昨夜のことについて何度も後悔しているかもしれない。ディアドラは、不適切だと見られることを心配をしていた。昨夜、僕は、最初に無我夢中で彼女を犯してしまったし、彼女に、もう許してと言わせてしまったのだ。そんなことがあったのに、今朝になって、僕がディアドラにビジネス仲間として敬意を見せても、彼女は困惑するだけかもしれない。
確かに、今日は、興味深いことになりそうだ。
ディアドラは、カジュアルなビジネス服に身を包み、颯爽とした様子で会議室に入ってきた。
「あら、おはよう、アンドリュー。すでに出勤してくれていて良かったわ。片付けなくちゃいけない仕事がたくさんあるから。例の緊張感が、何と言うか、・・・解消されたわけだし。言ってる意味が分かるわね」
と、そう言って彼女は笑い出した。
僕もつられて笑っていた。この女性は、一種キュートで、あけすけな感じで、可笑しさを感じさせる人だ。問題を避けることはしない。むしろ、問題に直接対峙する。だけど、軽く、さりげないジョークで対峙するため、直接的であっても、問題が深刻にならない。そんな感じだ。
実際は、このジョークでは、僕の問題が解消したわけではなかった。確かに、昨夜のことについての彼女の反応を見て、僕は嬉しかった。だけど、彼女は、昨夜のことについて冷静になるだろうと思っていた。彼女はいつも冷静だ。
だが、仮に、昨夜のちょっとした緊張緩和の行為によって、彼女の存在に対する、僕の自然な身体的反応が軽減されるだろうと思っていたとしたら、僕は、悲しくも(あるいは、状況によっては、嬉しくもと言うべきかもしれないが)間違っていたということになる。早速、僕の下腹部辺りがざわざわと興奮しだし、突然、ズボンの前の所がディアドラに向かって、つんとテントを張ったからである。
ディアドラは、僕の反応に対して、笑みをちょっと大きくして見せるだけの形で、気づいたことを示してくれた。彼女の存在全体から、何か、充足感が発せられているような感じだった。何か、ぬくぬくと居心地が良さそうにしている、餌を充分に食べた猫のような雰囲気。
ディアドラは、会社に来る時、いくつか別の振舞い方もできたはずだった。ナーバスそうに、恥ずかしそうにして来て、すべて、ひどく間違ったことだったというふうに振舞うこともできたはずだ。あるいは、恋に夢中になったティーンエイジャーのように、僕たちが互いに惹かれあってることを中心に考え、しなければならない仕事をなおざりにしてしまうような振る舞いもできたはずだ。
だが、彼女は、この、ちょっとリラックスした雰囲気の楽しいセックス・ジョークだけでわだかまりを吹き消し、後は、すべてビジネスライクに振舞った。彼女は、隅から隅まで、完璧に、有能なビジネス人になりきっていた。昨夜は、最初のセックスでは完膚なきまで激しく犯され、次のセックスでは快楽の波に全身を洗われ、そして、その後、余韻に浸りながらうっとりとしていたにもかかわらず。
この美しい女性は、どのように振舞っても、喜ばしいものになってしまうように思われた。彼女の人格の、僕が知ってるどの側面を見ても、彼女がセクシーで、心温かく、しかも自分自身に完全に満足している女性が浮き彫りにされる。
その日の午前中、僕と彼女は仕事を続け、大きな進捗を見せた。前にも言ったかどうか忘れたが、ディアドラは、素晴らしい頭脳を持っている。僕が賛成できないアイデアを彼女が言ったとしても、彼女がちょっとだけ補足説明をしてくれれば、それだけで、僕は直ちに彼女の見解を賛成する立場に変わった。僕は論理的なタイプの人間で、非の打ち所のない論理には簡単に屈服する。
ああ、確かに、皆さんが考えるとおり。僕には、ディアドラの瞳を見つめながら、同時に客観的であり続けるのは難しい。それは認めよう。一般的に、彼女がこれこれであって欲しいと言ったら、僕はすぐにそれに賛成するだろう。
その点を、もう一度、言わせて欲しい。ディアドラが求めるものなら、僕は何でもするというところは肝心要のところなのだ。彼女が求めるなら、僕は行う。彼女は、要求するだけでよい。僕が求められたものを彼女にあげる。どんなものでも。どんなことでも、僕は行う。
このため、交渉の場では、僕は若干、弱い立場になった。
僕は、理論を作ることに嵌まっている。世界の出来事や僕の人生に起きた出来事を、論理的な全体像へと組み直し、事実の背後にある意味を理解するのが好きだ。何があって、それが起きた理由は何かと考える。そう考えることで、洞察が得られることがよくある。閃光のようにインスピレーションが沸いて、奇妙な世界の仕組みが明らかになることがしばしばあるのだ。
まあ、確かに、そういう洞察が得られるのは、僕がハイな気分になっているときが多い。翌朝、どんな洞察だったか思い出せないことが多いし。だけど、洞察に溢れた考えだったというのは確信している。いま嵌ってる理論とは次の考えだ。
男はペニスで思考する、ということ。
分かっているよ、皆さんも、これはどこかで前に聞いたことがあると言うだろうし、正確に言って、僕のオリジナルな考えではない。でも、ちなみに聞くけど、その証明はあるのかな?
僕は、「男はペニスで思考する」という単純な陳述に、補足事項を付け加えている。つまり、この「ペニス思考」・・・そう呼びたかったら呼んでくれていいんだけれども・・・は、僕の「化学誘引子」理論とぴったり調和するということだ。この理論について考えながら、僕は自分が一種の「統一理論」へ近づいているのを悟った。様々な理論を、単一の、妥当な全体像へと昇華させつつあると。
僕の「化学誘引子」理論によると、非常に希なことだが、二人の人間の身体的化学物質が、あまりに適合してるため、その二人は、互いに相手に対して、ほとんど麻薬のような存在になるということだった。それは、そういう人間の中のレセプターに関係しているもので、そのレセプターが、もう一方の人間のフェロモンか化学的分泌物か肌か何かと完璧に適合することによる。あ、いや、理論のここの部分は、もうちょっと検討が必要だというのは認めよう。
ともかく、そういうわけで、僕の「化学誘引子」理論を、僕のもう一つの「男はペニスで思考する」理論を駆動するメカニズムとして使って構わない。実際に、このような適合する化学誘引子を持つ二人の人間が出会う確率は、非常に少ないので、実際には、めったにこの現象は起きない。
だが、仮に、そういうことが起きた場合、それにより、もう一つの普遍的な疑問に解答が与えられることになる。
歴史を振り返ってみると良い。時には、皆さんご自身の人生でもそういう人を見かけることがあると思うし、皆さんの家族の中にそうなった人がいるかもしれないし、ひょっとすると、皆さん自身がそういう人であるかもしれない。どういうことかと言うと、つまり、人が、何か狂ったとしか思えないようなことをすることがあるということだ。みんなは、それを見て「あいつ一体、何を考えていたんだ?」と思う。
僕の理論では、これに対して答えを出せる。その人は、ペニスで思考していたのである。自分の化学誘引子による激情に揉まれてしまったという、致命的な結果なのである。
これは素晴らしい理論だ。ノーベル賞とかは期待していないが、ピューリツア賞はありえるかもしれない。
以上が、僕がディアドラが望むことは何でも、喜んで行うという事実の説明だ。僕は、僕自身の「男はペニスで思考する」理論の生きた証明なのだ。
仕事に集中して1時間ほどたった時だった。僕は、ディアドラのノートパソコンに表示されている数字を彼女と見ながら仕事をしていたので、会議テーブルで、彼女の左側に座っていた。その時、突然に、本当に突然に、股間を触られたのである。触れられた途端、それまでの75%勃起から、一気に100%勃起状態になった。あまりに速い勃起だったので、ズボンを破って飛び出すのじゃないかと思った。実際、僕自身、びっくりして60センチほど跳ね飛んだと思う。
「ディアドラ! 何をするんだ?」
彼女は手を引っ込め、にっこりと笑った。
「ちょっとチェックしただけ」
と、それだけ言って、何事もなかったように、すぐに仕事に戻った。この類のことをされると、気が狂いそうになるものだ。
1時間後、彼女は、また同じことをした。突然、あそこに手を置くのである。まるで、好きな犬の頭を軽く叩くような感じで。ディアドラは、悲しそうな顔を装って頭を振り、「可哀想。そんなふうに感じてる状態って大変なことだと思うわ」と言うのだった。
「でも、ある意味、別の状態よりは良いとも言えるよ」
「別の状態って?」 ディアドラは不思議そうな顔をした。
「全然何も感じない状態」
「まあ」
彼女はそれだけ言って、後は仕事に戻ってしまった。そして、ひたすら仕事に集中している。でも、午前中のこの彼女の振る舞いが、あまりに誘惑的だったため、僕は昼食時には、事実上、息をはあはあさせてる状態になっていた。
12時15分、彼女は時計を見て、言った。「ランチに行く?」
食べ物のことなど、その時の僕の頭の中では一番存在が薄いものだったが、一応、「食べてもいいですが」と答えた。
彼女は頷き、「私も食べられるわ」と言った。
ディアドラは立ち上がり、会議室のドアのところに言った。多分、身だしなみを直しにトイレに行くのだろうと思っていた。ところが、彼女は、ドアのロックをかけ、僕の方を向いたのだった。
「今は休憩に入ったわけで、勤務時間外になったのよね。だから、朝からずっとしたいと思っていたことができるわ」
ディアドラは僕の方に歩いてきた。僕はまだ椅子に座ったままだったが、会議テーブルから椅子を引いて、体を回し、彼女の方を向いた。ディアドラは僕の足の間に立ち、両手で僕の頬を挟んで、顔を近づけ、唇を重ねてきた。挨拶の気持ちと信頼の気持ちが混じったキスだった。僕は、彼女の、あの素晴らしい唇に魔法をかけられるのを感じた。再び、彼女の虜にさせられる。
しばらくキスをした後、ようやく彼女は唇を離した。
「ありがとう。これをしたくて仕方がなかったのよ・・・」
そう言って、ディアドラはゆっくりと腰を落とし、僕の前にひざまずいた。僕は愕然とした。彼女の両手が僕のベルトに行き、次にチャックに触れている。それから、両手でズボンの上のところを握り、顔を上げて僕の瞳を覗きこんだ。何かを求めてる目の表情。
僕は彼女の意図を察し、腰を上げた。ディアドラは、ズボンとトランクスを一緒に掴み、一気に引き降ろした。
僕の分身が、その反動で跳ね上がり、彼女の右頬をビタンと叩いた。
「アハハ」 彼女は明るく笑って、その繊細な手で僕のペニスを握った。
ディアドラは、僕の前にいて、片手に分身を握っている。顔から10センチも離れていない。愛らしい瞳は、僕の瞳を見上げ、見つめている。笑顔を浮かべながら。
「私、これ、初めてなの。今まで、考えたこともなかったのよ、アンドリュー。でも、月曜の午前からは別。これ以外、ほとんど何も考えていなかったと言っても良いかもしれないわ。それに、あなたも、可愛そうに・・・今日の午前中にずいぶん緊張感が高まってしまったみたいね。それを解きほぐす必要があるわ。私も、そのお手伝いができると思うから・・・」
ディアドラは、僕のペニスを上に向かせ、頭のところに優しくキスをした。途端に、ペニスがピンと直立する。その勢いがあまりに強いので、彼女の目を突いてしまうのではないかと思った。ディアドラは、下の側面を舐め上げた。
「ああ、すごい!」 僕は唸り声を上げた。
頭の中がクラクラしてくる。彼女は亀頭を口に吸い込んだ。口の中、舌で頭部をこね回されるのを感じた。鈴口の周辺を撫でまわっている。彼女は両手で睾丸を包み、優しく揉み、擦った。
すでに10センチ以上、彼女の口の中に入っていた。僕の前にひざまずき、頭を僕の太腿に当てている。でも、決して僕の目から視線を外さない。
これだけは言わせて欲しいのだが、これが、フェラチオでは一番良い方法だ。馬鹿ばかしいことを言ってるのは分かる。どんな方法でも、口で奉仕してもらうのは最高に決まっている。でも、視線を合わせたままでしてもらうことで、この行為に、親密さによる興奮が加わるのだ。単なる機械的な行為ではなくなる。
ディアドラは僕を喜ばせていて、しかも、それを楽しんでいた。彼女が、この行為を興奮する行為と感じていたかどうかは分からない。でも、彼女がしてくれることに僕が反応することで、彼女はもっとしてあげたいという気持ちが高まっているのは、見て取れた。まるで、愛するものに特別の贈り物を授けているようだ。
彼女は頭を上下に動かし、どんどん奥へと飲み込み、そして、一旦、口から出した。舌を使って魔法のような舌使いをする。僕は、喘ぐだけだった。腰が、自分の意思を持っているかのように勝手に動いて、ディアドラが顔を突き出す動きにタイミングを合わせて、彼女の口を突き上げていた。
僕は午前中ずっと勃起したままだったのだ。どうしても解放されたかった。うっとりとして目を閉じてしまいそうになる。理性が失われていくのを感じた。いまや腰がうねるように回転していて、彼女の顔をぐいぐい押している。息づかいが荒くなっている。
ディアドラは、依然として、僕の目を見つめ続けていた。睾丸のあたりがキリキリと緊張してくる。ペニスが膨張するのを感じる。
ディアドラは、何が起きようとしているか察知できていたようだった。突然、彼女の瞳がきらりと輝いた。彼女が、このスイッチを入れると、僕は彼女の瞳から発せられる光線に目が眩んでしまう。そこが我慢の限界だった。
射精が始まった。
次々と彼女の口の中に発射される。両手が勝手に彼女の頭を捉え、がっちりと押さえて動かしていた。一滴も漏らすまいと、すごい吸引力で吸われ、僕は白目を剥いて失神しそうになった。
射精が終わり、力尽きた僕は、がっくりと椅子にもたれかかった。その間もディアドラは、柔らかくなっていく僕のペニスを優しく舐め続けていた。
彼女の口の中に射精してしまったのだが、前もって彼女とこのようにするとこを話し合ったわけではないことを言っておくべきだろう。本当は、訊いておくべきだったと思う。いや、本当は、真の紳士なら、その瞬間は外に引き抜くはずだ。
でも僕は紳士であるが、同時にシステム・アナリストでもある。あの瞬間、外に出したとしたら、あたり一面にザーメンを振りまいてしまったかもしれない。さらに、ディアドラが着ている高級なビジネス服にも掛けてしまったかもしれない。だから、関係者全員にとって最も良い選択肢は、彼女の口の中に出してしまうことだったのである。これは僕個人の考えで、それを言ってるだけに過ぎないけれど。
ようやく回復し、目を開け、ディアドラを見ると、彼女はまだ、柔らかくなった僕のペニスを口に含んでいた。彼女は、依然として、僕の目を見つめていた。それから、ゆっくりと、ほとんど、名残惜しそうな様子で、顔を後ろに引き、僕のペニスを出した。
彼女は、僕が見ているのを確かめると、口をぱっくり開いて見せた。中は真っ白で、ふちまで一杯になっているのが見えた。その後、彼女は口を閉じ、ごくりと飲み込んだ。
ああ、何てことを! これは、僕の人生で目にしてきた中で、最もセクシーなものの一つと言える。
僕は彼女を抱え上げ、両腕で抱きしめ、キスをした。ほとんど動物的と言ってよいような情熱に任せたキスをした。彼女の口の中、僕自身の味がした。
ディアドラはキスを解いて言った。
「こう言っても信じてくれないと思うけど、私、まだ、お腹がすいているの。ランチに行かない?」
こういう言葉に、何と返事したらよいのだろう。僕たちは、もう一度、ゆったりと長いキスをし、その後、サンドイッチを食べに街角の店へと飛び出した。
午後も午前とほぼ同じように進んだ。僕たちは、プロジェクトのうち僕たちの担当部分をまとめ上げる作業をしていた。作業は実に時間通りに進んでいた。僕個人としては、時間通りすぎて不満ですらあった。この仕事には3週間の時間を割り当てられていたが、このままで行けば、そんなに長くはかからないことになってしまうと分かった。ディアドラと過ごす時間が、その分、短くなってしまう。
午後の間、何度か、ディアドラは、突然、手を伸ばし、ズボンの上から僕の勃起を触った。エロティックなことのように聞こえるが、しかし、分かって欲しいのは、全然、予想していない時に、突然、誰かに股間を握られるというのは、とてつもなく恐ろしいことだということだ。
やがて、僕は、それ以上我慢できなくなってしまった。この頃には、ディアドラは、僕のあれを握って、軽く絞り、その後、手のひらを使って根元から先まで擦り始めるようにまでなっていた。本当に頭にくる。
いや、正確に言って、僕は怒っていたわけではない。自分のペニスに触れるのが好きな女性に怒る男などいるだろうか。しかし、これをされると気が狂ったようになってしまうのだ。たまりかねて僕は言った。
「ディアドラ! やめてくれないか!」
すると彼女は済まなそうな顔をした。「ごめんなさい。あなたのそれがまだ私のことを求めているかどうか知りたくなってしまうの」
僕は声を和らげた。遠くシンシナティにまで届きそうな大きすぎる声だったかもしれないと心配になった。
「ディ・ディ! 夕方の5時になったら、僕たちはこのオフィスを出るんだ。君のホテルの部屋に直行する。そして、僕は、君が気絶するまでセックスするつもりだ。反論はしないように。その前にお腹がすいてる、などとも言わないように。その気分じゃないのとかも言わないように。セックスの後だったら、君が求めるどんなことにも従う。でも、まずは、僕は君にとことんセックスしなければならないんだ。分かった?」
ディアドラは、真面目な顔で頷いた。「うん、分かった」
「よろしい。じゃあ、仕事に戻ろう」
だが、5時が近づくのに比例して、僕の中、何か圧力のようなものが蓄積していった。ほとんど、怒りに近いものに感じられたが、怒りとは異なるっている。強力な期待感なのかもしれない。そもそも、それが何であるか、僕に分かるはずがない。ともかく、僕は今にも爆発しそうだった。この世の中、ペニスをディアドラの中に埋め込むことだけが、僕の唯一の望みになって頭を占領する。文字通り、それにとり憑かれた状態。
そして、とうとう5時になった。僕はディアドラを急がせたが、彼女自身、すでに分かっていたようだ。僕がどんな状態を続けていたか分かり、僕の心的健康状態のためにも、急ぐべきだと分かっていたようだ。
彼女は会議室のドアまで歩くと、僕の方を振り返った。
「私のホテルに行くまで、ここで10分待っててくれる? いいわね?」
僕は駄々っ子のようになっていた。「ええ? 10分も?」
僕には、10分が10時間のように聞こえたのである。それほど我慢できない状態だった。
「ええ、10分。ちょっとトイレに行きたいの。死刑囚でも、刑の執行の前におしっこをするチャンスは上げるでしょう?」
「わかった! わかった! 早く行ってよ! そう言っている間にも、10分の割り当てに食い込んでいるんだから」
彼女は僕の頬にキスをし、会議室のドアを開け、外に出て行った。
600からカウントダウンしながら待つと、10分というのは長く感じられる。まるで子供に戻った気分だった。クリスマスの日、父から、朝の7時までは階下に降りてきてはいけないと言われた子供時代。僕たちはいつも6時には起きていたので、時計が7時に向かってゆっくり時を刻むのを見ながらじっと待っていたクリスマスの朝は、死ぬほど長く感じられたものだった。
カウントダウンの数字が1になったと同時に、会議室のドアを出て、ホテルに直行した。もう、体の中が欲求で溢れかえる状態だった。今すぐ、ディアドラが欲しい。彼女だけが欲しい。
ホテルの部屋をノックした。ドアが開く。彼女はシルクのローブだけの姿で、そこに立っていた。僕は素早く中に入り、後ろ手にドアを閉め、彼女を両腕で抱きしめた。
キスをした。情熱と愛情と欲望のキス。両手でディアドラのローブの前を開いた。ローブは床に落ち、僕の腕の中には素っ裸の彼女が立っていた。僕には上品に振舞う余裕がなかった。彼女をすくい上げ、ベッドに運んだ。大急ぎで服を引き千切るようにして脱ぎ、あたりに放り投げた。うおーっと吼えながらベッドに飛び乗る。そして、その途端、僕は安心した。
彼女の奥深くに入っていたから。
一気に突っ込み、彼女を我が物としていた。彼女を強姦しているようなものだったが、彼女自身がその強姦の良き協力者だった。顔には淫楽に喜ぶ表情。両腕を僕の背中に回してしがみつき、僕の肌に爪を立てている。でも痛みなど感じない。足裏をベッドにつけたまま膝を曲げ、両脚を大きく広げている。僕は動物のように吼えながら、欲情をぶつけていた。彼女も叫びながら、欲情をぶつけ返していた。二人とも、淫欲に狂った原始的な2匹の動物になっていた。
激しく出し入れをしている間、ディアドラは何回かオーガズムに達していたが、僕のペニスはまだ鋼鉄の状態のままだった。動きのスピードを落とすことすらできない。彼女に休息を与えることすらできない。
どうしても彼女に注ぎ込まねば、いてもたってもいられない。どうしても、ディアドラにオーガズムの最も根幹となる部分を味わわせ、彼女に、彼女は僕だけのものだと示さなければ、いてもたってもいられない。どうしてもそのことはディアドラに分かってもらいたい。他の誰にも渡せないのだ。彼女は僕だけのものだ!
強烈な解放に向けて、どんどん高まっているのを感じた。それまでも激しく動いていたにもかかわらず、なおもどんどん激しさを増して、彼女に打ち込み続けた。やがて、絶頂に近づくのを感じ、とうとう、そこに達した。
彼女の中、ペニスが爆発し、精子を浴びせていた。撃ち出されたのがきっかけとなってディアドラも再びオーガズムに達する。甲高い叫び声を上げて絶頂を告げ、頭を後ろに振り、体をアーチ状に反らせ、その姿勢のまま強張り、激情を耐える。
そして、彼女は、がっくりと崩れた。抜け殻のようにぐったりとなった。使い古した人形のように、両腕、両脚とも広げ、大の字になって横たわっていた。目は閉じ、何か分からぬ言葉を小声でつぶやいている。
僕も彼女の隣に横たわり、もう一度、彼女を抱き寄せた。
ディアドラが目を開けたとき、目に涙が浮かんでいるのが見えた。彼女をいたわりたくなる。優しく顔を擦ってあげ、愛していると言った。
「乱暴すぎたんじゃなかった? ごめんね」
彼女には幸せな気持ちになって欲しい。僕を愛して欲しい。それだけを望んでいた。
ディアドラは、華やかな笑顔になり、頭を左右に振った。
「いいえ、アンドリュー。あなたがあのようになっている時は、どんなことをしても乱暴すぎるということはないの。昨日と今夜のことについては、あなたにどう感謝してよいか分からないわ。私には、本当に、特別な2日間だわ」
彼女にキスをした。彼女は、優しく心を込めて僕に抱きついた。それだけでも、またも僕の中に炎が燃え上がってくるのを感じた。彼女の場合、僕は、いくら抱いても、抱き飽きることがないようだ。決して。
キスをしながら、ゆっくりと下方へずれた。慈しむように時間をかけ、辿る道筋に現れるすべての場所をキスの形で賞賛し、崇拝していった。
やがて僕の唇はディアドラの女性の部分にたどり着いた。心を込めて、彼女のそこをあがめ始める。
決して急ぐことはしなかった。ゆっくりと愛撫を続け、緩やかなカーブではあるが、常に上昇カーブになるように、彼女の興奮を高めていった。僕は、ディアドラなら、クンニリングスをするのが嬉しくてしかたない。
口であそこを愛し続けながら、指を1本挿入し、抜き差しの動きを始めた。ディアドラは、僕の顔に向かって腰を突き上げ始めた。喘ぎ声も連続して出し続け、またも、新しく理性が麻痺するようなオーガズムに向かってロケットのように高く舞い上がり始めているのだろう。
でも、僕は別のことを考えていた。
分かってくれているとは思うが、僕は別に残酷な性格の人間ではない。だが、僕には、どうしても知りたいことがあった。ディアドラが僕について、どう感じているのか、それがどうしても知りたい。彼女は、僕への感情をなかなか話そうとしてくれない。だから、ちょっとだけ、誘引となる刺激を与えたら、彼女から返事を引き出せるかも知れないと思ったのだ。
ディアドラがオーガズムに近づいているのを見極め、僕はちょっとだけ攻撃の手を緩めた。オーガズムのふちには保ちつつも、そこを超えることはできない程度に、彼女の興奮を静める。それを何度か繰り返した。毎回、ディアドラをクライマックスのギリギリまで追い詰めつつも、毎回、最後まで達することは許さなかった。彼女は次第に狂乱状態になっていった。
あそこに情熱的にキスをし、クリトリスを舌でねぶった後、頭を上げた。指は相変わらず出し入れを続けていた。
「ディ・ディ? ディ・ディ? どうしても、訊きたいことがあるんだ」
ディアドラは大きく目を見開いた。困惑してるようだった。
「何? 何? 何を知りたいの?」
「ディ・ディ? 君が僕をどう思っているか、どうしても知りたい。僕は、何だか、いつも一人っきりでいるような感じがしているんだ。どうして、僕についてどう感じているか教えてくれないの?」
ディアドラは頭を振った。
「ダメ。それは訊かないで、お願い。ごめんなさい。でも、訊いて欲しくないの」
もう2、3回、クリトリスを舐めて、彼女の興奮を高めた。それから2本目の指も中に滑り込ませた。もう一方の手をお尻の方に回し、1本の指で、彼女の別の穴を優しく撫でた。
「いいだろう? ディ・ディ。僕に話してくれるだけで良いんだよ。そうしたら、いかせてあげるから」
「ああ、アンドリュー、どうして、そんなひどいことができるの? ああ、ひどい。ああ、お願い。本当に! アンドリュー、お願い!」
僕は、少し後ろめたい気持ちになっていた。しかし、僕にとって、こんなことができる女性は初めてでもあったのだ。つまり、オーガズムを求めておねだりさせること。そんなことができた相手はディアドラが初めてだ。女性にいかせて下さいとねだられること。これは、嬉しいことだと知った。
「ディ・ディ。ディ・ディ。僕のことをどう感じているの?」
もう一度、舌を使い、クリトリスをこねるようにして舐めた。気が狂いそうな状態にまでは舞い上がらせるが、決して、絶頂にまでは行かないような程度の刺激。
ディアドラは、もう耐え切れなくなったらしい。
「いいわ、分かったわ、ひどい人! 認めるわ。あなたのこと愛してるの。私自身を愛するより、あなたのことを愛してる。今も、これからも愛してる。愛してるのよ!」
口を使っていかせる気には、どうしてもなれなかった。代わりに、彼女の体を両腕で抱きしめ、彼女の中に入った。どうしても入らなければいられない気持ちだった。僕たちは互いに愛し合っているのだ。どうしてもセックスをしなければいられない。
ペニスを挿入すると、ディアドラはオーガズムに達したことを告げる叫び声を上げた。僕は激しく抜き差しの動きを続けた。僕自身のクライマックスも驚くほど急速に近づいているのを感じた。そして、再び、僕は彼女の中に溢れんばかりに精を放ち、再び、彼女は僕のものだと明確に主張を伝えた。誰のものでもない、僕のものなのだ。それまでの僕の人生で最も幸せな瞬間だった。
僕たちは、少なくとも一時間は抱きあったまま横になっていた。うとうととしながら体の回復を待った。ディアドラは目をつむったまま僕の肩に顔を埋めていた。
ようやく彼女は体を回転させて僕から離れた。すると、彼女は枕に顔を埋め、泣き始めた。最初は静かにすすり泣いていたが、次第に泣き声に力が入ってきて、突然、苦しげに悲痛な泣き声をあげ始めた。全身を震わせながら、何度も大きくすすり上げる。
僕はディアドラの肩に手を掛けたが、彼女は拒絶するように体を震わし、僕の手を振り払った。
「ディ・ディ? どうしたの? 大丈夫?」
ディアドラは、すすり上げつつ、喉を絞るような声で答えを返してくれた。
「本当に、ごめんなさい・・・私ってひどい人間だわ! 自分でも分かってるの! こんな私を我慢できるわけがないわよね? 私を嫌ってるに違いないわ。でも、お願い、嫌いにならないで、アンドリュー。本当に悪いと思ってるの! あんなこと言うつもりはなかったのに!」
「言ったって、何を?」 僕は意地悪をして聞き返した。
「何のことか、すっかり知ってるくせに! どうして、私の言ってることが分からない振りなんかするの?」
「ごめん。でも、全然、問題ないことだから。僕は君を愛している。そして、僕は、無理やり君にそれを言わせた。その言葉に責任なんか持たなくてもいいんだよ。その気持ちがないなら、僕を愛する必要なんかないんだから」
だが、ディアドラは、ますます啜り泣きの度合いを増していった。ほとんど言葉を出せないようだったが、搾り出すようにして返事をする。
「でも、私はあなたを愛しているのよ! ほんとに。どうしてこんな気持ちになるか、抑えきれないの。ごめんなさい。あんなこと言うべきじゃなかったわ。私、とんでもない人間なのね」
「ああ、そうだね、ディ・ディ。君は、僕が知ってる中で、一番とんでもない人だよ」
ディアドラは、ハッと息を呑み、今度は声を出して泣き始めた。苦悩に満ちた顔をしている。
「そんな私でも、まだ愛せるの?」
「・・・この世が終わるまで」
まさに言うべき言葉を言ったのかも知れない。ディアドラは、とたんに僕にしがみつき、両腕で僕の首を抱きしめ、顔を肩に埋めた。まだ、声を上げて泣いている。
男は犬だ。これは理論ではなく、その道の人々の間で認められているドグマだ。この哀れな女の子は、目を涙で泣き腫らし、僕に心を注いでくれている。明らかに、彼女はどうしてか分からないが、現実に、あるいは、想像で僕を傷つけたと感じ、心を痛めている。
確かに、僕は、彼女の感傷的な姿を見て心の琴線に触れ、共感を感じた。確かに、彼女を胸に抱き寄せ、頭を優しく撫で、慰めてあげたいと感じた。だが、それ以上に、僕は彼女にセックスしたいと感じていた。この貪欲さ、まるで自分がブタになったような気分だった。でも、他に何ができるというのだ? 前に話した、僕の「男はペニスで思考する」の定理を思い出して欲しい。
この世の中、魅力にあふれた全裸の女性が泣きながら、ありふれたやり方で慰めを請い求める姿ほどセクシーなものは存在しないのではないかと思う。しかも、そのような慰めができる男は、この場に僕しかいないのだ。
僕は脇テーブルに手を伸ばし、ティッシュを取ってディアドラの涙を拭き始めた。2、3回鼻をかませ、その後は、ただ優しく抱き寄せた。次第に彼女のすすり泣きは収まっていった。大きく息を吸っては、ゆっくりと吐き出すのを繰り返しているようだった。やがて、ほとんど身動きしなくなり、落ち着いたように感ぜられた。
僕は彼女のあごを上げさせ、ディープキスを始めた。僕の見たところの印象だが、どういう理由か、ディアドラは、僕に対する感情を僕に知られたくなかったらしい。そこには、何か深遠で、暗い秘密が潜んでいるようだった。だが、そのことについては、後で考えればいい。
ともあれ、僕が拷問をかけるようにして彼女に真実を搾り出させてしまったというのは事実だ。実に簡単だった。軍隊での勤務に志願しようかと考える。女性捕虜全員に対して、公的な尋問者になれるかもしれない。こんな僕なら、全員から情報を引き出してしまうだろう。
ディアドラは、彼女の意に反して真実を白状した。その後、もう一度、その真実を認めていた。僕を愛しているという真実。
この件に関する僕の理論は次の通りだ。
彼女はセックスされる気持ちができている。いや、セックスされたくてたまらなくなっているのだ。僕を愛していると言えば、自分が愛し、自分を愛してくれる男性とセックスできることになる。互いが相手を愛していることを、双方とも知っていることになるのだから。これは、ちょっとした理論になるはずじゃないのかな?
僕自身は、ディアドラとセックスしたかったし、理由もまったく同じだった。愛していると告げあうことは、契約を結ぶことに似ている。愛を告げあうことは、人をただのセックス・フレンドの関係から、魂が通じ合った間柄へと変える。契約書などにある、あの点線の上に書かれるサインのようなものなのだ。それは、愛し合う二人が永遠について思いをめぐらし始める瞬間なのだ。
僕は自分自身を握って、ディアドラの陰唇に沿って頭部を擦り始めた。彼女はすでに濡れていた。泣いたことで、淫らな気分にもなっていたのに違いない。はかなく、頼るものを求めた風情。守ってあげたくなる雰囲気。
僕は彼女がそんな弱い気持ちになっているところに付けこみたくはなかった。ただ、彼女を奪いたいだけ。
ディアドラを仰向けに倒した。亀頭で彼女を擦り続ける。唇の間に頭部を押し込んだ。滑らかに吸い込まれていく。まさに、僕のペニスは、自分の居場所をちゃんと分かっていた。そこしかないのだ。それは、勝手にゆっくりと奥へ進み続け、やがて完全にそこに埋まった。そのまま動こうとしない。
僕とディアドラは、互いに見つめあっていた。彼女の瞳に、あの表情が浮かぶのが見えた。あの崇敬にも似た表情。あの表情を僕は知っている。僕の瞳にも同じ表情が浮かんでいるから。
「ディアドラ、愛しているよ」 僕は囁いた。
「私も愛しているわ、アンドリュー。あなたは私のすべて」
二人はゆっくりと動き始めた。二人の腰が、同調し、ゆったりとしたリズムを達成する。僕は、彼女の中に入ったまま、わずか2センチほどの動きで前後していた。僕たちは愛し合っている。
ゆったりとしたロマンティックな愛の行為を続けながら、僕は心を込めて優しくキスをした。僕の両手が彼女の体を擦りまわる。僕の手は、あのとても柔らかい肌に触れたがってるだけなのだろう。あの小ぶりの丸い乳房を揉みたいだけなのだろう。尻頬に触れ、握り締め、もっときつく彼女を抱き寄せたい。それだけなのだろう。
ディアドラは、あっあっと声を上げながら、腰をせり上げ始めた。ロマンティックなひと時が、次第に、性的な欲求の解放の行為へと変わっていく。僕は、彼女を抱きかかえ、そのまま、仰向けになった。僕のペニスは彼女の中に包まれたまま。
ディアドラは、頭を僕の胸板につけて、僕にしがみついていたが、その後、体を起こし、僕を見下ろした。もう、そこには、さっきまで泣いていた彼女はいなかった。あの笑みが戻っていた。彼女の瞳に炎をともす、あの笑み。それが僕の上、僕を照らす明かりのように輝いていた。
「ようやく、私に仕切らせてくれようとしているのね? あなた、男尊女卑主義者なの?」
僕は頭を左右に振った。「僕は場慣れしていないかもしれないけど、バカではないよ。君は、僕の人生に登場してきた瞬間からずっと、僕を仕切りっぱなしだよ」
彼女はさらに明るい笑顔になった。ああ、何と! 彼女にはえくぼがあったのか!
ディアドラは、体を前に倒し、いたずら気味に僕にキスをした。彼女の乳房が、軽く前後に動いて、僕の胸を擦った。
彼女はその姿勢を保ったまま動かずにいた。二人の恥骨がぴったりとくっついたままになっていた。突然、ペニスがマッサージをされているのを感じた。彼女のあそこがしているのだ。きゅっきゅっと絞られたり、擦られたり、いじられたりするのを感じる。
「ああ、すごいよ、ディ・ディ!」
「うふふ・・・分かる? 私も才能がないわけじゃないのよ」
ディアドラは僕に覆いかぶさり、口を開きあったねっとりとしたキスをしてくれた。頭がボーっとするような情熱的なキス。それから、彼女は体を起こし、動き始めた。
「じっとしててね、アンドリュー。私にさせて欲しいの」
彼女の腰は、臼で粉をひくような動きを続けていた。時折、前のめりになって、僕のペニスが何センチか彼女から出るようにさせ、その後、再び体を戻し、同じ分だけ、元の鞘に取り込む動きを混ぜた。
最初は、ゆったりとした動きだった。そのうち、ディアドラも気持ちよくなってきたのだろう。目はずっと僕の目を見つめたままだったが、体は一定のリズムで動き続けていた。そのゆったりとした動きに、次第に、速度が加わっていった。腰を戻す動きに強さが混じり始めた。やがて、それは腰を打ち降ろす動きに変わる。そして、それはさらに、全力を使って僕の上でバウンドする動きに変わっていった。彼女は、力強く腰を打ちつけるたびに、低いうなり声を上げていた。
ディアドラは、完全に、役割の交替を成し遂げたのだと悟った。というのも、僕ができるのはただ仰向けになって、彼女になされるがままになっていて、快感に頭が空っぽになる状態にさせられていたから。もはや、僕は限界に近づいていた。
激しく上下に動いては、あそこの筋肉を使ってぎゅうぎゅう締め付け、それを繰り返すディアドラ。限界に達した僕は、集められる限りの力を振り絞って、下から彼女を突き上げた。それと同時に、彼女の中に僕の情熱を爆発させた。
その突き上げこそ、まさに彼女が求めていたものだったようだ。ディアドラは、僕の突き上げを受けて、ぐっと背中を反らし、容赦ない強さで僕にあそこを押し付けた。そして、それと同時に、頂点に達したことを告げる叫び声をあげた。
その後、二人は、愛し合った余韻に包まれながら、かなり長い時間、静かに横たわっていた。ディアドラは、まだ僕の上に乗ったまま、頭を僕の胸に乗せていた。この姿勢はとても気持ちいい。
そろそろ、ディアドラに、何が悩みなのか訊いてもよい頃だと思った。あのような苦悩をもたらしているものが何であれ、どうしても僕はそれに対処しなければならないと思っていた。彼女の苦悩を和らげられないなんて、恋人として失格じゃないか。
彼女を優しく抱きながら、問いかけた。
「ディ・ディ? 悩みは何なの? 何か問題があるなら、僕にできることがあるかもしれないから」
彼女は、ただ頭を横に振るだけだった。
「ねえ、ディアドラ? 困ったことがあるんじゃないのか? 教えて欲しい。体の調子とか?」
彼女は、悲しそうに微笑み、再び頭を振った。
「子供が生めない。そういうこと?」
ディアドラは、突然、体を起こした。まるで雷に撃たれたかのように。
「子供って! 子供のことについて、全然、一言も触れなかったくせに!」
僕は、自分が危なっかしいところに入ってしまったと感じた。彼女は怒っているようだ。赤ちゃんのことについて何も言ったことがなかったことが良いことなのか、悪いことなのか、分からなかった。ともかく、再びディアドラが泣くような事態は避けたかった。だから、できるだけ、平然さを保とうとした。
優しく落ち着いた声になるよう注意しながら尋ねた。
「でも、ディアドラ、それは君が関係ないことを話題にしなかったのと同じだよ。どうして、僕が子供のことについて触れられただろう?」
彼女は、ちょっとの間、どこか他の場所にいるような雰囲気をしていた。彼女の目に涙が溢れているのが見えた。
ディアドラは、すっくと立ち上がり、僕に片手を差し伸べた。
「今日も、素敵な夜をありがとう、アンドリュー。もう、おやすみなさいの時間ね」
こんなに素晴らしい展開になった夜だったというのに、どうして、こんなおかしなことになってしまったのだ? どうしても彼女に訊かずにいられなかった。
「ディアドラ? 怒っているの? 僕は何か悪いことを言った?」
彼女は微笑んだ。それから、両腕を僕に回して抱きつき、顔を僕の胸に押し付けた。
「いいえ、違うわ、アンドリュー。あなたは私にいつも正しいことを言っている。このことについては、明日の夜に話しましょう。多分、明日。・・・こんなふうに、打ち明けない私のことを怒ってるでしょうね。でも、これは私に決められることじゃないの。約束するわ。できるだけ早く、あなたが知りたいことすべてを話してあげられるようになるから」
どういうことだろう? 今夜は、何も答えを得られそうにないことは確かだった。僕にできることは、彼女の部屋から出て、家に帰り、最良の結果がくることを願うことだけだった。
金曜日の職場の状態は木曜日とほぼ同じだった。今は、ディアドラと二人で、様々な情報を掻き分けて進んでいるところだった。向かっている方向ははっきりしていたし、すべてが収まるべきところに収まりつつあった。ディアドラのことを思うと、これは良いことだと嬉しくなる。というのも、基本的に、彼女の行う仕事によって、彼女の業績が評価されることになるのが自明だから。この仕事がうまくいけば彼女の評価も上がるだろう。実際、ディアドラは立派に仕事をしていた。本当に。それに彼女は仕事を愛しているようだった。
この日、僕もディアドラに負けず劣らず仕事に集中した。だが、前夜に話し合ったことがどうしても頭に引っかかっていたのも確かだ。特に、子供のことについての部分。
あれは、いったいどういうふうに解釈すべきなのだろう? 確かに、僕たちは避妊具を使わずにセックスをしていた。でも、ディアドラなのだから、性病は問題外だ。それに、僕自身も病気の心配がないのも確か。それに、水曜日に、彼女は妊娠の心配はないと請合っていた。だからこそ僕はコンドームをつけることは考えなかったのだ。
彼女はピルを飲んでいるのだろうか? 最近セックスをしていないと言う女性がピルを飲んでいる? これも考えにくい。
多分、もう一つの想像が当たりなのだろう。不妊症なのかもしれない。そのことについて僕自身がどう感じているか? それは自分でもよく分からない。確かに、子供は欲しい。でも、そういうことなら養子をもらうことだってできる。なんだかんだ言って、僕はZPG(zero population growth:人口ゼロ成長)支持派の人間だ。
憶測を働かせないこと。それが良いということだ。ディアドラの可愛い喉にどんな骨が刺さっているのか、それを知ろうと頑張っても、結局、自分でトラブルを引き寄せることにしかならない。ディアドラは、話すべき時が来たら話してくれるだろう。その時になって、僕も対処するか、対処しないかを決めればよい。
もっと言えば、あまり心配していなかったというのが実情だった。僕が気にしていたのは、彼女と一緒にいられるかどうかが大半だった。そんな僕の状態が何かで変わるとも思えなかった。
日中ずっと、ディアドラは、愛らしく、優しい感じの性格を維持し続けていた。確かに、いつもの通り彼女は仕事に完全集中していたが、そのビジネス上の言葉使いや振る舞いは、すべて、あのリラックスして陽気な物腰のフィルターを通して出てくるので、優しく明るい雰囲気が漂っていた。僕はそういう彼女のそばで仕事をするのが大好きだ。
5時20分ごろ、仕事を終える準備をしている時、僕は、一日中、彼女に訊きたいと思っていたことを訊いた。
「ディアドラ、今夜、会えるかな?」 切羽詰った気持ちが表に出てたかも知れない。
ディアドラは僕の手を握った。
「もちろんよ、アンドリュー。解決しなければいけないことだもの。ぜひ、今夜、頑張ってみたいと思っていたの。あなたが、それで良ければの話しだけど。今夜7時に私の部屋に来てくれる? 一緒にディナーを食べて、そして話し合いましょう。あなたを驚かすことがあると思うけど」
「いや、それはもう結構だよ。すでに、一生分まかなえるほどサプライズはもらっているから。でも、ともかく7時に迎えにいくよ」
僕は家に戻って着替えをし、とんぼ返りで街に戻った。よくあることだと思うが、帰るときも、戻るときも、信号はすべて青だった。制限速度をきちっと守って走り、ゆっくり時間を掛けて来たけれど、着いたのは20分も前だった。
時間が来るまでじっと待つ代わりに、僕はまっすぐ彼女の部屋に向かった。じっと待っているなら、その同じ時間、彼女と一緒にいたかったから。
彼女の部屋をノックしたのは6時45分だった。気分は上々で、この2晩のような、興奮で気が狂うような切羽詰った気持ちはまったくなかった。多分、僕の体が、ディアドラはもうしばらくはそばにいてくれるという信号をようやく受信したためだろうと考えている。だから、彼女に会うたび、彼女を襲わなくても良いと認識したのだろうと。まあ、これも、僕が考察している理論にすぎないけれど。
ドアが開くのを待ちながらホテルの廊下に立っている間、僕は落ち着き、冷静沈着、すがすがしい気分でいた。そして、ドアが少し開いた。彼女の姿が見えた。半開きになったドアの向こう、シルクのローブを着て立っている彼女の姿。
突然、僕のホルモンが狂いだした。
血液が洪水のように一気にペニスに流れ込み、みるみる勃起した。激しく切羽詰った感情に囚われ、頭がボーっとし、熱い情熱が溢れ、興奮した。
部屋の中に進み、ドアを後ろ手に閉め、ディアドラの応答も聞かず両腕で抱きしめた。
彼女は、驚いたような困惑顔になり、その後、怖がっている顔に変わった。僕は彼女の唇に唇を重ねた。
情熱に狂ったキスをしていた。でも両手は仕事を続け、彼女のローブの紐を解いていた。そしてあっという間に脱がした。裸になった彼女を抱き上げ、ベッドに運び、横たわらせた。
一歩ほど後ずさりし、自分の服を脱ぎ始めた。その間、目はずっと彼女を見つめていた。ディアドラは僕が脱ぐのを見ていた。小さくゆっくりと頭を動かして見ている。左右にゆっくりと振っているようだった。「ダメ・・・」とそう囁くのが聞こえた。
確かにディアドラは頭の中では「ダメ」と囁いていたかもしれない。でも、体は、「やって」と叫んでいた。乳首は最大にまで硬く大きくなっていたし、すでに脚の間に湿ってきているのが見て取れた。
ディアドラのアンビバレントな様子について不思議に思ったものの、それについて考えたのは服を脱ぎ去るまでの短い時間だけだった。裸になるとすぐにベッドに飛び込み、彼女と一緒になった。
ディアドラは体をよけたがっているように見えたが、動くことはできなかった。どうして彼女は拒否するような雰囲気を放っているのか。だが、僕は、それを考えている余裕はなかった。ディアドラが欲しい。初めての時も、その衝動は激しいものだったが、今は、それに比べても遥かに激しく、強力だった。
ペニスを彼女の割れ目に擦りつけ、潤滑を得た後、一気に貫いた。
ディアドラは、大きな悲鳴を上げた。
そして突然、両手で僕の尻を掴み、自分の股間へと引き寄せた。両手の爪がお尻の肉に食い込んだ。
彼女は、どこか前と違っているように感じられた。僕は興奮で狂ったようになっていた。いったいどうやって、この女性はこんな効果を僕に与えられるのだろう? まるで、以前に行った激しいセックスは、その「興奮が薄れた」ものになってしまい、もう一度、彼女の身体を奪わなければいけなくなったと、そんな感じだった。
二人とも、2匹の動物のように交わっていた。ペニスに、抗しがたい力が伴ったように感じた。ハンマーで叩きつけるように彼女に打ち込み続けた。だが、彼女の方も僕と同じくらい強く腰を打ち返していた。
ディアドラは悲鳴を上げ続け、再びオーガズムに達していた。だが、それでも僕はやめなかった。動きを緩めたりはしなかった。
どんなことがあっても、彼女の中に僕の種子を注ぎ込まなければならない。いっぱいに満たさなければいけない。彼女を奪い、僕のものとしなければならない。気がつくと、けだもののように吼えていた。僕の欲望を、僕の愛を、彼女を我が物としたい気持ちを吼え続けていた。
僕も頂点に近づいているのを感じた。強く唇を彼女の唇に押し付けた。ディアドラからの気持ちがこもった反応を求め、そして受け取る。同時に、ペニスが拡大し、睾丸に精液が充満するのを感じた。
次の瞬間、僕は精を放っていた。そしてディアドラも再びオーガズムの叫び声をあげた。僕は思った。二人の情熱的なオーガズムはこのまま永遠に続くと。
だが、それは、そう思った瞬間、終わりを迎えた。
高まった興奮を解放すると同時に二人はがっくりと身体を崩した。僕はディアドラをきつく抱きしめた。
彼女が頭を前後に動かしているのを感じた。そして、囁くのを聞いた。
「デス・バイ・ファッキングって言ってた」
突然、ディアドラは泣き出した。昨日と同じように。僕に背を向け、枕に顔を押し付けて泣いている。号泣と言ってよいような泣き方だった。何か呟きながら泣きじゃくっている。最初は聞き取れなかったが、声がだんだん大きくなり、ようやく何を言っているのか聞き取れるようになった。
「ごめんなさい。こんなつもりじゃ。こんなことになるとは思っていなかった。私はひどい人間だわ。こんな、こんな・・・」
泣くことと話すことを同時にするので、彼女の呼吸は次第に苦しそうになっていった。
僕は、改めて両腕で彼女を包むように抱きしめた。
「大丈夫だよ。僕は君を愛しているんだ」
ディアドラは、いっそう大きな声で泣き出した。「私のことを知らないのに、どうして私を愛せるわけ?」
彼女のまぶたにキスをして、涙を吸い取った。「最初から、君のことは知っているよ。その時から今まで、そしてこれからもずっと愛している」
ディアドラは目を開け、愛しいものを見るように僕の瞳を覗き込んだ。
「あなたが素敵な人だって言っていたわ」 依然として、すすり泣いている。
誰の言ったことだろう? 秘書のキャロル? キャロルは僕のことを傲慢で鼻持ちならぬ人間と思っているとばかり思っていたが。実際、僕は傲慢で鼻持ちならない人間だし。
この世の男は、貪欲さの点で、すべて豚だ。特に僕は豚だ。このとき僕は、泣き濡れる女というものは、確実に男を興奮させるものだということを学んだ。ペニスが早速、回復しつつあった。何の刺激も与えられていないのに、ただ、そばに、美しくセクシーで全裸の泣き濡れる女がいるだけで、僕の分身は息を吹き返していた。
ディアドラを慰めながらも、もう一度、どうしても彼女の中に入りたいという気持ちになっていた。どうしても抵抗できない欲求だった。僕は、分身を握り、彼女の下の唇を探り当て、再び滑り込んだ。
ディアドラは、かっと目を開いた。
「何てことを! ダメ、もうダメよ! ああ・・・止めるべきなの・・・多分、こんなことしちゃいけないの・・・ああぁぁ!」
ディアドラは目を閉じ、再び彼女は両手で僕のお尻を掴み、自分へ引き付けた。
突然、僕たちの後ろから声が聞こえた。
「二人とも、少なくとも、私が紹介するまで待てたはずじゃないの!」
後ろを振り向いた。バスルームのドア先にはディアドラが立っていた。濡れた髪に巻きつけたタオル以外、何も身に着けていない身体で。
僕は、知覚上の過負担の状況に陥った。
「もう、ひどい! 二人ともヤッたのね! 分かるんだから!!」
ドニーの話
月曜日の夜、ディ・ディから電話があった。姉はクリーブランドで新しい職務についている。アクロンに本社がある何とかという名の企業の支社だ。
私と姉は同じ会社に勤めている。仕事の内容も同じだし、サラリーも同じ。二人で家を共有して暮らしている。姉とはこれまでずっと一緒だったし、それはこれからもずっと同じだろう。永遠に。
私たちはただの姉妹ではない。私たちは双子だ。一卵性双生児。あらゆる点で二人は同じだ。成長した後も、誰も私と姉との区別ができない。ママは、よく、私たちに同じ服を着せていた。なので誰も私たちの区別ができなかった。少し分別がつくようになってからは、姉と私は別々の服を着せてくれるよう言い張った。おかげでようやく他の人も私たちの区別ができるようになってくれた。
まあ、でも、言い換えれば、他の人が私たちを区別できるのは、服装の点でだけとも言える。私と姉はしょっちゅうお互いの服を交換して、互いに相手に成り代わった。これは、一度もバレたことがない。私たちは本当に同一だから。でも今は、他の人は服装で私たちを区別するのが普通。私はパンツとドレスの姿が普通で、ディ・ディはスカートとブラウスが普通。
ただ、一日ほど、ディ・ディが私になりたくなったり、私がディ・ディになりたくなったときは別。そういう時は、互いに服を入れ替えて、お互いの教室に行ったり、お互いのボーイフレンドとデートしたりした。誰も気づいたことがない。誰一人、一度も。
ママも私たちを区別できなかった。姉と服を交換して着ていても、一度もママに指摘されたことがなかった。ちょっとは疑っていたかもしれないけれど、口に出して言われたことはなかった。他の人は、疑いすらしなかった。パパは絶望的で、私たちのことをDと呼んでいた。「やあ、D! こっちに来てパパを抱きしめておくれ!」 パパはよくそう言っていた。パパは、どっちのDが抱きついていたのかさっぱり分からなかったと思う。
私の名前はドナ。でも家族は私をドニーと呼んでいる。うちの家系には奇妙な性質が付きまとっている。遺伝じゃないかと私は思っている。遺伝子の中の何かに違いない。遺伝子のせいでないとしたら、トワイライト・ゾーンの中のなにかのせいだわ。その性質とは、うちの家系では女の子しか生まれないこと。しかも、双子の女の子だけ。
ママも双子だった。ママの双子の妹は、たった5歳の時に死んでしまった。三輪車に乗っているときに車にはねられたのだ。ママは、いつも、毎日と言ってよいほど、自分には何かが欠けているような気がすると言っている。ママは、それが何か知っているはず。それはママの妹だ。
ママのママも双子だった。それに、そのママのママのママも、やっぱり双子だった。うちの家系を古くまでさかのぼるのは難しい。というのも、みんな、時々、うちの家系に何が起きたかを隠すような雰囲気になることがあるから。それに加えて、さかのぼろうにも、苗字が次々に変わるのでたどりきれないこともある。この血統は母方の血統だけど、社会は父系社会なのだ。
うちの家系の伝統として、双子の姉妹は一緒にいることになるという伝統がある。結婚した後でも一緒に暮らす。どうしても、そうなってしまう。私たちは、姉妹と一緒にいないといつも不完全な状態にいる気持ちになってしまうからだと思う。それ以外に、私には、この伝統を説明できない。
月曜日、ディ・ディは、とてもハンサムな若い男性と一緒に仕事をしていると言った。彼ほどセクシーな人は見たことがないとも言っていた。電話だけだったけれど、ディ・ディがその人にのぼせ上がっているのが分かった。
火曜日の夜の電話では、ディ・ディは、その人のことが頭から離れなくなってきていると言っていた。彼があまりにセクシーで、もう我慢ができなくなってきていると。その人は、いつも、「雄々しい反応」を見せ続けているとも言っていた。これは、私たちが高校生の頃、クラスの男子が勃起をしたときに私たちが使っていた言葉。
私も姉も、今はあまり性生活がかんばしくない。今の会社に入り、今の職務につくことを受け入れたとき、私も姉も、男性との交際関係については、もう人生は終わりに近づいたわと思った。
というか、そもそも、最初から私たちの男女交際に関してのカレンダーは、予定びっしりというわけではなかった。私たちは、もう35歳で、公式的に「婚期を逃した女性」と自認してもよいと思っている。将来的な展望に関しては、私も姉も現実的だ。生物としての時計では、私たちはもうピークを過ぎていることを示している。ひょっとすると、うちの奇妙な双子の血統は、私たちで終わりを迎えることになるのかも。そうなりかかっているのは事実だった。
ディ・ディは、彼をベッドに誘ったら気にするかと訊いた。普通の姉妹とは異なり、私たちは、こういう話し合いを必ずする。セックスの相手になりそうな男性について二人で話し合うのだ。そうしなければいけないから。これまでも、すべてのものを共有してきたし、今も共有している。もし、事態がどんどん進行するとしたら、最終的には、その件についても共有しなければいけないことになるかもしれないのだ。
この年齢で、二人とも適切な夫を見つける可能性があるのでは? と思うかもしれない。でも、それはない。私たちは、もし片方が素敵な男性を見つけたら、その男性は私たち二人の面倒を見なければいけないだろうと、ほぼ心に決めていた。
そんなの変だ、というか変態じみていると思われるのは知っている。でも、それは違う。変態ではないという点でだ。ディ・ディと私は互いに愛し合っている。けれども、それは、世にいるとても仲の良い姉妹の関係と同じ。現実の男性であれ、想像上の未来の花婿となる男性であれ、その人を姉と共有するといっても、男女一対一の関係に限られる。私が言っていることの意味を分かってもらえると思うけれど。
ディ・ディは、その若い男を誘惑したいと思っている。まあ私としては、それは問題ない。姉の幸運にちょっとやきもちを感じたのは事実。でもよく考えれば、姉にとっての幸運は、最終的には私自身の幸運にもつながるのだから、嫉妬をするのも理不尽だった。
水曜日の夜中、ディ・ディから電話がきた。姉は、そんな夜遅くに電話をすることは滅多にない。私も眠たくなっていた。でも、ディ・ディがきっと電話をしてくると分かっていたので、レターマンの番組(参考)を見ながら、ずっと起きて待っていたのだった。
受話器を取ると、こちらからもしもしと言う間もなく、ディ・ディがしゃべりだした。
「ドニー! 彼、最高なの! 彼に殺されるかと思ったわ。デス・バイ・ファッキングよ、まさに! 終わった後に、ぐったりして、気を失いかけながら考えたんだけど、それしか考えられなかったわ」
私はショックを受けていた。同時に、興奮も感じた。ディ・ディが、この種の言葉を使うは初めてだった。この男、よっぽどすごいに違いない。どうしても詳しいことが知りたくなった。
「ドニー、私たち、2回愛し合ったわ。この4年間、一度もなかったのよ。それが、一夜に2回も! それにね、ドニー、そればかりじゃないの。彼ったら・・・その・・・アレもしたの・・・分かるでしょ・・・?」
ううっ、分からないわよ。私が性的にウブなのは、姉と同じなんだから。
「ディ・ディ、その人、何をしたの? 何のことかさっぱり見当が付かないわ」
「彼、口をつけたの・・・分かるでしょ、あそこに!」
「ええっ! すごい! 良かった? 感じた? それとも、ひどかった?」
「最高だったわ。彼がそれをしている間、私たち、ずっと互いに見つめあっていたわ。それに、彼、もう永遠と言っていいほど、ものすごく長い時間してくれたの。彼は、まるで、この世で一番好きなことをしているような感じだったわ。私がやめさせて、ようやくやめてくれたんだもの。私がとめなければ、今でも、彼の舌を中に入れたまま横になっていると思うわ」
私は、想像してゾクゾクとしてきた。
「うわ、それって気持ち悪い!」
そう返事したけれど、もちろん、気持ち悪いことなんかじゃないのは分かっていた。想像しただけで、あそこが濡れてきていた。
「試してみないうちから、拒絶するのはよくないわ。私は、中毒になるんじゃないかと思っているんだから。・・・ドニー、私、彼と恋に落ちてしまったと思うの。だから、助けて欲しいの!」
「彼と恋に落ちるのを、私に止めて欲しいということ?」 私は冗談っぽく聞いた。
でも姉は冗談として聞いてくれなかったようだ。
「ドニーもこっちに来てみて。今すぐにでも来て欲しいの・・・彼、私たちのこと知らないの。私には妹がいるとは言ったけど、それしか言っていないの。彼は私たちのこと知らないのよ。私たちがどう生きているか、どういうふうにしか生きられないか、まだ言っていないの」
「彼に真実を言うまでは、真剣になってはいけないのは知ってるはずよ、ディ・ディ。でも、そちらに行けるか分からないわ。私がついている今のプロジェクトのこと知っているでしょ? 大事なプロジェクトだから。明日の夜、もう一度、電話して。その時も切実な状態が続いていたら、私も金曜の午後オフにしてクリーブランドに飛んで行けるかチェックするから。でも、行けるかどうか分からないわ。私には、ここインディアナポリスに是非いてくれなきゃ困ると言われそうだし・・・」
「ドニー、是非、来て欲しいの。そして彼に会って欲しいの。彼、すごいんだから」
ええ、ええ。私の目で確かめたら、信じることにするわよ。私自身は、ロマンティックな将来については、ほとんど、希望を失ってる状態だった。
「あ、ドニー? もう、話したっけ? 彼、25歳なの!」
何ですって?
「25歳? ディ・ディ、気でも狂ったの? 20何歳の素敵な男が、あなたのような老婆と何をしたいって言うのよ?」
「分かってる、分かってるわ。彼が私のどこを見てるのか、私も全然分からないわ。でもね、彼、私のことを抵抗できないほど魅力的だって思っているのよ。彼は、化学反応とか何とかって言っていたわ。そのために、惹かれあう気持ちに抗うことができないんだって。彼、変なのよ。彼は、人生の物事を説明するために、いつも、こういう変なちょっとした理論を立てるの。ともかく、『私と彼』のことを説明するために、彼は、この『化学反応』の話を言ってたわ。あっ、『化学反応』じゃなかったかも。『化学的誘引』だったかも。忘れちゃったわ・・・」
「・・・でも、ドニー? もし、彼の言うことが正しかったとしたら、どうなると思う? そんなことを考えたこと、ある?」
「え? 何を考えたこと、って言ったの、ディ・ディ? ディ・ディとその人が惹かれあったと。そして、そのことについて、彼がちょっとした理論を愛玩していると。でも、その理論が正しいかどうかが、いったい、この話と何の関係があるの?」
ディ・ディは興奮して言った。
「まず、ドニーと私は化学的には同じよね? 私たち、クローンみたいなものでしょ? そうすると、もし、彼が私に化学的に惹かれたと言うのなら、彼はドニーにも化学的に惹かれるはずだし、ドニーも彼に化学的に惹かれるはず。そういうことにならない?」
背筋をゾクゾクと興奮が走るのを感じた。私はすでに、ディ・ディが口唇愛撫のことを話したときから、あそこが濡れきっていたのだ。この電話が終わったらすぐに、自分で自分のお世話をしなければいけないと思った。
私も、早くその男性に会ってみたいと、待ちきれない気持ちになっていた。でも、ディ・ディに返事をするときには、わざと、気のなさそうな口調になるよう努めた。
「分からないわ、ディ・ディ。金曜にそっちに行けるとは思うけど。ダメかも・・・」
ディ・ディは、私の反応を信じなかった。「私をだまそうとしてもダメ。私はお姉さんなんですからね! あなたが、ほとんど私と同じくらい彼のことで興奮しているのは、分かってるの。まだ、彼に会っていないうちから、そうなっている。そうでしょ? すっかりお見通しよ」
ディ・ディがお姉さんづらをするのは、大嫌いだった。ディ・ディは、自分が正しくて、私は間違っていると示そうとするときは、いつもお姉さんづらをする。確かに、ディ・ディは姉だけど、たった45分の差なのよ。45分で年配者づらをされるのは、納得できない。
ディ・ディは木曜日の夜にも電話をかけてきた。ディ・ディは泣いていた。声から、それが分かった。
ディ・ディが泣いている。これはいけない。私たち二人は、二人で一つ。それが壊れてしまったに違いない。
「どうしたの、ディ・ディ?」
「ドニー、ごめんなさい。どうしても、我慢できなかったの。彼に拷問に掛けられて、無理やり言わされてしまったの」
「拷問? 彼、拷問に掛けたの? 彼って何者? 何か病気の人なの? 何を言わされたの?」
でも、今度はディ・ディの方が腹を立て始めた。
「アンドリューのことを病気だなんて、よくも言えるわね! 彼のことを二度とそんな風に言わないで!」
「ディ・ディ、落ち着いてよ! ディ・ディこそ、たった今、彼に拷問されたって言ったのよ。他にどう考えれば良いか分からないわ」
「理解できないかも。彼、舌で私を拷問したの」
私は何のことか、分からなかった。「舌で拷問? いったい、何のこと?」
ディ・ディは私がしらばっくれていると思ったに違いない。
「舌で私に拷問を掛けたのよ! 分からないの? あそこ! 私にアレをしたの。そして、私が言うまで、やめようとしなかったのよ!」
それを聞いた最初の反応はというと、
「そもそも、どうしてやめて欲しかったのよ?」
「もう、あなたって本当におバカなんだから! 私にいかせてくれなかったのよ。エッチな気持ちで気が狂いそうにさせて、そのままずっと続けられたの。いつまでも、いかせてくれなかったの。もう、耐えられなくなってしまって。彼が求めることをどんなことでもしていたと思うわ」
私は口の中がカラカラになっていた。それも当然だと思った。だって、身体の中の液体が、全部、脚の間へと集まっていたように感じていたから。どうしても次の質問をしなければならない。
「それで、彼、何を求めたの?」
「私が彼のことをどう思っているか、言わせたがったわ。もちろん、私は黙っていようとした。実際、言わなかったのよ。少なくとも、何分かは我慢していたわ。でも、その何分かが永遠のようだったのよ。ダメな女だったら、あっという間に白状させられていたはず。賭けてもいいけど、あなただったら一瞬にして口に出していたはずよ」
アンドリュー・アドキンズに舌を使って拷問を受けたとして、自分がどのくらい白状せずにいられるか。この問題を議論する心構えができていなかったのは事実だった。電話を切ったら、早速、この問題について考えてみなければと思った。
「で、彼に何て言ったの?」
ディ・ディは、ようやく諦めて、自分のヘマを認める段階にきてくれたようだ。
「愛しているって言ったの。ごめんなさい。どうしても堪えることができなくって。拷問されたから・・・」
「でも、愛していないって言うこともできたはずじゃない? そのことは考えなかったの?」
私は少しイラついていた。ディ・ディが言ってることは本末転倒じゃないの。
「でも、彼に愛していないって言えなかったのよ。そういうことについては、どうしても嘘は言えなかったの。私、心から彼のことを愛しているの。そういうことで嘘をついて彼を傷つけるなんてできなかったわ。ドニー、是非、明日こっちに来て、お願い。来るべきよ。あなたの助けが必要なの」
私自身、たとえどんなことがあっても行くつもりでいた。それでも、ディ・ディに対しては、嫌々行くようなフリを続けたかった。
「分かったわ。明日の午後はオフにしてもらうよう頼むことにするわよ。ま、即席料理みたいなもので、簡単に認めてくれるとは思うけど。ともかく、行けたら行くわ。それでいいわね?」
「いいわ。私の部屋はハイアット・リージェンシーの713号室。フロントに行ってキーを求めれば、出してくれるはず」
「ディ・ディ? 私はもう35年間もあなたと姉妹をやっているのよ。その手口は承知しているわ」
もちろん、私は最初から金曜の午後にクリーブランドに行くつもりでいた。姉をこんなにまでのぼせ上がらせた模範的男性とはいったいどんな人なのか、どうしても会う必要がある。
正直、私も彼にのぼせ上がっていた。立て続けに二晩も、私はディ・ディと電話した後、自分で身体の火照りを鎮めなければならなかった。話しからすると、とてもセクシーな人のようだ。アンドリュー・アドキンズという名前に、早く、その持ち主の顔をつけたい。それが待ちきれない気持ちになっていた。
クリーブランド行きの飛行機は問題なく取れた。5時にはホテルに入っていて、ディアドラを待ちながらテレビのニュースを見ていた。ディ・ディは、私を見て、とても興奮した。
「来てくれて、ほんとにありがとう。来れないんじゃないかってすごく心配したの。もう、これ以上、待てなかったわ、ドニー。どんどん自分ではどうしようもなくなってきてて」
私は冷静に振舞おうとしたけれど、ディ・ディの興奮は伝染性がある。
「どういう手はずになってるの? 今夜、その人と会うことになってるの?」
ディ・ディは頷いた。
「彼、7時にここに来るわ。その時までに準備を整えなくちゃ! 私は、ここで彼に事情を打ち明けるのが良いと思ってるの。少なくとも、私たちが双子だと言うのは打ち明けようと。それで、打ち解けあった雰囲気になると思うのね。その後、3人でディナーに行く予定。そうして、彼とあなたが、もっと良く分かり合えるようになるはず。それで、大丈夫だなって感触が得られたら、進行次第だけど、彼にもっと話しても良いと思うの。臨機応変に対処する必要があるわ」
私は懐疑的だった。
「今夜は、その人も含めて全員にとって、とても長くて、気まずい夜になりそうだわ。そういうことになったとして、そのアンドリューって人、どう思うと思う?」
「正直、分からないわ、ドニー。彼はものすごく情熱的なの。私がこれまで出会ったどんな男についても全身に持っていた情熱の量よりも多い量を、彼の場合、小指1本に持っているのよ。それに、前にも言ったけど、彼、私のことを抑えきれないほど魅力的だと感じているの。だから、ひょっとすると、運がよければ、あなたのことも抑えきれないほど魅力的だと思うかもしれないわ。もし、そうなったら、私とあなたで、彼のことをこの世で一番幸せな男にしてあげるか、私たちからおあずけを喰らって完全に発狂状態にさせるかの、どちらかになるわね」
それは、両極端な選択肢だ。私の個人的な意見はと言うと、彼は私たち二人を見た途端、一気に逃げ出すだろうということだった。
時間が押し迫っていた。私は、半日、仕事をして、その後、飛行機に乗ってきたのでひどい状態だったので、私が先にバスルームを使うことにした。シャワーを浴び、ローブを羽織って、お化粧を始めた。
バスルームを出るとすぐに、ディ・ディが入り、シャワーを浴び始めた。彼女がシャワーを使い始めた途端、ドアをノックする音が聞こえた。
6時45分だった。彼はまだここに来てないはず。でも、彼なのかも。大変! 私はほとんど裸同然の格好でいる。少なくともお化粧をしなければ。もう、頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。足から力が抜けていく感じ。それに、ドアの向こうにいる人が彼かもしれないと思っただけなのに、あそこが濡れ始めているのも感じた。どうしたらよい? 私は思い切ってドアを開けた。
彼だった! まあ、素敵な人! ディ・ディは、こんなに素敵な人だって言ってなかったわ。あの眼! 彼の瞳を見た。私の魂まで見ているような瞳。自分の身体の中、いろんな感情が沸騰してくる。溜息しか出ない。こんばんはと言うチャンスがなかった。自己紹介するチャンスもなかった。
彼が部屋に入ってきて、次の瞬間、何が起きたか分からなかった。彼の両腕の中にいた。キスされている! 彼の唇は魔法のよう。私はすっかり燃え上がっていた。それでも彼を止めようとした。
気がつくと、素っ裸のまま、初めて会った男の人に抱かれて立っていた。いつの間にかローブが脱げていた。
あの長くて力強い腕で軽々と抱え上げられ、ベッドへと運ばれた。ベッドに降ろされた。やめるように言おうとしたけど、言葉が唇から出るまでに、どこかで消えてしまう。頭を左右に振っていたのは分かる。必死で彼を止めようとしていたのは覚えている。
彼は服を脱ぎ始めた。ああ! 完璧な身体をしている。引き締まって強靭そうな筋肉。平らなお腹。大きな胸板。その素敵な胸板には、遊ぶのにちょうど良いほどの体毛。
私の目は、ずっと避けようとしていたところへと向かっている。彼のアレ。彼は、あの大きくて怒った代物を小さな私の中に合わせ入れようとしてるの? そんなことできるの? 私は、アンドリューに伝えようとし続けていた。やめて欲しいと、そんなようなこと。だけど彼はやめたくないようだった。
そして、その時、彼はあそこに来ていた。再び彼の両腕に包まれていた。あの怪物が私のあそこの唇に侵入してくるのを感じた。私は気絶してしまうと思った。押してきた。大きすぎる! ぐいぐい押し入ってくる。強く。私も堪えられなくなっていた。私も彼が欲しい。ものすごく。彼のことを知らないけれど、彼のことを愛している。意味をなさないけれど、私たちは同一なのだ。ディ・ディが彼を愛しているのに、私が愛さないことなど、どうしてありえるの?
水曜日の夜から、私はこの瞬間のことを夢に見てきていた。あの大きなものが完全に私の中に納まったときには、すでに私は最初の絶頂に達していた。彼は、それに気づきもしていないよう。
私の最初のクライマックスの間、彼はパワー全開で動き続け、私はすでに2回目のオーガズムに近づいていた。こんな感覚は初めて。私は悲鳴を上げていた。私が最後に悲鳴を上げたのは12歳の時。ディ・ディと一緒に映画館で「エイリアン」を見た時。あの怪物が餌食の一人に飛び掛ったとき、二人一緒に血も凍るような悲鳴を上げて、他の観客の半分近くを震え上がらせた。
でも、今の悲鳴はあの時の悲鳴とは種類が違う。この悲鳴は、情熱が完全に解放されたときの悲鳴。私が悲鳴を上げて情熱を解き放つたびに、アンドリューは、私にさらに情熱を加えるよう強いた。私に快感をもたらそうと飽くなき追求を続けるアンドリュー。その彼を止めるものは何もないように思えた。
彼は、自分の所有物のように私をむさぼっていた。私を自分のものにしなければいけないように、私をむさぼり続けた。私も彼に自由に使ってもらうように彼に自分を捧げていた。彼に私を所有して欲しい。
永遠とも思えるエクスタシーの連続の後、とうとう、私の中の彼が膨張するのを感じた。そして次の瞬間、私は彼の種子液でいっぱいにされていた。すごすぎる! 私はまたも絶頂に達した。あまりの情熱に死んでしまいそうになるほどの強烈な絶頂だった。
昇天した心と身体が地上に戻るのをうっとりと待ちながら、水曜日の夜にディ・ディが言ったことを思い出していた。その言葉が私の唇から漏れた。
「デス・バイ・ファッキングって言ってた」
絶頂の後の至福のひと時の間、アンドリューは私を抱きしめたままでいた。でも、私の意識は私を休ませてはくれなかった。
何と恐ろしいふしだらなことをしてしまったのだろう。この男性に、いまだ、一言も話していないのだ。にもかかわらず自分のすべてを彼に捧げてしまっている。しかも、人違いであることを伝えずに。彼は、私がディ・ディでないことを知らない。たったいま行ったことは悪いことだと知っているのは私だけ。
私は泣き始めた。抑えられなかった。とても恥ずかしい。罪深い。彼をだましてしまった! 私が正直になっていないのに、どうして彼は私を愛せるだろう? ディ・ディは、自分のボーイフレンドとためらいもなくセックスするような妹を、どうして愛せるだろう? 私はとてつもない人でなしだ。
アンドリューはとてつもなく素敵だった。私を抱き、慰めてくれていた。私を愛していると言った。私は、本当のことを説明しようとした。だけど何を言っても彼には関係ないようだった。ずっと昔から私を愛してきたと言っている。最初からからずっと私たちは互いに知り合っていたのだと。彼は愛の詩人だ。彼の腕に包まれて、私は溶けてしまった。
また固くなっている! この人の情熱は限界を知らない! また私の中に滑り込んできた。そして私も抑えられなくなる。突然、火がついたように身体が燃え、淫らな気持ちになる。彼がたった一度、出し入れしただけで、私は再び絶頂に達していた。
その時、彼女の声が聞こえた。
「二人とも、少なくとも、私が紹介するまで待てたはずじゃないの!」
ディ・ディがバスルームのドア先に立っていて私たちを見ていた。
恥ずかしさと罪深さに、私は目を閉じた。死んでしまいそう。
淫乱が二人:アンドリューの話
僕は現場を押さえられてしまった! ディ・ディとベッドに入っていたと思ったのに。ディ・ディの中にしっかり納まっていたと思ったら、目を上げると、バスルームのドアのところに、そのディ・ディが立っていたのだ! 僕のペニスは、思い余って射精してしまったときのように、急速に萎え始めた。
もう一度、ディ・ディの顔を見た。判読できない表情を浮かべて立っていた。ああ、たまらない! 彼女はタオル一枚でそこに立っていた。そして、そのタオルとは髪を巻いたタオルなのだ! 何を言えばいいんだろう? 何て素敵なボディなんだ! 柔らかそうで、そして、まさにあって欲しいというところに適切な丸みがついた身体。それに、あのしっとりとしたミルクのような肌。本当にきれいだ。どうしても、そのことを伝えたくなっていた。
「ああ、ディ・ディ! 素敵だよ! 君は何てゴージャスなんだ! 信じられないほどだ!」
この状況では、僕は、ディ・ディ以外の女性としてることに対してふんだんに謝罪の言葉を発するべきか、あるいは、何か陰謀を仕掛けられたと言って、どんな言い逃れも受け付けず怒り狂うべきだったろうと思う。
だが、どういうわけか、ディ・ディは僕に怒っているわけではなさそうに思った。多分、女性にとっては、他の女とセックスしている男に好色そうな目でじろじろ見られることは、むしろ自尊心をくすぐられることだからかもしれない。だが、それを言うなら、セックスされている女性にとっては、相手の男が他の女に興奮しているのは、自尊心をいたく傷つけることになるはずだ。
縮小過程に入っていた僕のペニスは、Uターンをし、再び、元通りに跳ね上がっていた。僕が入れていた女性も、それを感じたらしい。というのも、突然、彼女が喘ぎ声を上げたからだ。そして、あっという間に、彼女は限界を超えてしまった。大きく膨らんだ僕のペニスを咥え込んだまま腰をぐいぐいとうねらせ、叫び声をあげて、オーガズムに達したのだ。
こんな状況になったら、どんなことを言うべきだろうか? 知らない女性が僕のペニスで絶頂に達している。その一方で、美しくセクシーな僕の恋人が、それを見ている。不謹慎なのは知ってるけれど、僕はこの状況がユーモラスに思えて仕方なかった。
僕がのしかかっていた美しい女性は、ようやくオーガズムから意識を取り戻し、目を開いた。彼女は、夜道で急にヘッドライトを当てられた小鹿のような目をしていた。僕は彼女に話しかけた。
「あなたはドニーさんですよね? はじめまして。僕の名前はドリューです」
彼女はさらに目を大きくした。
「ドリュー?・・・あなたはドリュー?」
彼女の瞳の様子から、パニックになってるのが見えた。僕はディアドラが僕のことをドリューでなく、アンドリューと呼んでいることを思い出した。多分、彼女は、まったくの赤の他人とセックスしてしまったと思ったのだろう。
ディ・ディもドニーの質問の含意を察知した。「ドニー、この人がアンドリュー・アドキンズよ。大丈夫、あなたがやった相手は人違いじゃないわ」
ドニーの瞳からパニックの色が消えていくのが見えた。だが、その代わりに、今度は涙が溢れてくるのが見えた。
僕はどうしてもこらえることができなかった。声をあげて笑い出していたのである。この状況は、これまで僕の身に起きたことの中で、最も可笑しなことと思ったのだ。僕はまだ勃起していた。この、ほとんど見ず知らずと言ってよい女性の陰部に入ったままなのだ。しかも最愛の恋人がそばに立って見ている。こんな変な状況は、他にない。
ディ・ディも、この状況をかなり可笑しいと思ってるように感じた。というのも、彼女も目を輝かせて笑みを浮かべていたから。嫉妬しているような雰囲気はなかった。
ドニーは傷つけられたようだった。不満顔で僕に言った。「何が可笑しいのよ?」
僕は、笑い出したら止まらなくなってしまった。しばらく笑い続けた後、ようやく、ドニーに返事ができるほどまでは、なんとか落ち着きを取り戻した。
「いま僕たち、ある種の新記録を打ち立てたかもしれないよ。ギネスブックでそういう記録がないかな。僕たちは、まだ紹介もされてなかったんだ。君がいることすら知らなかった。こんなふうに速攻でやっちゃったことのこれまでの記録はどのくらいだったんだろう?・・・」
「・・・ドニー? 気を悪くしないでね。僕は男性優位主義者じゃないんだ。ま、少なくとも、そういうタイプの男じゃないつもり。でも、これはすごすぎる! どうしても自慢したくなっちゃうよ。この話し、他の男は誰も敵わないはずだよ。僕自身が、僕のヒーローだ!・・・」
「・・・僕たちは、初めて会ってからベッドに入るまでの時間で、世界新記録を打ち立てたんだ。ゼロの状態からセックスまで2分以内だ!」
ディ・ディも、前から、僕のちょっとした想像話に乗っていたようだった。「それにちょっと但し書きを加えたほうが良いんじゃない? アマチュア部門で、助走なしのスタートからセックスまでで、最速ということで」
僕はいっそう大笑いしていた。ドニーの気持ちを傷つけたくはなかったが、それにしても面白すぎる! ふと気がつくと、この部屋で広がりつつある雰囲気にドニーもどこかしら乗ってきたようだった。彼女は無邪気そうに言った。
「でも、プロの人は、最初にお金の交渉をしなきゃいけないんじゃない?」
僕は笑った。
「そう、そう! その通りだ。だから、事前交渉なしの無差別級部門で、助走なしのスタートからセックスまでで最速、と。スウィング・パーティをする人たちは、相手を一列に並べて次々に入れていくということがあるからね。その人たちは除外だ」
僕は抑えられなくなっていた。まだ勃起したままだったのだ。そして、笑えば笑うほど、ドニーに入れたまま動いてしまうことになっていた。なんとなく、彼女をからかいたくなっていた。ドニーのことをまったく知らなかったが、僕の気持ちとしては、もう遥か以前から彼女のことを良く知っているような感じだった。
「ドニー? 君は、セックスの変人部門の殿堂に入ったかも知れないね。最初の接触から2分でオーガズム達成! と。2分の壁を破ったんだ。第2位は誰だろう?」
僕は笑い続けていたが、ますます固くもなっていた。笑うときの動きで、だんだん、気持よくなってきていた。どうやらドニーにも影響が出てきているのが見えた。ディ・ディの方を見たら、彼女も、何が起きてるのか分かっているようだった。僕はディ・ディに言った。
「ちょっと、ディ・ディ、いいかな? 話し合わなければと思っている。でも、その前に、気を悪くしなければだけど・・・」
そう言いつつ、僕はドニーに突き刺した。ドニーも、肉欲が羞恥心を上回ったようだった。肉欲は遠慮の気持を上回り、さらに、あらゆる抑制心を上回ったようだった。彼女自ら、僕の打ち込みに熱を込めて打ち返していた。
そして、突然、僕も肉欲に征服されてしまった。今や相手としている女性がディ・ディではないと知った事実と関係があったのだろうと思う。僕の身体は、彼女がディ・ディではないと知った上で、改めて彼女を自分のものにしたいと思い、動いていた。
二人とも激しく動いていた。激しく鋭い、淫欲に満ちた動き。その雰囲気がホテルの部屋全体に染み渡っていた。あまりにエロティックな状況だった。何で僕がそうなってしまったのか分からない。よく知りもしない女性だが、この女性の体内に僕の子種を植えつけたいと、それしか頭になかった。永遠に彼女を自分のものにしたい欲求に駆られていた。
1週間前には、僕は女性にまったく興味がなかった。それが今や僕は、ここにいる二人の美しい女性に対して、いくら奪っても奪い足りないと感じ、どうしようもなくなっているのだった。
僕はドニーに突き立てた。何度も、何度も。ドニーは、発作的にたびたび悲鳴を上げていた。そして、彼女が最後の叫び声を上げたのを受けて、僕たちは二人とも限界を超え、僕は彼女の子宮の奥へ激しく放った。
ドニーは、ぐったりと横たわったまま、「ああ、すごい、ああ、すごい」と、うわ言のように呟いていた。
終わった後、ディ・ディがようやく僕たちのところに来て、ベッドに腰をかけた。
彼女はまだ裸のままだった。僕はどうしても彼女の身体に目を釘付けにしてしまう。その美しさに見蕩れる。これまでディ・ディとは何度もセックスをしてきたのに、僕は、彼女のことをじっくり見る時間がほとんどなかったのに気づいた。ああ、何て美しいんだろう。
ディ・ディは、僕が彼女を見て反応しているのに気づいたようだった。それに、不満そうな様子でもなかった。多分、ディ・ディ自身が望む効果を僕が示すのを見たからだろうと思う。いったんディ・ディのことを抗えないと感じたら、もう、僕はどうしようもないのだ。反応してしまうのだ。ディ・ディには抗えない。
ディ・ディはドニーに話しかけた。
「ドニー? あなた、私たちの計画の予定よりちょっと先に進んだわね。第1段階から始めようとしていたのに、もう、第6段階に来てるじゃないの。でも、二人ともディナーに行かない? 私、お腹がすいたわ。ドニー、ごめんね。でも、お腹がペコペコで、アンドリューがあなたのあそこを舐めるのを待ってられないのよ。食事の後まで待ってくれる?」
ドニーが顔を真っ赤にさせた。いや紫色に近い。
「ディ・ディ! そんな恐ろしいことを言うなんて信じられない。アンドリューが私のことを誤解するじゃない?」
ディ・ディは笑った。
「アンドリューに誤解されるかもって、ようやく気になりだしたようね。納屋のドアを閉めてもいいけど、もう馬はとっくに外にでてるのよ。アンドリューは、あなたが淫乱だって、もうとっくに分かってるわ」
「ディ・ディ!! よくも私をそんなふうに言えるわね! 下品すぎるわ」
僕はドニーを抱き寄せ、なだめようとした。
「彼女、君のことを淫乱だと思っているようだね。でも、ドニー? ディ・ディは職場の会議室で僕にフェラをしたんだよ。君は、ディ・ディから淫乱になるレッスンを受けたに違いない」
今度、顔を紫色にしたのは、ディ・ディの番だった。
「アンドリュー! ひどいわ。そんな個人的なことを、彼女に言うなんて!」
僕は笑い、ディ・ディにも腕を伸ばし、抱き寄せた。左腕には、裸のブロンド美女、そして右腕には、もう一人、瓜二つな全裸のブロンド美女を抱きしめている。
「君たちが二人とも僕の淫乱ちゃんであるなら、他のことはどうでもいいや」
僕はそう言った。